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烙印 ★★★☆☆

天野節子さん

烙印 (幻冬舎文庫)

を読み終えました。

 

評価は、星3つです。

(限りなく4に近いですが)

 

先に、

氷の華 (幻冬舎文庫)

彷徨い人 (幻冬舎文庫)

を読んでいるのですが、

 

この2作に較べると、

ちょっと物足りなかったかなと思います。

 

※過去のブックレビューはこちら

氷の華 ★★★★☆ - pole_poleのブログ

彷徨い人 ★★★★☆ - pole_poleのブログ

 

それでもやっぱり、

天野さんのミステリーは面白い!

 

天野さんの小説は、

・先が気になって仕方ない

・ついページをめくりたくなる

といったグリップ力が非常に強いのですが、

 

今回もまた、

そんな”天野節”が効いていました。

 

 

▽内容:

東京の公園で男の死体が発見された。捜査に当たった戸田刑事は、その数日前に被害者の地元で白骨体が発掘されていたことを知る。発見場所も、殺害時期も異なる二つの遺体。事件の関連性を疑う戸田は、遺留品から一人の男に辿り着く。勘と足だけを頼りに真実に迫るベテラン刑事と頭脳明晰な若き犯人。二人の緊迫の攻防戦を描いた傑作ミステリ。

 

本書の解説には、

「時空を超えて絡まる”人間”ミステリー」

とあるのですが、

 

そのタイトルどおり、

本作品は、

・江戸時代と今

・兵庫と東京

──というふうに、

時と場(空)がシンクロしながら進んでいくミステリー小説になっています。

 

物語は、

1609年、

千葉の房総沖(御宿)で起きた「サン・フランシスコ号漂着事故」から始まります。

 

この事故は、

実際に日本で起きた外国船の座礁事故であり、

フィリピンからメキシコに向かっていたスペインの大型商船が、

台風で流され、

千葉の岩和田(いわわだ)海岸に座礁。

 

300人以上の乗組員が、

村民によって救助され、

翌年、

日本の使節団によってメキシコに帰還したという史実があるようで、

 

村民の一人であるミヅキが、

他の村民らと一緒に南蛮人の救助に奔走するところから、

この物語は幕を開けるのです。

 

一方、

時は2010年9月3日、

兵庫県養父市で、

成人男性の白骨化死体が発見されます。

 

すでにこの白骨体は、

死後25年~35年を経過しており、

身元の特定も難しい状態。

 

しかし、

後部の頭蓋骨に、

何者かに殴られたような陥没があることから、

他殺の線が強まります。

 

それから2カ月後の11月8日に、

今度は東京都豊島区の千早町にある公園で、

60代男性の縊死死体が見つかる。

 

こちらは自殺かと思いきや、

直前に散髪して整髪料をつけていること、

遺体から睡眠薬が検出されたことが決定打となって、

他殺と断定。

 

そして、

それぞれ別の場所で起きた個別の事件でありながら、

この東西の二つの遺体が、

物語が進むにつれ、

その関連性を顕してくるわけです。

 

同じく、

かつての座礁事件もまた、

ここに絡んでくるという。

 

解説で、

河村道子さんは、

本書について次のような表現をしています。

 

時代を行きつ、戻りつ、宿命と対峙する男を描いた本作『烙印』

 

”なぜここが?この時代が?”というのが、読者が本書で出会う、最初のミステリー 

 

登場人物をかえて、

それぞれの視点から交互に物語を描いていく手法もありますが、

こちらは、

時と場をかえて交互に手繰っていくパターン。

 

本作は、

天野さんの作品のなかでは、

第三作目にあたりますが、

デビュー作の『氷の華』が前者の手法による描き方だったのに対し、

本作『烙印』は後者に該当するというわけです。

 

どちらもそれぞれの成り行きを見せながら、

最後はきっちりつながり、

うまく収束させるという。

 

以前にも書きましたが、

このあたりの進行のさせ方やまとめ方は、

この作家は本当にうまいと思う。

 

展開が決してチンプンカンプンではないし、

かといってグダグダしすぎてもいない。

 

どんどんジグソーパズルが出来上がってきて、

最後は、

なんと!このピース来たか?!で終わる。

 

そこに驚きもあれば、

ちょっとがっかりすることもあるんですが、

いずれにしても、

パズルが出来上がっていく工程が面白くて、

ついつい先を読みたくなるというのが、

彼女の作品の醍醐味だと思います。

 

とはいえ、

一作目の『氷の華』や四作目の『彷徨い人』に較べると、

”先が気になる感”は少し弱かったかなと思います。

 

最初から犯人はほぼ決まっていて、

どちらかというと、

その動機や犯行の経緯を明らかにしていくのがメインだったので、

そうなるとちょっとグダグダしちゃって当然なんですが、

いつものようには、

なかなかページが進まなかったのが今回の作品でした。

(とはいえ、進みやすいんですけどね)

 

あと、

上記にも関係しますが、

細かいところでいうと、

 

・犯行時間のアリバイが入り組んでいて、誰の車を使って・どの駐車場に泊めたのか?の経緯が複雑だった。ここが事件解明の肝であることはわかるんだけど、逆にグチャグチャしすぎて、正直、もうどうでもいい…と思った。

 

・久保田(←東京の公園で遺体として見つかったオッサン)を殺した犯行動機が、イマイチよくわからなかった。きっかけは、共に殺害した養父市の白骨化死体で、それが見つかってしまったからなんだろうけれど、本来の動機は、自分の正体を見破られて強請られたことと、母を寝取られたこと。ここまではわかる。でも、ココこそ、ずっとこの物語で追いかけてきたことなんだから、たとえ、(おそらくは、言いがかりとして使われた?)きっかけの部分であっても、詳細を明らかにしてほしかった。

 

・犯行の協力者に女性がいることは最初からわかっていたが、この女性がコイツだったかーというオチには少し不満だった。それまでに、別の女性をにおわすようなシーンもあったし、何より、彼女自身、証言を偽っていたわけで、それが最後の最後になって突然覆されるとは…。まさか警察相手に偽証はしないだろうという勝手な思い込みがこっちにはあるから、その「まさか」が引っくりかえることなんて予想もしていないわけで、それだけに、なんだよー偽証だったのかよー!しかもここ(結末)でそれが判明するのはズルいと思った。

 

──といったところが不満で、

このあたりがマイナスポイントでした。

 

これは、

天野さんの作品の良いところでもあり、

悪いところでもあると思うのですが、

そこはハッキリしてよ!という部分が結構曖昧に描かれていて

 

たとえば、

今回の犯行動機(どんな言葉で久保田に強請られたのか?)もそうだし、

彷徨い人』においても、

真相の総括が粗かった点(共犯者がどこまで明確に犯行に協力していたのか?)も、

自分は不完全燃焼のマイナスポイントととらえています。

 

作者としては、書いたつもりだろうし、
そんなの読み取れよ!ってハナシだと思いますが、

 

曖昧さがあまり好きではない私からすると、
それがちょっと尻切れトンボみたいで残念でした。

 

彷徨い人 ★★★★☆ - pole_poleのブログ より)

 

今回もまさにこれで↑、

あえて濁して、

読者に読み取らせるというスタイルなのかもしれませんが、

 

自分としては、やっぱり、

どうやって(どういう言葉で)久保田に強請られたのか?

が気になるわけです。

 

だって、

ずっとその経緯を追ってきたのですから。

 

もちろん、

本当の動機は、

・犯人が自分の正体を見破られたこと

・その昔、母親を寝取られたのを見てしまったこと

──の2点のわけで(←ここはクリア)、

 

おそらくきっかけは、

昔、(久保田と犯人の二人が)殺した男の白骨化死体が見つかってしまったこと

であり、

 

自分に捜査の手が伸びてるからうまく処理したい、

最悪、自分がつかまってもお前の名前は言わないようにしたい、

でもその前に、

いま金に困っていて家族を養えないから、

とりあえず金を融通してくれ

──みたいなことを(言いがかりとして)

久保田は犯人に強請りをかけたんだろうなと

なんとなーく想像はできるのですが、

 

これはあくまでも想像であって、

はっきりしたところはわからないわけです。

 

なぜなら、

書いてないから。

 

作者としては、

そこは核心ではないから(←ただのキッカケに過ぎないから)、

そんなのはいちいちクリアにしておく必要はない、

むしろ想像の範囲でご自由にどうぞ!と

(厚意で)私たちを遊ばせてくれているのかもしれませんが、

 

犯行動機や具体的な犯行の流れにスペースを割いてきたのだから、

もう自分のなかでは、

このキッカケすら、

十分、核心に入ってしまっているのです。

 

だから、

曖昧にせず、

ハッキリ書いて欲しかったかな、と。

 

──しかし、

こうやってブックレビューをつけてみると、

自分って白黒つけないとイヤなヤツなんだな、

っていうことが痛いほどよくわかります。笑

 

わかりづらいのが嫌いで、

複雑なのがイラつく。

 

物事はシンプルに、

白黒ハッキリしていないとダメ。

 

だから、

行間とか余韻があまり好きじゃない。

 

日本の大河ドラマがダメで、

韓国の歴史ドラマは好きなのは、

きっと、

前者が行間を読ませるところが多いのに対し、

後者が単純でわかりやすいからだと思います。

 

人によっては、

行間を読ませるからこそ、

頭を使うからこそ、

だからこそおもしろいんだ!

っていうタイプも多いと思いますが、

自分はそれがダメ。

 

トリックもわかりやすいほうがいい。

 

でも、

わかりやすすぎると、

先が読めてしまってつまらないから、

多少、入り組んでいたほうがいいんだけど、

最終的にはそれがちゃんとクリアになっていないと、

どうにもこうにも腑に落ちなかったりする。

 

──そう思うと、

短気でつまんねーな自分!

って思わざるを得ませんが。

 

ま、仕方ないですね。

これが自分なので。

 

きっとこれからも、

こういう作品でないと、

自分は文句を垂れるんだろうな。

 

ということで、

ちょっとレビューから逸れてしまいましたが、

以下は登場人物メモです。

 

※※ネタバレも含まれているので注意※※

 

・戸田刑事(戸田克己):

事件解決にあたる本庁の警部。

妻・頼子のほか、

娘が二人いる(美由紀・奈津紀)。

 

・河合刑事(河合信二):

目白警察署の若手デカ。

久保田殺害事件の所轄担当で、

戸田と一緒に捜査にあたる。

 

・近藤刑事(近藤雅彦):

養父署に勤務する刑事。

白骨化死体の捜査にあたる。

 

小島武則:

警視庁本庁に勤める若い鑑識官。

戸田の依頼で、久保田殺害の捜査にあたる。

千葉出身。

養父市の白骨化死体と江戸時代のスペイン船遭難事故、

そして東京の縊死事件の関連性を、

鑑識の立場から科学的に解明。

 

・久保田和夫:

養父市出身で東京・豊島の公園で縊死死体で見つかる。

睡眠薬を飲まされ絞殺。

昔から怠け者で女性関係も派手。

不動産業を営んでいたがうまくいかず、

ギャンブルに明け暮れ、借金を抱えていた。

 

・久保田郁子:

久保田和夫の妻。

農業に勤しみ、夫にかわって一家の家計を支えていた。

 

・鈴木太郎:

本名は掃部昌樹(に扮していた)。

スタジオA&Aに所属する新鋭カメラマン。

その後、正体は秋津直哉であったことが判明。

 

・牧田志保:

草原プロダクションに所属するファッションモデル。

雑誌『麗麗』に載っていた人物。

 

・堀由布子:

インテリア関係のスタイリスト。

中野在住。

のちに鈴木太郎の恋人であることが判明、

鈴木が久保田殺害事件に関わっていることがわかっていたため、

ニセの証言やアリバイ工作に協力。

 

・清水慶介/溝口幸平:

鈴木とともに、スタジオA&Aを経営するカメラマン。

清水は鈴木とともに個展を開催。

いずれも30代後半。

 

・井上悟:

A&Aに勤めるカメラマン助手。

鈴木太郎に付き添い、また彼を慕っている好青年。

 

宮川典子

A&Aに勤める女性事務員。

 

・横山牧夫/菊枝/誠一:

白骨化死体が見つかったところの土地の持ち主。

牧夫は一家の当主だが、脳梗塞に倒れ、入院。

菊枝は牧夫の嫁で誠一の母。

弟の久保田和夫が東京の公園で遺体となって見つかる。

誠一は横山夫妻の息子で、百貨店勤務。

 

・佐々木洋介:

横山家が昔建てたアパート(たちばな荘)に住んでいた住人。

戸田たちに、吉田を紹介。

 

・吉田照子:

佐々木と同じく、たちばな荘のかつての住人。

一時期たちばな荘に住んでいたという秋津夫妻のことを知っており、

また、その夫妻に産まれた子が金髪碧眼だったことを証言した人。

 

・野村正枝:

白骨化死体が見つかった畑の近くに住む老婦人。

その昔、横山家が建てたアパート(たちばな荘)が

付近にあったことを証言した人。

 

・秋津省吾・佳代子:

たちばな荘に住んでいた圏外から来た夫婦。

夫・省吾は30年前に行方不明に。

のちに白骨化死体は秋津省吾と判明。

妻・佳代子は5年後にうつ病から胃癌になって病死。

妻の祖先はオランダ人。

夫妻の間に産まれた子供(直哉)の外見が欧米系だったことから、

夫婦仲が悪化、夫が暴力を振るい始める。

 

・秋津直哉:

秋津省吾と佳代子のあいだに産まれた子。

生まれながらにして金髪碧眼で隔世遺伝だったが、

その出生が疑われていた。

両親を亡くしたあとは、施設(たんぽぽの家)に引き取られ、

高卒までそこで過ごす。

その後、大阪に出るも、消息は不明。

のちに、秋津直哉=鈴木太郎であることが発覚。

 

・掃部昌樹:

秋津直哉と同じ施設で育った友人。

中学のときに養子縁組が整い、掃部家に引き取られる。

当初、鈴木太郎の本名とされていたが、

阪神淡路大震災で死亡。

秋津直哉がこれを利用して掃部になりすます。

 

・有馬静雄:

久保田和夫の高校時代の友人。

朝来(あさご)市でコンビニを経営。

かつて、久保田と秋津佳代子に関係があったことを証言。

 

・西尾登紀子・木村佐知子:

両親を亡くした秋津直哉が引き取られていた施設(たんぽぽの家)の学院長。

木村は前学院長で、直哉が慕っていた当時の先生。

 

・ミヅキ:

岩和田村の村民。

村ではよそ者で、赤ん坊のときに祖父母と岩和田村に移住。

海女の手伝いをしていた。

ニックと結ばれ、丈太を産む。

その後、岩和田村の村民(平助)と結婚、一男(孝太)をもうける。

祖父は久兵衛、祖母はサヨ。

 

・ニック:

座礁したフランシスコ号の船員。

ミヅキに助けられ、

岩和田村に滞在中、彼女と結ばれる。

 

・丈太:

ミヅキとニックの子供。

生まれながらにして金髪碧眼だったため、長崎へ留学。

オランダ人と結婚し、長崎で海産物商(久兵衛)を営む。

 

・ナナ:

岩和田村の海女。

太助の嫁。

 

・太助:

岩和田村の漁師。

ナナの夫で、平助の兄(ミヅキの義兄)。

 

・篠塚貞夫/大木速雄:

篠塚は、戸田と知己のある監察医

大木は、篠塚が戸田に紹介した遺伝学者で、

東南大学遺伝医療学部の教授。

戸田に隔世遺伝について指南。

 

・高野みどり:

鳥取砂丘のホテル(ダイヤモンドホテル)のレストランに勤める従業員。

鈴木太郎のファンで、

たまたま葬儀で同じホテルに泊まっていた久保田に、

鈴木のことを聞かれ、

個人情報のかわりに『麗麗』を教える。

 

他にも何人か出てくるんですが、

こうしてみると、

氷の華』や『彷徨い人』のときと違って、

登場人物が非常に多い!

 

これらの作品と違って、

本作が複雑でちょっとグダグダしているように感じたのは、

この登場人物の多さも一因としてあるのかもしれません。

 

もちろん、

主な登場人物は限られています。

 

『氷の華』でも活躍した戸田刑事

後作の『彷徨い人』でも暗躍する小島鑑識官

そして犯人である鈴木太郎

 

主要メンバーはこの3人なんですが、

とにかく取り巻く人物が多い!

 

そして、

先のマイナスポイントでも触れましたが(以下再掲)、

 

・犯行の協力者に女性がいることは最初からわかっていたが、この女性がコイツだったかーというオチには少し不満だった。それまでに、別の女性をにおわすようなシーンもあったし、何より、彼女自身、証言を偽っていたわけで、それが最後の最後になって突然覆されるとは…。まさか警察相手に偽証はしないだろうという勝手な思い込みがこっちにはあるから、その「まさか」が引っくりかえることなんて予想もしていないわけで、それだけに、なんだよー偽証だったのかよー!しかもここ(結末)でそれが判明するのはズルいと思った。

 

結局、

この「協力者」とは、

堀由布子のことで、

「別の女性をにおわす」という「別の女性」とは、

牧田志保や宮川典子を指すわけですが、

 

要は、

牧田志保(モデル)や宮川典子(事務員)を

協力者のようににおわせておいて、

実は堀由布子(スタイリスト)が

犯人(鈴木太郎)の恋人であり、

犯行の協力者でもあったということです。

 

戸田たちがA&Aを訪れたとき、

 

心なしか、鈴木を見る牧田志保の目が熱を帯びているように見える

 

と(我々に)印象づけたシーンや、

 

その後、

堀由布子の祖父母の実家に電話をかけて、

彼女のアリバイがとれたときの、

 

戸田の頭の中で、牧田志保と宮川典子の顔が点滅した

 

という記述。

 

これらがまさに、

”(犯行の)協力者が、堀由布子であるはずはない”

というイメージを私たちに植え付けました。

 

そして、

最後までかく乱させる。

 

堀由布子は何度か戸田から職質を受けていて、

鈴木太郎や自身のアリバイを証言しているのですが、

最後の最後に、

彼女の証言に偽りがあったことが判明します。

 

(かく乱されていたせいで)

この結末こそ、

どんでん返しのポイントになるのですが、

自分にとっては、

そんなこと(偽証)あっていいのか?!

──というちょっとした怒り?にもつながりました。

 

その理由は、

ひとつには先述のとおり、

「まさか警察相手に偽証はしないだろうという勝手な思い込み」があったからなんですが、

 

もうひとつは、

(堀由布子にアリバイがあるとすると)

残りは牧田志保か宮川典子しかいない!

──みたいな書き方をしておいて、

結局、そのあとは、

なぜか牧田志保か堀由布子かという流れになっていること。

 

つまり、

宮川典子については何にも突っ込まれていない。

 

もちろん、

読者だって、

なんとなくの雰囲気で、

コイツ(=宮川典子)じゃねーな…

っていうことはわかっているんですが、

 

それにしたって、

ちょっとここはあまりにスルーしすぎなんじゃないか?

と思う次第なのです。

 

まさかの偽証なんてちょっと荒業だよな、

まぁこっちの勝手な思い込みだから仕方ないけど、

それでも最後の最後に偽証ってわかるところがズルいよな、

しかも、

それまでは牧田か宮川かってかく乱させながら、

宮川についてのアリバイは全然突っ込んでいないし!

──みたいな。

 

この、

犯行の「協力者」といい、

久保田を眠らせて公園の木に吊るすまでの

時間や車・駐車場云々のところといい、

鈴木がアリバイづくりに利用した

ホテルの監視カメラといい、

 

全体的に、

今回はわりと右往左往し、

かく乱させられた気がします。

 

いや、

実際の捜査なんてほんと、

右往左往してばっか、

かく乱されまくりなんでしょうけれど、

 

せっかちな自分にはそれがじれったくて、

最後にこういうことだったんなら、

下手にかく乱させてほしくなかった的な、

そんな後味を感じずにいられなかった次第です。

 

あーわがまま!笑

 

最後に、

鈴木太郎の正体が、

実は秋津直哉で、

掃部昌樹の戸籍をつかって別人になりすましていた、

というところは、

この物語の核心のひとつかなと思うのですが、

 

そのことには、

なんとなくそうだろうなーと途中から気づくんですが、

私は松本清張の『砂の器』と重なりました。

 

あの話もたしか、

犯人である和賀英良(本浦秀夫)が、

空襲で亡くなった人物の戸籍を乗っ取り、

ずっと自身の身分を偽って生きてきて、

 

ようやく成功を手に入れよう!というときになって、

彼の正体を知る人物(三木謙一)が現れ、

和賀は三木を蒲田操車場で殺してしまう。

 

和賀の場合は音楽家、

鈴木の場合はカメラマン、

砂の器』で殺された三木は善人でしたが、

『烙印』で殺された久保田は悪人。

 

そういう違いはあるものの、

さあついに成功をつかむぞ!というときに

正体を暴かれそうになったことがきっかけで、

和賀も鈴木も人を殺してしまうのです。

 

二人に共通しているのは、

暗い過去。

 

和賀はハンセン病で村を追われた父と、

その父と決別した過去をもち、

鈴木は隔世遺伝で出生を疑われ、

父親を殺した過去をもつ。

 

さらに共通するのは、

そんな彼らを慕う女性がいたということ。

 

和賀には成瀬理恵子、

鈴木には堀由布子、

──というふうに。

 

彼女たちは、

彼らが何か犯行をおかしたことを知っていて、

成瀬理恵子は返り血を浴びた衣服を切り刻んで処理し(←有名な紙吹雪のシーン)、

堀由布子は犯行に使われた車のキーを肌身離さず持っていたと偽ります。

 

天野さんが『氷の華』でデビューしたとき、

”女性版・松本清張

と騒がれたそうですが、

自分が実際に『氷の華』を読んだときは、

どこが松本清張なのかあまりよくわかりませんでした。

 

でも、

この作品を読んだとき、

まさに清張じゃん!

と実感しました。

 

砂の器』を一度でも読んだことがある方は、

是非、読んでみてください。

 

よく似てます。

 


■まとめ:

・天野節子さんの3作目にあたるミステリー小説。時と場を交錯させて、それぞれの場所・時代から交互に物語を進めていき、最後にすべてがつながるという展開は、相変わらずアッパレ。話としては、松本清張の『砂の器』によく似ている。


・ただ、他の作品(『氷の華』や『彷徨い人』)と較べると、”先が気になって仕方ない感”は薄く、そこまでぐいぐいと引き込まれなかった。それでも読みやすく、相変わらず面白いほうには違いないが。

 

・登場人物が多く、あらかじめ犯人はわかっていて、犯人の犯行動機や具体的な経緯、協力者の解明のほうに焦点があてられていたので、ちょっとグダグダ感があった。全体的に、右往左往し、かく乱されてしまう部分が多かった。


■カテゴリー:

ミステリ-

 

■評価:

★★★☆☆

 


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烙印 (幻冬舎文庫)

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