イグアナの娘  ★☆☆☆☆

萩尾望都さんの短編集

イグアナの娘

を読み終えました。

 

評価は、星1つです。

 

萩尾望都さんのマンガは、

11人いる!

で初めて読みましたが、

 

彼女の作品は、

私の好みに合わないかもなー。

 

そのときのレビューでも書きましたが、

リアル世代で読んでいたら、

ちょっとちがった感想をもったかもしれないのですが、

 

残念ながら、

そんな懐かしさなどもなく、

なんだこれ…

という感覚で終わりました。

 

萩尾さんとしては”異色”の作品集と評されているだけあって、

『11人いる!』を読んだときに感じたような、

独特の世界観を味わうこともなかったのが残念でした。

 

むしろ、

萩尾さんらしさをもっと感じる作品たちであれば、

星2つくらいつけていたかもしれないです。

 

全国の萩尾ファンの皆様、

ごめんなさい。

 

▽内容:

その日、生まれてきたのはとても可愛い女の子だった。だけどなぜか母親の目には、その子の姿がイグアナに見える…。母と娘の間に横たわる愛と憎しみの葛藤を描いた表題作のほか、両親にスポイルされた少年が人生をみつけるために戻らなければならなかった場所「カタルシス」、アバンチュールへの一瞬の迷い「午後の日射し」、コミック未収録の短編「帰ってくる子」など6編の異色傑作集。

 

表題作「イグアナの娘」といえば、

その昔、

菅野美穂さんを主演として、

テレビドラマ化されていたのをおぼえています。

 


Iguana no Musume Ep 01 (イグアナの娘) - YouTube

 

自分はこれ、

まったく見ていなかったのですが、

そこそこ視聴率もよく、

当時としては、

話題の作品でもあったようです。

 

この原作となっていたのが、

萩尾さんの本作だったようで。

 

Wikiによると、

 

醜形恐怖症を題材とした作品であり、娘を愛することができない母親と母から愛されない娘、両者の苦悩についてファンタジーの要素を織り込んで描いた。

 

というふうに記述されています。

 

なるほど、

醜形恐怖症だったのねー。

 

イグアナの娘 感想 萩尾 望都 - 読書メーター

 

を拝見すると、

「すごい」「素晴らしい」

「共鳴」「良作」「天才」

などといった高評価なコメントが多く、

 

決してそれらを馬鹿にするつもりは全くないのですが、

自分にはまったく感じられなかったので、

むしろ自分の感受性を疑ってしまいました。

 

おもしろかったのは、

Wikiの「作品の背景」で、

 

厳格だった母親との対立を基にして1992年に描いたのが本作品である。

 

とあったこと。

 

そもそも萩尾さんは、

ずっと母親との間に葛藤を感じてきたようで、

それが作品のいたるところで現れているんだとか。

 

言われてみれば、

この短編集におさめられていた「カタルシス」も、

親子関係について書かれたものでしたし、

 

同じく「帰ってくる子」も、

亡き弟をいつまでも忘れられないことで、

残された母子の間にできた溝を描いたものでした。

 

いずれも、

年頃の子どもの、

あるいは成長して親となってからの、

繊細な親子の機微を、

絶妙にとらえて描いているのですが、

 

まぁ彼女の作品でなくても、

この手のものは巷にあふれている(触れてきた)だけあって、

新たな発見や感動といったものは、

自分は感じなかった次第です。

 

とはいえ、

イグアナの娘」のような奇抜な発想は、

萩尾さんらしいといえばらしいのですが、

 

人間が人間以外のものになって描かれる作品といえば、

カフカの『変身』などもありますし、

 

もちろんテーマこそ違えど、

体裁的には似ているので、

自分のなかではイグアナが斬新とも言えず…。

 

学校へ行くクスリ」も、

複雑な親子・友人・恋愛関係を描いたもので、

これもとっても繊細なんだけれど、

なにせ複雑すぎる…。

 

こんな関係、

実際は相当ないでしょ…

という非現実性のほうに、

自分は気持ちをとられてしまい、

あまり感動できませんでした。

 

午後の日射し」も、

おばちゃんと若造の恋か?!

と思わせておきながら、

最後は娘に譲る的なところが、

なんといっていいのやら。

 

海部くんは、

結局なんだったんだよ?!

おばちゃんをたぶらかしたのか?!

と若干イラっとしました。(笑)

 

そして、

おばちゃんは元のさやに戻り、

「夫婦なんて結局他人だ」と言われながらも、

”いちばん近くにいる他人”としての夫に、

また寄り添うというオチ。

 

この結末に、

じんわりする人もいるのかもしれませんが、

私は海部の罪男っぷりが尾をひいて、

スッキリしない読了感でした。

 

以上のとおり、

一言でいえば、

この短編集は家族がテーマになっているのですが、

 

どうも自分がシンクロできるような家族がなく

どれも登場人物に同情できなかったのが難点でした。

 

そういう意味で、

家族ものとしての斬新さ・感動は薄かったです。

 

ただ、

これも繰り返しになりますが、

もし思春期に読んでいたら、

「おっ!」と心惹かれる作品もあったんじゃないか

と思います。

 

「カタルシス」なんてきっとそうだし、

「学校へ行くクスリ」も、

あの複雑な人間関係と細やかな心境に、

ものすごく切なさを感じたと思います。

 

萩尾さんはこれらを90年代前半に描いていて、

当時の彼女の年齢は40代。

 

この御年で、

よくこんな難しい年代の子たちの心の機微を描けたものだな

とそれだけは本当に敬服します。

 

余計に自分が、

汚れきった大人のように思えてきた。 。。

 

■まとめ:

萩尾望都さんの家族をテーマとした短編集。親と子・兄弟・夫婦のあいだの葛藤や、親の結婚に左右される友情・恋愛関係の「溝」などが描かれているが、表題作の「イグアナの娘」の背景には、作者が長年経験していた実母との葛藤がある(らしい)。

・家族ものとしての、斬新さ・感動はうすかった。萩尾さん特有の、独特の世界観も感じられず、残念。

・とはいえ、40代で難しい年頃の子たちの心の機微を描いた作者には敬服。リアル世代で読んでいたら、もっと心惹かれるものがあったと思うし、それをいま読んでいたら懐かしさも感じたかと思う。

 

■カテゴリー:

少女マンガ

 

■評価:

★☆☆☆☆

 

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