腰痛は 〈 怒り 〉 である  ★★★★★

長谷川淳史さん著

『腰痛は〈怒り〉である』

を読了しました。

 

評価は、星5つです。

 

正直、

まだ疑心暗鬼の部分はありますが、

書かれていることと自分の状態がめちゃくちゃ一致していて、

これは当たっているかもしれない?!

と受け止めた次第です。

 

個人的に、

信じてみる価値がありそうだな、と。

 

もちろんこの評価は、

あくまでいまのところの評価で、

今後、上書きするかもしれません。

 

正直、

こういうたぐいの本は、

時間が経たないと、

評価できないと思っています。

 

ある程度、

実践し続けたうえで、

評価することが大事で、

1か月後・3か月後・半年後・12か月後・3年後…というふうに

定期的にモニタリングする必要があるかなと。

 

とはいえ、

読めば読むほど、

これはまんざら嘘でもない?!

というのが正直な感想です。

 

私は1日に1章ペースでゆっくり読んでいきましたが、

腰痛の原因が怒り(=TMS)にあるということを理解するには、

 

「意識レベルの理解だけでは不十分で、無意識レベルでしっかり理解することが必要であり、それには四~六週間を要する」

 

ということなので、

焦らずじっくり読むほうがいいかもしれません。

 

▽内容:

急に腰痛を覚えたらどうするか?まず、尿はでるか、便失禁はないかを確認。症状があれば直ちに整形外科か外科にかかる。しかし、そうでなければアプローチを変えてみよう。「TMS理論」の登場である。TMSとは「Tension Myositis Syndrome」(緊張性筋炎症候群)の略称で、ニューヨーク大学医学部のジョン・サーノ教授が発見した、肩こり・腰痛などの筋骨格系疾患を、心理的緊張を解くことによって治療しようという方法だ。
痛みと心の状態の間には、実は密接な関係がある。人間の体にはストレスや不快な感情を抑制しようとする「防衛機制」という働きがある。心の安定を保ち、精神的破局を避けるための意識的・無意識的な働き、心の安全装置だ。この防衛機制が、意識を他に向けさせるため、痛みを作り出すのである。不安、心配、恐怖、悲しみ、抑うつ、後悔、自責の念、罪悪感、なかでも「怒り」は無意識のうちに抑圧されてしまうことが多い。なぜなら怒りは社会的に敵視された感情だからだ。怒るからには原因がある。けれど、怒りを見せて、良いことがあるだろうか。怒ってばかりいる人の社会的評価はたいてい低い。

さて、腰痛が起きたらどうするか?痛みはこの際、無視。心の中の怒りを探し出すことだ。最近のできごとを振り返り、職場か家庭でストレスになったことはないか、緊張したことはないか、腹を立てたことはないかをじっくり考えてみよう。怒りを自覚さえできれば、痛みの出番はもうない。

 

私は、

もう2年近く、

腰痛というか坐骨神経痛に悩まされ続けています。

 

ヘルニアなどでよく言われるように、

ある日突然、

猛烈な痛みとなって”それ”は襲ってきたわけではなく、

ある日ふと、

右尻が凝るなぁと思って歩いていたら、

なんだか右足まで力が入りづらくなって、

以後、

鈍い痛みと痺れに悩まされ続けている

という感じです。

 

ニクヅキにカナメと書いて「腰」。

 

本当に腰はカラダのカナメだと、

腰を悪くしてから痛感していますが、

 

わりと体幹はしっかりしているほうだと思っていましたし、

いままでぎっくり腰ひとつ経験してきたこともなかったので、

まさか自分が腰?を悪くするなんて想像もしていませんでした。

 

整形外科も何件もハシゴし、

AKA博田法とよばれる関節療法もやりましたし、

いわゆる民間療法(整体とか)も試しました。

 

TVでもおなじみ、

腰痛治療のゴッドハンドと呼ばれる酒井慎太郎先生の

テニスボールマッサージもやってみました。

 


骨盤矯正・腰痛に効果・朝晩30秒ずつでOK - YouTube

 

結果はどれもイマイチで、

いっこうに治ることなく、

今日に至っております。

 

あちこちでいろんなことを言われました。

 

ヘルニアの痕が見えるけれど、

神経は圧迫していないから、

強いて言えばヘルニアの後遺症ですかね(「ヘルニアの後遺症」説)、

 

椎間板が老化していて、

クッションの役割を果たしていません(「腰椎椎間板症」説)、

 

椎間板の変性により腰椎がグラグラしていて、

周りの神経を刺激しているんです(「腰椎不安定症」説)、

 

背骨と骨盤が歪んでいるのが原因です(「骨盤の歪み」説)、

 

…などなど。

 

一か月もすれば治りますよと言っていたけれど、

実際には治らなかったし、

 

逆にこちらから、

治るんですかね?と聞いた医者には、

微妙にはぐらかされ、

 

結局、

原因不明のまま、

もう諦めるしかないのかという境地にいます。

 

とはいえ、

足が痛くなるのはイヤですし、

いつあの鈍い痛み・痺れに襲われるかと、

毎日鬱々として過ごしており、

 

諦めたいけれど、

「気になって仕方ない」というのが実情です。

 

だから、

重いものを持たないようにしたり、

姿勢には気を付けるようにしたり、

運動や体操もたまにやるようにしています。

 

痛むときは、

歩きすぎたのがいけなかったんじゃないかとか、

重いものを持ったからじゃないかとか、

寝るときにうつぶせになったのが悪かったんじゃないかとか、

姿勢に気を付けすぎて逆に筋肉が凝り固まったんじゃないかとか、

 

とにかく、

あれこれ原因を求めて彷徨っています。

 

つまり、

全然、諦めきれていません。

 

ところが、

この本によると、

こうして彷徨っている私は、

どうやら、

根拠のない情報に洗脳され「呪い」にかけられているらしいのです。

 

その「呪い」とは、

椎間板の老化によるものだから、

骨盤が歪んでいるから、

姿勢が悪いから、

筋力が低下しているから、

だから、

「治らない・治りがおそい」と思い込んでしまっていること。

 

そもそも、

一般的に腰痛の原因とされている多くの説明、

すなわち、

背骨の老化・骨粗鬆症・椎間板の異常・背骨や骨盤の異常・不良姿勢・腰部捻挫などについて、

筆者はどれも腰痛とは無関係だと言い切っています。

 

たとえば、

私が診断された「腰椎椎間板症」

 

これは、

背骨と背骨の間に位置し、

クッションの役目を果たす椎間板が潰れてしまい、

画像上では「背骨と背骨の間が狭くなっている」ように見えるのですが、

 

これについて筆者は

以下のように言っています。

 

椎間狭小は歳をとるにつれて自然発生的に増えるものであるから、

これが腰痛の直接的な原因だとすれば、

高齢になればなるほど腰痛患者が多いはず。

 

しかし実際は、

腰痛患者が多いのは働き盛りの三十代・四十代で、

その後は歳をとるにつれて減少傾向にある。

 

だから、

腰痛の原因と椎間板の老化(変性)は関係がない。

 

(椎間狭小は)二〇代から始まって直線的に増えていくので、やはり生理的な変化としか考えられません。要するに、椎間板がつぶれているのも正常な老化現象だということです。

 

椎間板の異常として代表的な「椎間板ヘルニア」についても、

腰痛や坐骨神経痛とは無関係と断定しています。

 

ヘルニアの画像所見と症状が一致しないことはよくありますし、

ヘルニアが原因なら除去すれば完治するはずですが、

除去(手術)しても予後が変わらない・再発がよくあるので、

腰痛や坐骨神経痛の原因とは言い切れないわけです。

 

姿勢も運動不足もそう。

これらは何の根拠もないとバッサリ。

 

このように、

根拠のない診断や情報に洗脳され、

その原因論から導かれたアドバイスにとらわれてしまうと、

どんどん腰痛から抜け出せなくなってしまうそうです。

 

身体の一部に注意を集中し続けていると、身体感覚が増強してしまい、ある種の自覚症状を感じるようになります。するとさらにその部分の感覚が気になり、いっそう注意を向けるという悪循環に陥ります。

 

こうしたアドバイスは結果的に、腰痛患者に暗示をかけてしまうことになります。どんな些細な変化も見逃さないように、腰に注意を向け続けろ、という暗示です。これでは腰痛を予防するどころか、かえって腰痛を起こしやすくしているようなものです。自己愛の強い人なら、簡単に心気症になってしまうでしょう。

 

治すことを諦めきれずに、

原因を探し求め、

原因にとらわれ、

常に日常の動作を気にしてしまっている私は、

まさにこの「どん詰まり」に該当していると思います。

 

あと、自己愛も強い。

めちゃくちゃ当てはまっています。

 

さらに厄介なことに、

この暗示は「条件反射」を引き起こすのだとか。

 

どういうことかというと、

 

根拠のない原因にも関わらず、

一度でもその原因による動作がきっかけとなって腰痛が発生したとき、

(=そうと思い込んでしまったとき)

 

同じような動作をしただけで、

腰痛が起こると思い込んでしまったり、

実際に起こりやすくなってしまうそうです。

 

筆者は、

このように頭が一度そうだと認識することを「条件づけ」

実際に痛みがあらわれることを「(条件)反射」と言っていました。

 

一度「条件づけ」ができあがってしまうと、本人の意思にかかわらず反射的に「条件反応」(腰痛)が現れるので、それを「消去」するにはそれなりの時間がかかってしまいます。

 

私も、

間違いなくこの条件反射にとらわれています。

 

その筆頭は、

「重いものを持つと痛い」という暗示。

 

いちど、

バックパックを背負って旅行していたら、

歩けなくなったことがあって、

それからはもう重いものは避けるようになりました。

 

でも、

この本を読んでからは、

あれだって最初はどうだったかわからないよな、

とちょっと疑問に思えてきました。

 

「椎間板がつぶれているから重いものはなるべく持たないように」と

医者に言われたり、

自分で調べたりして、

勝手に自分自身に暗示がかけられていただけで、

 

実際はそれが原因ではないのに、

重いものをもって症状が出たばかりに、

ああやっぱり重いものが原因だ!と勝手に関連づけ、

以後、条件反射しているのかもしれません。

 

筆者によると、

このような不確実な情報がもたらすノーシーボ効果(回復を遅らせること)と厄介な副作用(条件反射)は、

「呪い」以外の何でもなく、

この「呪い」を解くことが何より重要と説いています。

 

恐怖心をあおるような診断名、根拠のない誤った原因論、不適切なアドバイスのせいで、腰痛は治りにくくなるだけでなく、何度も再発するようになってしまうのです。こうしたアドバイスがあるかぎり、腰痛の予防は不可能だとわたしは思います。

 

こうなってくると、

もはや従来の治療法についても、

有効ではないと言わざるを得ません。

 

急性腰痛で最も一般的な治療法とされる安静は、

むしろ回復を遅らせることがわかっているし、

 

NSAIDをはじめとする薬物療法や注射も、

短期的には効果的だけれども、

長期的には効果が薄れたり、

副作用が出てしまいます。

 

興味深かったのは、

腰部コルセットも有効とは言い切れず、

しかしだからといって、

長期間のコルセットの使用が筋力の低下を招く

という証拠も全くないこと。

 

それから、

運動療法についても、

明確に効果があるとは言えないけれど、

運動自体は腰痛の治療や予防のためではなく、

心身の健康増進のためにやるべきということ。

 

この2つは目からウロコでした。

 

以前、NHKで、

チョイス@病気になったとき |あなたの腰痛 原因はストレス?

という番組をやっていましたが、

 

そこでは、

「椎間板性腰痛」という腰痛があって、

これには「運動療法」が有効と結論づけていましたが、

 

本書に照らし合わせると、

それすら疑わしくなってきます。

 

※椎間板性腰痛とは?

腰の骨『腰椎』(ようつい)と言われる部分には『椎骨』(ついこつ)と『椎間板』(ついかんばん)が交互に重なり、体の重みを支えている。椎骨や椎間板に負担がかかると、痛みを感じる神経が椎間板に伸びる。この状態で歩いたり座ったりの動作をすると椎間板が縮んだり、ずれたりして神経を刺激し痛みを起こす。これを『椎間板性腰痛』と呼ぶ。

 

※椎間板性腰痛の正しい対処法とは?

長時間同じ姿勢でいると偏って筋肉を使用することになる。
さらに、立ち姿勢と比べると座り姿勢は椎間板の負担がおよそ40%増加するというデータもある。
→デスクワークなど同じ姿勢を続けなければならない場合、腰を伸ばしたり、ひねったりするなど、こまめに体を動かすことが大切。

 

この本に則せば、

姿勢も運動不足も関係なく、

椎間板の変形が腰痛の原因と思い込んでしまい、

まわりや自分で「安静が第一」と、

勝手に自分をそっちへ追い込んでいた、

と言えるかもしれません。

 

そもそも本当に、

「椎間板の変性で神経が椎間板に伸びる」のなら、

高齢者ほど腰痛や坐骨神経痛に悩まされるはずでしょうし、

 

「神経が椎間板に伸びた状態で歩いたり座ったりの動作をすると、

椎間板が縮んだり、ずれたりして神経を刺激し痛みを起こす」

というのが正しければ、

 

伸びた神経を元に戻さない限り、

逆に立ったり座ったり飛んだり跳ねたりの運動は、

余計に痛みを発現させるということになるはずです。

 

このときの患者さんは、

運動療法でよくなったということでしたが、

運動することで間違った暗示から逃れることができたからではないか?

と思いました。

 

あるいは、

「あなたは椎間板性腰痛です」と確定診断を受け、

それはこうこうこういったものだから、

運動療法で絶対によくなりますよ!

という偽薬(プラシーボ)効果か。

 

いずれにしても、

診断自体は疑わしいですね。

 

では、

この長引く坐骨神経痛の原因はなんなのか?

 

それは、

一言で言うと、

ストレスなんだそうです。

 

ストレスを与える刺激(ストレッサ―)には、

温度・騒音・過労・外傷などの環境的要因による「外的ストレッサ―」

怒り・不安・恐怖・悲しみなどの心理要因による「内的ストレッサ―」があり、

 

このストレッサ―によって刺激を受けるのが、

私たちの自律神経です。

 

刺激を受けると自律神経が反応し、

私たちは以下のステップを踏むことになるのだとか。

 

①心拍数や血圧が上昇する(警告反応)

②これに身体を適応させる(抵抗)

③長引くと適応できなくなる(疲憊)

 

注目すべきなのは③で、

慢性のストレスにさらされると、

自律神経が正常に働かなくなってしまい、

 

たとえば、

立ち上がるときにめまいが生じたり(起立性低血圧)、

胃がキリキリ痛んだりするそうです。

 

自律神経が正常に働けば、

立ち上がるときに瞬時かつ自動的に、

下半身の血管を収縮させて、

脳内の血液を確保しようとしてくれるはずだけれども、

 

これが働かなくなると、

脳内の血液が不足し、

立ち上がると同時に脳貧血を起こすというわけです。

 

このような血管収縮の動きが、

実は、

腰痛・坐骨神経痛にもかかわっています。

 

つまり、

ストレスが長引いて、

自律神経がうまく働かなくなると、

血管の収縮がおかしなことになって、

血液の供給がうまくいかなくなる。

 

必要なところに必要なぶんだけ、

適切な血液が運ばれなくなるんだそうです。

 

臓器もそう、筋肉もそう、神経もそう。

 

これによって筋肉は酸素が足りない状態が起こり(虚血状態)、

化学的老廃物(乳酸)が蓄積して、

いわゆる筋肉痛を引き起こしたり、

より深刻な状態になると、

筋肉が痙攣を起こします(こむらがえり)。

そのなかにある神経はもっと繊細で、

わずかな酸素不足でも症状を出して危険を知らせるんだそうです。

 

この影響を最も受けやすい筋肉部位が、

「姿勢筋」と呼ばれる、

首~肩の部分と腰~お尻の部分の二か所。

 

ストレスが痛みを引き起こす仕組みは以下のとおりです。

 

ストレスを受ける

自律神経がうまく働かなくなる

血管の収縮がおかしなことになる

血流に異常が生じ、筋肉や神経に血液がまわらなくなる

酸素欠乏

痛みが発生

 

筋肉や神経の血流・酸素不足による痛みの発生を、

本書ではTMS(緊張性筋炎症候群)として紹介しています。

 

炎症といっても、

筋肉に炎症があるという意味ではなく、

筋肉内に何らかの変化があるという意味です。

 

その炎症(変化)は、

ストレスを受けて心が緊張することでもたらされます。

 

この緊張で自律神経のバランスが崩れ、

それが筋肉や神経ではなく消化器の動きに影響を及ぼすと、

胃や十二指腸、大腸に症状があらわれます。

 

腰痛や肩こりのような筋骨格系疾患に苦しむ患者の多くは、

胸やけ、胃酸過多、食道裂孔ヘルニア、胃十二指腸潰瘍、大腸炎などといった

消化器系疾患も患っているのだとか。

 

これらはいわゆる「心身症」と呼ばれるものですが、

腰痛や坐骨神経痛も「心身症に加えられるのだそうです。

 

ストレスを感じているという人が最も多い世代は30代・40代で、

これは年代別腰痛患者の分布と一致しています。

 

かくいう私も、

坐骨神経痛の前には、

原因不明の長引く咳(神経性咳嗽)と、

神経性胃炎・逆流性食道炎に悩まされていました。

 

ここまで一致すると、

もはや自分の腰痛・坐骨神経痛も、

やはり心身症なんじゃないかと思えて仕方ないのです。

 

著者は言います、

 

老化現象、外傷、運動不足、不良姿勢、先天的異常などという身体の構造異常は、腰下肢痛とは一切関係ありません。こうした誤った情報を信じているかぎり、不安や恐怖によって痛みが強くなるだけでなく、治癒が遅れたり、何度でも再発する可能性が高くなります。ですから、従来の原因論は誤りであることを、しっかり頭に叩き込んでほしいのです。

 

腰下肢痛の原因はストレスにあり、

そのストレスに気づいていない・気づこうとしないことこそ、

根本原因なのだそうです。

 

ストレスを受けたときに生じる不快な感情というのは、

自分が不快だと意識できているものもあれば、

無意識レベルで不快と感じているものもあり、

大抵それは抑圧されていると指摘しています。

 

わたしたちは自分自身を見失ってしまったり、パニック状態になるのを避けるために、不快な感情を極端に毛嫌いする傾向があります。とにかく忘れよう、考えないようにしよう、無視しよう、なかったことにしようなどと、不快な感情を意識から締め出してしまいます。それもほとんど何も考えずに、自動的にそうしてしまいます。さらに悪いことには、自分がそうしたことすら忘れてしまうのです。これが抑圧の正体です。

 

本来、私たちは、

不快な感情だらけなんだけども、

それと真っ向から向き合ってしまうと心が痛んで仕方ないから、

その注意をそらすために、

(自律神経が変なふうに働いて)身体の痛みとして発現するらしいのです。

 

本書の言葉を借りれば、

 

意識あるいは無意識は、心の痛みを味わうよりも、身体の痛みを味わう方がまだましだと判断して

 

身体が心の身代わりになっているという感じでしょうか。

 

では、

抑圧された不快な感情とは何か?

 

それこそ、

本書のタイトルにも含まれている「怒り」です。

 

厳密にいうと、

 

怒りのほかにも不安、心配、恐怖、悲しみ、抑うつ、後悔、自責の念、罪悪感など、いろいろある

 

ようなのですが、

 

負のエネルギーとして、

一番抑圧されてため込んでいるのは「怒り」で、

他のどんな感情よりも強力なんだとか。

 

わたしたちは幼いころから、怒りを表現することは悪いことだと教え込まれてきて(中略)、

(怒りを)抑制することを長く続けているうちに、いつのまにか怒りを抑えることが習い性となり、無意識にそうするまでになってしまいました。怒りが生じたことにも気づかず、自動的に抑え込んでしまうのです。

 

私の認識としては、

不安や自責の念なども、

広い意味で「怒り」ととらえてよいと思っています。

 

で、

この無意識下で抑圧されている「怒り」ですが、

大きく3つに大別されます。

 

①日常生活におけるプレッシャーによる怒り

②幼少時に受けたトラウマによる怒り

③欲求を満たすために自ら課したプレッシャーによる怒り

 

他のどんな治療にも反応しない慢性疼痛患者や、

TMSの治療プログラムが効かない人の一部には、

②を有していることが多く、

 

そうなると、

TMSの治療プログラム以外に、

心理療法を加える必要があるそうです。

(※ただし、これに該当するのは5%くらい)

 

また、③については、

「タイプT」と呼ばれる性格特性の持ち主に多く、

具体的には「完璧主義者」「善良主義者」が該当します。

 

(1)完璧でありたい:”人の上に立ちたい” ”業績を上げたい” ”成功したい” という欲求が強い 、高い理想と道徳的規範を持つ、自己批判的で他人の批判に過激

(2)人に好かれたい:”認められたい” ”愛されたい” ”賞賛されたい” ”尊敬されたい” という欲求が強い 、人を喜ばせたい、世間からは「いい奴」、よい母親、よい父親と思われたい衝動がある

(3)見捨てられたくない:たとえ歳をとったり独りになったとしても、見捨てられたくないという無意識的願望がある

(4)満足したい:食べ物、飲み物、喫煙、セックス、パーティ、娯楽などに満足を求める

(5)強靭な肉体でありたい:たくましい身体、丈夫な身体、セクシーな身体を求める

(6)死にたくない:死は避けられないという事実に対して無意識的に憤慨している

 

この「タイプT性格」が内的葛藤を引き起こし、気づかないうちに激しい怒りを生み出してしまうのです。

 

これも自分に当てはまっている。。。

 

もう、

読んでいると鳥肌がたつのです。

 

この「タイプT性格」について、

筆者は、

なおしたほうがいいとか、

どのように治ればいいとか、

そんなことは一切触れていませんでした。

 

③以外の「怒り」についても同様です。

 

理論的には、

この「抑圧された怒り」を消すことができれば、

TMS(=身体の痛み)は感じないことになりますが、

そんなことは無理だと言っています。

 

日常生活のストレスは生きているかぎり付いて回りますし、幼少時の出来事はすでに過去のものです。性格にしても、おいそれと変えられるものではありません。

 

彼によると、

 

「怒り」自体はどうしようもないけれど、

「抑圧」状態はなくすことができるので、

まずは「抑圧」を解いてみましょう、

怒りと仲よくなりましょう、

と言っています。

 

そもそも怒りとは、ある状況に対する情動反応のひとつでしかなく、その反応が一定の文化的枠組みの中で「怒り」と名づけられているにすぎません。情動そのものは基本的に善でも悪でもありません。

 

海や山がそうであるように、月や太陽がそうであるように、情動反応そのものは善でも悪でもありません。わたしたちが勝手に悪いものだと解釈しているだけなのです。どんな価値判断も加えずに、ただ怒りを観察してみてください。

 

ちょっと前に、私は、

小池龍之介さんの『平常心のレッスン』を読んで、

衝撃を受けたというか、

ものすごい納得感を得たのですが、

そこでも同じようなことが書かれていました。

 

平常心を保って、

「いろいろなことをありのままに受け容れる」ためには、

そもそも心はいつも浮き沈みするものだと認識しておくこと、

周りの状況をいちいち「いい/悪い」と判断せずに捨て置くこと、

自分の心の動きをモニタリングしてパターンを知っておくこと、

この3つが必要とのことでした。

 

小池さんに倣えば、

きっと「怒り」も然りでしょう。

 

仏教では「怒り」は身を滅ぼすとされているので、

怒らないようにすることが正しいわけですが、

なかなかそれは難しい。

 

しかしながら、

小池さんにも、この長谷川さんの本にも共通しているのは、

(起こったことやそれに対する自身の受け止め方に)いちいち価値判断をつけない

ということだと思います。

 

喜ぶことが良いことで、

怒ることが悪いなんてことはない。

 

大事なのは、

感情をも客観的にとらえることなのかな、と。

 

そうすると、

怒ったり喜んだりしないかもですね。

 

こうしてみると、

私はなんだか精神的にも肉体的にも、

ずっと悩んできたことに、

向き合おうとしてるんじゃないか?

糸口が見えつつあるんじゃないか?

と思えてきました。

 

で、

実際にはどうしたらいいの?

ってことになりますが、

 

まず、

原因についてきちんと理解することが大事だとしています。

 

その原因とは、

これまで追ってきたとおり、

以下にまとめられます。

 

①身体の構造異常が原因であるという思い込みは一切捨てる

(=「呪い」を解く)

 

②身体ではなく心に原因があると認識する

(特に抑圧されている不快な感情)

 

③心が注意をそらすために自律神経にアラートを発し、

 身体がその痛みを身代わりしていることを理解する

(※前述のストレスが痛みを引き起こす仕組みを参照)

 

そのうえで、

実際にやるべきこと(=治療)が以下です。

 

①TMSについての理解を深める

②身体への治療は一切しない

③痛みを叱る

④活動する

⑤問題の存在・怒りの存在に気づく

 

最初の①(理解を深める)は、

グループミーティングでもいいし、

近しい人に話すのでもいいそうです。

 

実際に成功した人の声を聞いたり、

本を読むのもアリ。

 

また、自分を信じこませるために、

「毎日の注意」と呼ばれる12条のリストを

1日1回15分復習すべしとありました。

 

「毎日の注意」とは、具体的に次のとおりです。

 

*痛みは構造異常ではなくTMSのせいで起こる

*痛みの直接的原因は軽い酸素欠乏である

*TMSは抑圧された感情が引き起こす無害な状態である

*主犯たる感情は抑圧された怒りである

*TMSは感情から注意をそらすためだけに存在する

*背中も腰も正常なので何も恐れることはない

*それゆえ身体を動かすことも危険ではない

*それゆえ元のように普通に身体を動かすべきである

*痛みを気に病んだり怯えたりしない

*注意を痛みから感情の問題に移す

*自分を管理するのは無意識ではなく自分自身である

*常に身体ではなく心に注目して考えなければならない

 

注意すべきことは、

これが単なる儀式になってしまっては元も子もないので、

時々内容をかえたり、

以下「TMS理論の5つの要点」に置き換えるなどして、

絵に描いた餅にならないようにすることが必要なのだとか。

 

*痛み、凝り、灼熱感、圧迫感、知覚異常、筋力低下などは、筋肉や神経もしくは腱の軽い酸素欠乏によって起きている。

*TMSの症状は、臨床医学の中で経験するどんな疾患よりも強い痛みを生み出すが、症状が消えてしまえば後遺症は残らないし、基本的にはまったく無害のものである。

*その痛みの原因は無意識下に抑圧された怒りである。TMSとは、抑圧された怒りからその意識をそらすために作り出されたものである。

*痛みの原因となる怒りは、日常生活のストレス、幼少時のトラウマ、完全主義や善良主義による内的葛藤の総和であり、抑圧された怒りの程度と症状の程度は一致している。

*症状はTMS理論の内容を理解するにつれて消えていくので心配はいらない。

 

こうした行動を時間をかけて反復しながら、

焦らず・ゆっくりやっていくことも

重要なポイントなんだそうです。

 

ちなみに、

TMS理論の第一人者で、

この本のなかでも頻繁に取り上げられているサーノ博士の別著に、

サーノ博士のヒーリング・バックペイン―腰痛・肩こりの原因と治療

という書籍がありますが、

 

この本の読み方についても、

毎日30ページ(一章)ずつ読んでそれ以上は進まず、

書いてあったことを復習すべし!

自分にあてはまる部分に注目したり、

同じ問題を抱えていた人たちが完治したことをしっかり頭に叩き込み、

次の日にもう一度読み返すべし!

と示唆しています。

 

痛みが消えない人や再発する人に限って、

十分に信じていなかったり、

言葉のうえでは理解していても無意識レベルでは理解していない

というケースが往々にしてあるので、

 

こうした時間をかけての反復作業や、

「毎日の注意」のようなアフィメーションは、

そうならないために非常に有効らしいです。

 

著者の長谷川さんが開設しているHPもありますので、

こういったものも活用してみるとよいかもしれませんね。

http://www.tms-japan.org/

 

次に、

②(身体への治療は一切しない)ですが、

 

これは、

身体の構造異常が原因であるという思い込みを捨て去るために、

やるべきだそうです。

 

先に挙げた、

なかなか痛みがとれなかったり・再発する人のなかには、

 

TMSの診断はほぼを受け入れているが、画像判断でみつかった構造異常も痛みに関係していると思い込んでいる

 

というケースがあり、

 

この思い込みが消えない限り、

いつまでも解決しないんだとか。

 

酸素欠乏が直接的な痛みの原因なので、

(自律神経機能の回復を待たずして)血流を改善させることもアリですが、

根本はやはり心にあって身体にはないので、

あくまで対処療法と割り切ってやるぶんには構わないようです。

 

具体的には、

身体を温めるとか、

血流改善の漢方を飲むといった対処法でしょうかね。

 

③(痛みを叱る)については、

 

身体に痛みが出たときには、

実際に自分で自分の痛みを叱りつけるとよいのだそうです。

 

具体的には、自分自身に対して、「何が起きているのかは知っているし、その痛みが無知なのも、怒りから注意をそらすトリックなのも知っている」と告げ、「もう注意を向けたり怖がったりはしない」と宣言するのです。

 

患部の血流量を増やすように命令するのもいいでしょう。「この状態に甘んじるつもりはない!」「絶対に負けないぞ!」「いいかげんにしろ!」「騙されるもんか!」「ふざけるな!」「このやろう!」など、どんな口汚い言葉でもいいですから、痛みに向かって怒鳴りつけてみてください。

 

④(活動する)は、

私たちは間違った情報・診断だけでなく、

それに紐づく行動と間違った原因の「条件づけ」によっても、

「呪い」がかけられてしまっているので、

 

その呪いを解くために、

怖がらず、

もとのように活動を再開させることが大事なんだとか。

 

身体を動かすことに恐れを抱いたままでは、

かりにいったん痛みは消えても、

遅かれ早かれ痛みは再発するそうです。

 

普通の生活をしたり、

(過激な運動も含めて)元のように身体を動かしたりして、

「条件づけ」をなかったことにする必要があります。

 

注意点としては、

急にやらないこと。

 

条件づけの消去にはある程度の時間がかかりますから、あまり急いで活動を再開すると、痛みを誘発してしまい、それがきっかけとなって回復が遅れる可能性があります。焦らずにゆっくりと、ひとつひとつ挑戦していってください。

 

自分に置き換えるなら、

少しずつ重い物を持って歩くようにすると、

いいのかもしれません。

 

ただし、

筆者はこのように警告もしています。

 

治療のためだとか、予防のための運動はやめてください。必要以上に体を意識してしまうことになって逆効果だからです。

 

運動をしたあとの痛みもTMSとは限らず、

単なる筋肉痛であることがほとんどなので、

その場合は、数日で治るとしています。

 

腰痛のためと思って運動したり、

しすぎることで痛みを生じてしまうと、

私たちの頭の中で「条件づけ」が出来上がってしまい、

かえって身体がノーシーボ反応してしまうので、

これはよくないというわけです。

 

最後の⑤(問題の存在・怒りの存在に気づく)は、

問題も怒りも取り除く必要はなく、

存在自体に気づくだけでよいのだそうです。

 

TMSは抑圧された怒りが原因であって、簡単に自覚できるような怒りとは何ひとつ関係ありません。腰痛を解決するには、そのとき表面上に浮上している怒りではなく、心の底に隠されている怒りを探し出す必要があるのです。

 

そのために、

不快な感情・怒りの根源となりえるものをリストアップし、

自分の力でかえられることと・かえられないことの

二つに分類するとよいそうです。

 

リストアップにあたって、

筆者はこのようにアドバイスしています。

 

生まれてから現在に至るまでのトラウマ、ストレス、プレッシャー、結婚や出産といった幸福な出来事も含めて書き出してください。

 

TMSが発症するのは、怒りに気づいていないからです。ならば、その怒りの根源となり得る出来事を明らかにし抑制または抑圧された怒りをしっかり確認できれば、その作業自体が強力な治療法になるはずです。頭の中だけで考えるのではなく、ノートに書きだした方が能率的ですし、問題が一層明確になります。

 

こうしてリスト化された問題や怒りのうち、

自分の力で変えられることは、

行動に移し、

自分の力ではどうにもならないことは、

その事実を受け入れましょう

としています。

 

毎日30分くらい、

この作業や仕分けをする時間をつくって、

熟考するとよいとも言っていました。

 

変えられること・変えられないことのどちらにしても、

最後には、

「この問題が悩みのタネだったのか」

と自分に言い聞かせ、

「もうこの問題で腰痛を起こさせるつもりはない!」

と宣言することが重要なんだそうです。

 

ものは試しですから、

やってみようと思いました。

 

怒りの存在に気づくためには、

リストアップや熟考が非常に大事というわけですが、

 

私のような完璧主義者は特に、

その怒りを理性やプライドのもと抑制している場合が多いので、

そういった人は「瞑想」をして、

一切の思考を取り払ってから、

ストレスリストをつくったり熟考するのがよい

と言っていました。

 

 瞑想とは、リラックスしつつも意識を明晰に保ち、過去にも未来にもとらわれずに、注意を「いま・ここ」の一点に集中することです。

 

(途中で)思考という名の「心のおしゃべる」が去来するはずです。でもそれに気がついたら、いつまでも追いかけずに静かな呼吸や数に注意を戻します。うまく集中できないからといって自分を責めたり、自分の能力に疑問を抱く必要はありません。わたしたちは一日に六万以上の思考を生み出しているそうですから、心がさまよい出すのはごく自然なことです。心がさまよい出したら、根気よく、焦らず、力まず、落ち込まずに、注意を「いま・ここ」に引き戻します。瞑想とは、自分の注意の行方を追いかけ、それを元に戻すことだけを執拗に繰り返す作業なのです。

 

TMS理論をどんなに理解していても、

日常生活が忙しくてストレスフルだと、

これもまた痛みが改善しなかったり再発します。

 

そうならないために、

瞑想によって静かに自分を見つめる時間や、

過去や一日を振り返って、

じっくり自分と向き合う時間が必要と述べられていました。

 

ちなみに、

ストレス・リストを作成していると、

自分が世の中に対して不満や怒りを抱いていることに気づくことが

多々あるそうなのですが、

世の中は変えられないので、

そういう場合は、

ニュース自体をシャットダウンしてみるのもよいそうです。

 

周りの情報に振り回されてしまう人というのも、

痛みや再発を引き起こすそうなので、

「ニュース」や「情報」に必要以上に接しないというのも

大事なポイントかもしれないですね。

 

以上の①~⑤をまっとうし、

それぞれの細かいプロセスを踏まえても、

なお痛みが改善されないようであれば、

心理療法の出番なのだそうです。

 

心理療法については、

それ単体では絶対に痛みはとれないので、

TMSに対しての理解をベースにしたうえで、

あくまで補助的に用いること、

副作用もあることを理解したうえで、

治療者も患者も選択すること、

などが注意点として挙げられていましたが、

 

心理療法が必要になるのは全体の5%程度にすぎず、

残りの95%は①~⑤で必ず改善すると

太鼓判押していました。

 

以上、長くなりましたが、

本書のレビューと要約でした。

(全然、要約になってませんが)

 

Amazonのレビューア―にも、

同じような感想お持ちの方がいらっしゃいましたが、

長いお付き合いになりそうだけど、

最長で1年なら1年と決めて、

やってみるのもいいかなと思いました。

 

そのうえで、

本書を再評価してもいいかなと思っています。

 

信じる必要はありません。疑いを抱いたままで結構ですから、とにかく行動に移してみてください。そして何が起きるのかを観察するのです。(中略)どうせ失うものは何もないのですから。

 

わたしたち人間の身体は、みなさんが考えている以上に強いものです。ちょっとやそっとのことでは、何の影響もウケないようにできています。(腰痛は二本足で直立する人類の宿命などと言われて久しいが)人類が直立歩行するようになってから350万年という実績に自信を持ちましょう。

 

 

以下は、個人的な備忘録です。

 

・ここ数十年間で腰痛・肩こりなどの筋骨格系疾患は確実に増えているが、逆に、胃・十二指腸などの消化器系疾患は減っている。これは、前者(筋骨格系疾患)が後者(消化器系疾患)の身代わりとなって増えているから。

 

・腰痛患者は30代・40代の働き盛りに多く、その後は歳をとるにつれて減少傾向にあるため、腰痛と老化は関係ない。

 

・【腰痛がなくならない】理由は、

①ほとんどは致命的な疾患でないため、医学会が本気で腰痛に取り組んでおらず、腰痛の本当の理由が解明されていないから

②(①のために)効果的な治療法がないから

③一度治っても、慢性化したり再発することが多いから

 

・【腰痛が増えている】理由は、

①【なくならない】理由①によって、腰痛患者が腰痛の原因を、老化現象・筋力低下・不良姿勢にあるなど、いい加減な情報に洗脳されているから。

②【なくならない】理由②によって、重いものを持ってはいけない・腰を反らせてはいけない・柔らかいマットに寝てはいけないなど、いい加減な治療法に踊らされているから。

③上記①②によって、腰痛患者は、いつ治るともわからない不安な状態が続き、老化だから仕方ないとか、姿勢を悪くしたら悪くなるとか、否定的な信念を植え付けられている。こうした根拠のない診断や情報は、患者に一種のノーシーボ効果をもたらし(治らない・よくないと思い込ませしまう)、「呪い」をかけている。

 

・根拠のない原因論から導かれたアドバイスに執着することは、むしろ危険。四六時中、神経をとがらせ、そのことが逆に腰に対する過剰な注意を招く。

 

・腰痛に限定した症状ではないが、そもそも否定的な説明をするより(根拠が不明確で治るかどうかわからない)、肯定的な説明をしたほうが(根拠が明確で絶対に治る)、なんでも治りやすい。

 

・椎間板の老化である「腰椎椎間板症」も、椎間板の異常として代表的な「椎間板ヘルニア」も、腰痛や坐骨神経痛とは無関係。その理由として、

①画像上のヘルニアの所見(位置)と、症状の発生箇所が一致しない

②画像上はヘルニアの所見があっても、症状がない人がたくさんいる

③ヘルニアを除去(手術)してもしなくても、長期経過後の予後は変わらない

④ヘルニアを除去(手術)しても、症状が変わらなかったり、再発することがある

⑤神経の圧迫は持続性の痛みを引き起こさない。通常は、痛みが短時間に消えて麻痺にかわるため、いつまでも治らない坐骨神経痛の原因がヘルニアにあるとは考えにくい

 

・骨盤の歪みは誰にでも見られるもので、異常ではない。骨盤の歪みの証拠として、左右の足の長さの違いが問題視されることがよくあるが、自然界や人体に完全な左右対称はあり得ない。

 

・直立姿勢の重心点も、歩き始めは真ん中よりやや右側にあり、5歳ごろになると一度真ん中に移動し、その後は徐々に左側に移っていく。これは右側にある肝臓が重いためで、歩き始めは肝臓の重さを補正できないが、徐々に重心を左に移すことで補正していき、大部分の人は自然に左足が軸足となる。だから下肢に左右差があっても、なんの不思議もない。

 

 ・とはいえ、現代医学は危険な疾患を見つけるためには、必要かつ適切。腰痛のなかには、「悪性腫瘍」「脊髄感染症」「圧迫骨折」「強直性脊椎炎」「場日症候群」といった危険な疾患もあるので、これらの有無を確認するためにもまずは現代医学の医師に診断を仰ぐことが第一。

 

・TMSの重症度は、以下の3つを総合的にみて判断されるが、これらの程度が高い(多い)人ほど、ストレスを自覚していない。すなわち、無意識に怒りや不快な感情を抑制している。

①症状の強さ

②症状の長さ

③恐怖心による活動制限の程度

 

・TMS治療プログラムという「認識療法」は、腰痛にまつわる「神話」をあばいて「呪い」を解き、TMSの仕組みを理解して、心の「防衛機能」を解除すること。

 

・TMS治療プログラムがまったく効かない患者がいるのも事実(1%くらい)。具体的には「痛みに生きる人」のような患者。

 *幼少時に両親と離れ、交流の断絶を経験している人。

  不幸で歪んだ交流のなかで、本当に甘えたりかまわれた経験がない人。

 *身近な愛の対象者から拒絶される不安や、すでに拒絶された状態にあるとき、

  痛みを発生する。

 *(過去)自分を捨てた人への恨みや攻撃感情が痛みとなって現れるが、

  それを周囲の対人関係にも示し、より攻撃的・抗争的になるため孤立化する。

  痛みにのみ生きざるを得ない状況を自分で作り上げてしまう。

 *そのなかで自己の生存理由と社会的役割を証明する最後の手段となるのが、

  痛みへの固執。それは身体的・器質的痛みでなければならず、

  慢性的に自己評価が低い現実世界において、

  (そこから注意をそらすために)痛みは生きていくうえで必要不可欠。

 *こうした”恨みの構造”は、かまわれることを受け付けないほど強固になっていて、

  これを解消するのには困難を極める。

 

■まとめ:

・腰下肢痛を克服するには、まずそれが身体の(筋骨格の)異常によるものではないと認め、心にあると理解すること。具体的には、心の中にある、抑制された(無意識下での)不快な感情(≒怒り)の存在に気づくこと。性格をかえる必要も、怒りを抑える必要はまったくない。

・抑圧されている(無意識の)不快な感情が、自律神経にアラートを発し、姿勢筋への血流低下・酸欠状態をつくりだすことで、身体が心の痛みを身代わりしている。

・「毎日の注意」を1日1回必ず復習し、何度も本を読み直したりHPをみて、TMSへの理解を深める。身体への治療は一切せず、しても対処療法と割り切ること。痛みがあるときには、自分で自分の痛みに叱り、原因が心にあると知っていると宣言すること。普通の行動・普通の運動を心がけ、運動するにしても治療のためとか予防のためと意識しないように。「普通にして大丈夫だから」と言い聞かせてやる。問題の存在や怒りの存在に気づくべく、1日1回ストレス・リストを作成し、問題を客観的に見つめる努力をする。そして、リストを二分し、自分の力で変えられることは行動に移し、自分の力ではどうにもならないことはその事実を受け入れる。

・疑いの心をもったままでいいので、とにかく行動に移してみること!もとの「呪い」に再び冒されそうになったら、またこの本に立ち戻るべし。

 

■カテゴリー:

 健康・医学

 

■評価:

 ★★★★★

 

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