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映画 カティンの森  ★★★☆☆

ちょっと前に、

NHKのプレミアムシネマで放送していた映画

カティンの森

を観ました(録画)。

 

 

評価は、星3つです。

 

一種の戦争映画なんですが、

こういう場合の評価って難しい。

 

戦争のことを評価するような感じもして、

それだと、

めちゃくちゃおこがましい。

 

なので、

あくまで、

ストーリーにどれだけ引き込まれたか、

(感動だけでなく)観終ったあとにどれだけ印象に残ったか、

キャストや演技・音楽などはどうだったか、

という点での評価であることを定義しておきたいと思います。

 

上記の視点でコメントすると、

上映中の引き込まれ感は、

暗いけどある。

 

ただし、

”行間を読め”的なストーリー展開になっていて、

ん??どういうこと??

と頭をつかったり、

あるいは使ってもイマイチよくわからなかったりで、

勘の鈍い自分は難航しました。

 

そして、

観終ったあとの印象ですが、

これは最高に重い。。

最後は虐殺シーンで終わるので、

ドーン…という重苦しい後味が残ります。

 

でも、

こんなことあったのか?!という驚きというか、

私たちが知らない戦争の一面って、

まだまだあるんだなーと気づかされます。

 

知的発見というには、

これまたおこがましい。

何が知的なのかってハナシですし。

(戦争の)残虐性の発見といったほうが、

正しいかもしれません。

 

キャストや演技については、

正直、上手いんだかなんだかわからなかった。

音楽はあまり印象に残っていません。

 

上記を総じてとらえて、

今回は星3つ(=まあまあ)にしました。

 

▽内容

1939年9月1日ドイツに、17日にソ連に侵略されたポーランド。そして、捕虜になった約15,000人のポーランド人将校が行方不明になるが、後に多くの遺体がカティンで発見される。タブーとされてきた“カティンの森事件”の真実を、将校たちの姿と彼らの帰還を待つ家族の姿を通して描いた衝撃作!将校たちの、国家への忠誠と、家族への愛の狭間で引き裂かれる思い。人々の運命は戦争によって翻弄され…。

 

この作品は、

2007年に公開されたポーランド映画で、

原作の『カティンの森』という小説を、

父親をこの事件で亡くしているアンジェイ・ワイダという方が、

監督として映画化したものらしいです。

Andrzej Wajda

 

この監督、

自らの出自のせいか、

第二次大戦下および戦後のポーランドを描いた作品を、

多く手掛けているようです。

 

当初ポーランドは、

ナチス・ドイツとソ連によって占領されました。

 

戦後は、

ドイツからの「解放」という大義名分のもと、

実態はソ連スターリン)に支配されます。

 

この映画を観終って感じたのは、

こういったポーランドの歴史を多少なりとも知っておいたほうが、

ストーリーが理解しやすいな、

ということ。


私はまったくこのあたりには無頓着で、

知識ゼロだったため、

観終ってから自分で調べて、

あーそういうことだったのね…

という感じでした。

 

話をキャストに戻します。

 

主演は、

アンナ役のマヤ・オスタシェフスカさんと、

アンジェイ大尉役のアルトゥル・ジミイェフスキさん。

 

これ、ただのコピペです。

東欧の人の名前ってほんと難しい。。。

きっとポーランドでは有名な方々と思いますが、

どちらも見たことのないお顔でした。

 

このアンジェイ大尉こそ、

まさにカティンの森に連行され、

虐殺される悲劇の主人公です。

 

アンナはその妻で、

囚われた夫をずっと待ち続けるんですが、

カティンの墓を暴いたドイツ軍とそれに従軍した法医学研究員の手によって、

アンジェイの手帳が見つけられます。

 

戦後、

遺品として彼女のもとに届いたその手帳から、

夫がどのように死んでいったかを知ることに。

 

夫の死それ自体は、

その前に友人から知らされてしまうのですが(後述)、

実際にどう死んでいったかは知らされていませんでした。

 

映画の最後は、

このアンジェイの手記に基づいて、

ポーランド将校たちがカティンへ移送され、

いかに残酷に殺されていったかを、

たどって終わります。

 

これが本当に残酷で。。。

 

途中途中で、

実際の映像も流れたりして、

もちろん白黒だし、

死後何年か経っているので骸骨化しているんですが、

事実なだけにものすごく重苦しい。

 

この手帳がアンナに届けられる以前、

アンナはずっと彼の帰りを待ちわびていました。

 

夫は生きている、死んでいるわけがない!

彼女にそんな希望を与えていたのは、

戦死者名簿にアンジェイの名前がなかなか載らなかったから。

 

一方で、

アンジェイの親友であり、

同じポーランド将校のイェジは、

死亡との報道が。

 

途中で、

もう死んでいるかもしれないと、

希望を失いかけている義母に、

アンナは憤慨します。

 

アンナ:

「まだ死んでいません!名前は載ってないの!」

 

義母:

「イェジ中尉と大将は載っている」

 

アンナ:

「それで?アンジェイは載ってない。それだけのこと!彼は生きているの感じるの!彼は私の一部!」

 

 

ところが、

頑なに夫を信じて待ち続けるアンナのもとへ、

死んだはずのイェジが訪ねて来ます。

 

息子アンジェイだけでなく、

大学教授の夫ヤンを失った義母に、

イェジはまさか、

息子までもう死んでいるとは言えない。

 

でも、

アンナには耐えきれず本当のことを言ってしまう。

 

アンジェイに自分の名前が入ったセーターを貸したので、

自分の名前が戦死者名簿に載ってしまった、

本当は死んだのは自分ではなくアンジェイだ、と。

 

これを聞いたアンナは、

部屋で待つ義母に、

 

「アンジェイは死んだ」

 

と一言放って立ち去ります。

 

このシーンは、

とてもいたたまれなかった。

 

イェジは死んだと報道されていたけれど、

アンジェイは報道されていない、

だから夫は生きているんだ!

と信じて待っていただけに、

 

そのイェジ本人から、

ことの真相が明かされてしまっては、

彼女も受け入れるしかありません。

 

でも、

もっと居た堪れなかったのは、

そのことを告げたイェジだと思います。

 

彼はアンナに夫の死を告げてから、

自分が乗ってきたジープも忘れて、

そのまま歩き出してしまうのですが、

その後ろ姿には、

自分だけ生き延びてしまった後悔や懺悔の念が、

にじみでているかのようでした。

 

彼は生き延びて、

ソ連の傀儡政権となった新ポーランド軍に従軍します。


大戦中、

ソ連軍の捕虜となり、

収容所に入れられた際、

「祖国を忘れず、生き延びて戦い続けよう!」

という大将の号令に賛同し、

皆で誓いあったのに、

 

いま自分は、

親友や部下を失ったばかりか、

祖国を牛耳るソ連軍の手先となって生きている…。


そんな彼に、

追い打ちをかけたのは、

大将夫人ルジャでした。

 

大将もカティンの森へ連行され、

ソ連軍によって虐殺されており、

彼女はその事実をドイツ軍から映像で見せられているわけで、

(※ドイツ軍は、彼女の証言を対ソ防衛のプロパガンダに利用しようとした)

 

その首謀者であるソ連の手先となっているイェジに対し、

彼女は詰め寄ります。

 

イェジ:

「共に死ぬべきだった」

 

大将夫人:

「あなたの義務はね、真実を証言すること」

 

イェジ:

「または、己の頭を撃つ…死者は蘇らない。生き続ける。赦す。これが務めと。生きなくては…」

 

大将夫人:

「あなたも連中と同じ。思いは違っても行動は同じ。思うだけでは何の意味もない」

 

この言葉が、

正直、彼を追い詰めたんだと思います。


実際、

このやりとりのあと、

イェジはバーで酔っぱらって暴言を吐き、

拳銃自殺してしまうのです。

 

「なぜか世界は扱い切れない。真犯人は皆目不明と、おぞましい噂が流れた。ドイツの犯行だ。41年に殺した。頭部に一発。ここだ!」

 

「真面目な話だ。皆知っているだろう。皆。お前も、お前も!」

 

(その場に居合わせた新生ポーランド兵たちに対し)

本当は、カティンの虐殺は、

ドイツ軍の仕業ではない、

ソ連がやったんだ。


おまえらみんな知ってるくせに、

なぜその事実を誰も言わない、

なぜ隠そうとする?

 

いや違う、

自分もそのひとりだ。

祖国のために尽くした同胞を惨殺した、

汚いソ連軍のひとりだ。。。

 

彼はずっとそう思いながら生きてきて、

ずっと悔やんでいたんだと思います。

 

私はこの映画で、

このイェジ役の俳優さん(アンジェイ・ヒラ)だけ、

唯一見たことがあるような顔だなぁと思ったんですが、

全然知らない人でした。。。

 

よくありがちな顔なのかも。


物語では、

このほかにも、

カティンの犠牲者となった家族が登場し、

いたるところでその余波を展開します。

 

ここでポイントなのは、

ソ連軍による「カティンの森」虐殺事件が、

もはやソ連の支配下にあるポーランド国内ですら、

タブーとなっていたこと。

 

あれはソ連の仕業であるということは、

絶対に口にしてはいけなかったということ。

それはソ連に楯突く行為であり、

ソ連を中傷することは、

反逆罪にあたる行為であったということ。


本作品では、

このカティンの悲劇と真実が第一の趣旨だとすると、


その真実がタブーとされ、

そのタブーを巡って、

さらにまた悲劇が続いていたことが第二の趣旨だと思います。


後者は、

カティンで父や兄や親戚を亡くした遺族たちが、

真実を明かそうと闘いますが、

彼らはみな非業の死を遂げることに…。


兄の死を風化させないために、

カティンの真実にこだわり続ける妹(アグニェシュカ)。

そして、その妹と対立する姉(イレナ)。

 

妹は純粋で直情的、

だからこそ真実を隠さず、

最後まで祖国とともに闘いたい。

 

姉はその逆。

現実を見なさい、

うまく生きなさいと妹を諭しますが、

妹は聴かない。

 

結局、

妹のほうは、

最後はNKVD(ソ連の内務人民委員部)に逮捕され、

地下室に連行されて殺されてしまいます。

 

このとき、

彼女はNKVDから悔い改めるよう指図されます。

 

NKVD:

「蜂起で誰と戦った?奇跡的に生還したのに。祖国に住みたくないのか?」

 

「生きるのが嫌か?」

 

それでも、

彼女が最期に言い放ったのはこの言葉。

 

「私はドイツと5年間戦った。教えて、私はどこの国にいるの?ここはポーランド?」

 

他の方のレビューにもありましたが、

この言葉こそ、

この映画のキーフレーズだと思います。

 

戦争でナチス・ドイツが敗退し、

ポーランドからも出て行った、

自分もワルシャワ蜂起に荷担してドイツ軍と闘ってきたけれど、

だからといって、

決してポーランドは解放なんてされてはいない、

いまだにポーランドは他国(ソ連)の支配下にある。

 

祖国だって?

違うでしょ?

 

教えて、私はどこの国にいるの?ここはポーランド

 

違うよね?

ここは、自分が生まれ育ったポーランドなんかじゃないよね?

いまは、ソ連なんでしょ?と。

 

ポーランドという国は、

結構悲惨な歴史をもつ国で、

 

そもそも第二次世界大戦は、

ナチス・ドイツがポーランドに侵攻したことで始まったのですが、

同盟を結んだイギリス・フランスからは傍観され、

その間に密約を結んでいたソ連が東側に侵攻、

西側をドイツ、東側をソ連に分割占領されてしまいます。

 

ポーランド侵攻 - Wikipediaによると、

ソ連は最初からポーランドを狙っていたようです。

 

国内で大粛清を推し進めたスターリンはかつてのポーランドソビエト戦争の敗北でポーランドへかねてから雪辱を果たす機会を狙っていた。

 

この映画の舞台になっていたクラクフこそ、

分割時代にソ連に占領された都市で、

多くの人々がシベリアや中央アジアに移住させられてしまいます。

 

その一端として、

ポーランド将校・兵士たちも連れ去られ、

射殺されてしまう。

これがカティンの森事件でした。

 

その数なんと2万人以上ということですから、

立派な大虐殺です。

 

※既出 ポーランド侵攻 - Wikipedia より

1939年から1941年にかけてのソ連によるポーランド占領でも、180万人ものポーランド市民が殺害されるか国外追放された。NKVDによって共産主義体制にとって危険分子であると判断された人々はすべて、ソビエト化教育を受けるか、シベリアなどに移住させられるか、労働収容所(グラーク)に収監されるか、または殺害の対象になった。(中略)カティンの森事件ポーランド軍将校が虐殺された事件の一つである。

 

その後、

この密約(独ソ不可侵条約)は、

ドイツがソ連支配圏に侵攻してきたことで破られ、

独ソ戦が始まります。

 

最初は緒戦でドイツが勝ち、

一時はクラクフも含め、

ポーランド全土がドイツの占領下に置かれてしまう。

 

ポーランド国民たちは、

英仏を後ろ盾にした亡命政府軍や、

ソ連の共産政権を後ろ盾にしたパルチザン(非正規軍)として蜂起し、

ドイツに対して抵抗を続けます。

 

本作で、

兄を追って殺されてしまう妹・アグニェシュカは、

この抵抗運動ワルシャワ蜂起)に参加していた一人として登場しています。

 

ワルシャワ蜂起とは、

首都ワルシャワで起きた、

これらの一種のレジスタンス(解放運動)で、

ソ連がこれを扇動したことは間違いないのですが、

 

蜂起の主体が上記でいう前者(亡命政府軍)にあたり、

彼らはもともと独ソ不可侵条約を拒否、

つまり、

ドイツだけでなくソ連に対しても反対していた輩です。

 

ソ連にとっては、

いわゆる反共分子(敵)であったために、

ソ連軍はこのワルシャワ蜂起に対して、

火だけつけておきながらあとは見放します。

 

結果として、

何十万というワルシャワ市民が命を落とし、

ドイツ軍に鎮圧されてワルシャワは廃墟と化します。

 

一時は全土がドイツの支配下に置かれたポーランドですが、

その後はソ連軍が次々と反撃に出て、

ついにドイツ軍をポーランドから追いやってしまう。

 

ソ連ワルシャワに進駐したのはその後で、

彼らは生き残ったレジスタンス幹部を、

助けるどころか逮捕していくのです。

 

ナチス同様、ソ連側も「反逆分子」に対して情け容赦しなかった。ソ連の支配に反抗するとその人物も含めて家族全員がNKVDに逮捕された。

 

ソ連の残虐行為は1944年にポーランド赤軍によって「解放」された後、再び始まった。戦争の間ロンドン亡命政府の指揮下で抵抗活動を続けてきた国内軍の兵士に対する迫害や、国内軍将校の処刑がソ連によって行われた。

 

物語の後半は、

このソ連による恐怖支配を描いており、

先の妹だったり、

アンナの甥(タデウシュ)なんかは、

NKDによって反共分子として殺されていくわけです。

 

ポーランドのもう一つの支配。

戻らない祖国。

終わらない戦争。

 

もしこの映画に、

サブタイトルをつけるとなると、

こんな感じでしょうかね。

 

先に、

ポーランドというのは結構悲惨」と述べたのは、

 

自分たちの国を、

ドイツやソ連によって勝手に分割されてしまうのも悲惨だし、

 

戦争が終わったかと思いきや、

ソ連によって強制的にその支配下におかれ、

恐怖政治が続いていたというのも悲惨だったからです。

 

私は共産主義それ自体が悪いとかどうとかは、

知識がないので何とも言えないのですが、

言論に自由がない世界は怖いと思います。

 

分割占領時代あるいは独ソ戦のときに、

ソ連側についたポーランド人は重宝され、

それ以外は虐げられていく。

 

この作品でも、

アンナを陰で助けたポポフ大尉や、

もともと大将夫人の家で働いていた家政婦が、

前者(=ソ連側についたポーランド人)として描かれており、

彼らは移住させられなかったり、

逆に重職のポジションを与えられたり、

何かと厚遇を受けました。

 

ポポフ大尉については、

ポーランド人だったのかどうかは定かではありません…。

 

自殺してしまったけれど、

イェジもまた親ソ連派将校として、

それなりの地位を与えられて生き延びていたわけで。


戦争で、

虐げられた人と生き延びた人。

生き延びるために、魂を売った人と売るのをやめた人。

生き延びること自体を拒否した人。


この映画では、

様々な犠牲者と彼らの人生が描かれ、

それぞれが交錯していきます。


どれをとっても不幸だと思いますが、

現実のポーランドはこうだったのかと思うと、

やりきれない気持ちになりました。


話は変わりますが、

国家的タブーって、

本当はたくさんあるんだろうなー、

と思います。


戦争中は特に。


ベトナム戦争でアメリカが枯葉剤を使っていたとか、

イラク戦争で実はアメリカがこんなひどいことをしてたとか、

日本の731部隊がどうだったとか。


戦争に限らなくても、

毛沢東全盛期の中国でも虐殺的な行為はあったでしょうし、

いまだって中国や北朝鮮はタブー?だらけかと。


先日よんだ『黒いスイス』では、

平和・中立を標榜する、

あのスイスが、

戦後、

実は核兵器の研究開発を進めていて、

建物は残して中の人は殺せる中性子爆弾を、

すでに開発段階まで辿りついていたことが書かれていました。


これだって、

相当なタブーだったと思います。


カティンの森事件は、

まさにポーランド旧ソ連の国家的タブーでした。


暗くて重くて希望もクソもない作品ですが、

それでも希望を!とか下手に持たせる感じじゃないところが、

私は逆によかったと思っています。


希望なんてねーよ!


それが事実だと思いました。


  

■まとめ:

・第二次大戦中と戦後のポーランドがいかに悲劇をこうむっていたかを知れる作品。

ポーランド現代史について、多少の知識があると理解しやすいが、構成的にも行間を読んでつなぎあわせなければいけない部分もあるので、ド素人だとストーリーの理解には難航する(頭が疲れる)。

暗くて重くて希望もクソもない作品だか、逆に希望を!とか下手に持たせる感じじゃないところが、現実味を帯びていてよかった。

 

■カテゴリー:

戦争映画

 

■評価:

★★★☆☆

 

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▽原作はこちら

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