座敷女 ★★☆☆☆

 

望月峯太郎さんのマンガ

座敷女
を読み終えました。
 
評価は、星2つです。
 
うーん、、、
怖かったけど、
 
結局、
彼女(サチコ)は何だったのか?とか、
そもそも彼女の動機は何なのか?とか、
なぜ"座敷女"なのか?とか、
 
いろいろ不可解なことが多くて、
自分にはなんだか消化不良のような後味でした。
 

▽内容

大学生の森ひろしは真夜中に隣部屋のドアがしつこくノックされていることに気づく。自分の部屋のドアを開け覗いてみると、そこにはロングヘアにロングコートの大女が立っていた。後日、その大女はひろしの部屋を訪れる。電話を貸してくれと頼まれたひろしは彼女を玄関に入れてしまう。 その日を境にひろしは「サチコ」と名乗るその大女に付きまとわれる。サチコとは何者なのか?目的は何なのか?サチコの異常な行動は次第にエスカレートしていき、やがてはひろしの周囲の人々をも巻き込んでいく。

 
上記は、
wikiから引っ張ってきた”あらすじ”なのですが、
同じくwiki先輩の”作品概要”によると、
 
都市伝説、ストーカー要素を含んだホラー作品。
 
とあります。
 
たしかに、
タイトルは、
「座敷童」という都市伝説から持ってきたものでしょうし、
サチコにつきまとわれ追いつめられるさまは、
「ストーカー」そのものです。

しかし、
座敷女」という言葉は、
作品のなかでは一切登場してきません。

作者によるシンボリックなタイトルネーミングとは思いますが、
結局、サチコの正体はわからずじまい。

どうやら、
この「わからなさ」がより一層の恐怖を掻き立てるとして、
この作品はホラー漫画として定評があるようです。

前出のwikiでも、
下記のような記述がありました。

怪物や幽霊が出てくるホラーではなく、得体の知れない人間に理不尽に付きまとわれるという心理的恐怖、また日本で1990年代後半で「ストーカー」という言葉が広まる以前に既にストーカーをモチーフにした作品として出版されていることもあり心理ホラー漫画としての評価は高い。
 
私自身は、
そもそもサチコが実在する人間なのか、
それともハナから実在なんてしてなかったのか?
 
あるいは、
どこまでが正常なヒロシが受け止めている世界で、
どこからが異常な(錯乱状態の)ヒロシが思い描いた世界なのか?
 
──これがどうにもこうにもよくわからず、
 
逆に、
真相がよくわからないことで
恐怖心がそこまで湧いてこないという、
一種の不発で終わってしまった感があります。
 
 
座敷女』の最大の魅力はこの座敷女の得体の知れない存在感です。
 
と書いてあったり、
 
座敷女」(サチコ)の正体が不明で、
なぜタイトルが「座敷女」なのかについても、
 
それこそが肝で、なんのことなのかさっぱらわからないだけになんとも言えない不気味さがあります。
 
と評しています。

そもそも、
彼女が実在するのかどうかもわからないし、
名前がサチコなのかどうかも今となっては不明だし、
 
ヒロシが付きまとわれるのには
理由があるように見せかけておいて、
実はなかったわけで、
結局その動機はわからない。

それなのに、
追いかけまわされ、
挙句の果てに、
住んでいたアパートの部屋には火をつけられ、
ヒロシは病院に収容される。

理由がないだけに、
怖いという恐怖。

得体が知れないこその切迫感。

望月峯太郎といえば、
ドラゴンヘッド』や『万祝(まいわい)』の作者ですが、
自分が知っているのはタイトルだけで、
読んだことはありません。

どうも彼は、
元来ホラー作家だったというわけではないようですが、
先のレビューアーさんによると、

彼の作品は、
 
あえて作品世界に描き切らない部分を残すことで、読むもの読む時によって様々な側面が見えてくる何度読んでも面白い作品群
 
なんだとか。

要は、
あるようでない・ないようである、
"座敷童"という都市伝説的な要素を盛り込むことで、
現実と非現実の境界を曖昧にし、
そこは読者の想像に任せるというわけです。
 
 
そこに読者は、
"得体の知れない恐怖"を感じるのでしょう。
(残念ながら、私はあまり感じなかったのですが)
 
家に住み着く座敷童。

ヒロシの体験した恐怖が、
座敷童のいわゆる"イタズラ"だとしたら、
次の(元の?)居住者である山本くんが、
いままた同じ恐怖を味わうであろうと想像させるはこびで
物語が終わっているのも頷けます。

こうして、
都市伝説は伝説として続いていくわけで、
 
だから、
最後は終わるようで終わっていない。

作者が「END?」と含みを持たせたのも、
そういうことなんでしょう。
 
曖昧な境界線を描き、
読者に想像させ、
そこに"得体の知れない恐怖"を喚起するという意味では、
 
先のレビューアーさんも、
(主人公・森ヒロシの)
精神の正常と異常の境界線もまた然り
と指摘しています。
 
女という異常とかかわりを持つようになってから極度に女を恐れ「あいつは必ずやって来る」と正常だった思考が毒されていきます。
 
 ヒロシが病院に収容されてから、
彼は相変わらずサチコに追いかけられるわけですが、
彼以外は誰もサチコを見ていないし、
 
ヒロシの死後も、
サチコの存在は風説化されたかのように描かれています。

 

不安が一人歩きして、
さらなる不安を増長するとはよく聞く話で、
実際に自分も、
そんな不安の一人歩きは体験したことがありますが、
 
その究極は、
正常な人間を異常な精神状態にまで追い詰めてしまうこと
と指摘しています。
 
「想像力」というのは人間が天から授かった至宝だが、同時にそれは心に不安を増大させる装置へと容易に変化する。実際には何でもない、ただの安全で平坦な道が広がっている暗闇でも、人間は光が存在せずに先が確認できないというだけでどうしようもなく疑心暗鬼に陥っては、勝手に不安を増大させていく。
 

たしかに、

ヒロシの味わった恐怖を疑似体験するのも怖いんですが、
 
あくまでも、
ヒロシ目線で描かれいる(と作者から見せつけられる)ことで、
 
前述したとおり、
どこまでが正常なヒロシが受け止めている世界で、
どこからが異常な(錯乱状態の)ヒロシが思い描いた世界なのか?
がわからなくなってしまっている、
──実はその状態にヒロシがいること(いたこと)自体もまた、
我々に恐怖を感じさせるわけで。
 
このあたりは、
春日武彦さんの
という本なんかも参考にしてみたいです。

女の存在も得体が知れなければ、
主人公の心理状態も得体が知れないというカオス。

それは私にとって、
恐怖というより巧妙なトリック
のように感じました。

みんな、
このことを面白いと言ってるのかな??

まあ私のこの感想は、
いろんな方のレビューを読んでからこそ
たどり着いた結論であって、

読了後の単純な感想としては、
先述のとおり、
意味がわからなすぎて、
逆に恐怖心がそこまで湧いてこなかった…
というのが本音です。
 
正直、
ここまで深読みするには時間がかかりすぎて、
あまり私の好みではない作品でした。
(もっとわかりやすいほうがいい…)

とはいえ、
一人暮らしだったり、
病院でリアルに入院していて、
このマンガ読んだら相当恐怖だろうなー。汗
 
 

■まとめ:

・「座敷女」の正体・動機・意味は結局よくわからない。わからないからこその恐怖・得体の知れない恐怖があると定評のホラー漫画だったが、自分にとっては、真相がわからなさすぎて、逆に恐怖心がそこまで湧いてこなかった。不発に終わる。
・女の存在も得体が知れなければ、主人公の心理状態も得体が知れないというカオスがあり、それこそが恐怖(らしい)。いるようでいない・いないようでいる「座敷女」が都市伝説化されて描かれているサマも怖いが、主人公の心理状態がだんだん異常になっていくサマも怖い。ただ、私にはこれは恐怖というよりも、作者による巧妙なトリックだと感じた。
・不安が一人歩きすることで、「想像力」は人の精神を異常なまでに狂わせる。ちょっとしたことが、とんでもない恐怖となって、現実と非現実の境界線がだんだん曖昧になり、風説化し、そしてまたそのことが別の人間の日常を狂わせていく。
 

■カテゴリー:

ホラーマンガ
 
 

■評価:

★★☆☆☆
 
 

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