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外天楼  ★★★☆☆

石黒正数さんのマンガ

『外天楼(げてんろう)』

を読み終えました。

 

評価は、星3つです。

 

うーん、おもしろかったんですが、

ちょっと期待し過ぎたかもしれません。

 

いっそほかの人のレビューなんて見ずに読んでいたら、

もっと点数高かったかも?

 

もうね、最高なんてもんじゃないです。
一巻完結の漫画でこれ以上満足感を得れる作品はないとまで言い切れます。

 

残念ながら、

私はここまでの境地に至っていないので、

星3つにおさまってしまったのですが、

 

もう何度か読んだら、

実は星が増えちゃうかもしれません。(ニヤリ)

 

▽内容:

外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……? 謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜庭冴子は自分勝手な捜査を開始する。“迷”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!? 奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!

 

若干、期待はずれだったとは言え、

いや、たしかにすごいんです、

このマンガ。

 

一話一話がショートストーリーで独立しているのかと思いきや、

実はすべてつながっているというオチ。

 

そのショートストーリーのなかにも、

思わず笑ってしまうような、

しょーもないギャグや

しょーもない下ネタ、

しょーもない推理が散りばめられており、

本当に”しょーもない”ミステリーっていう感じなんですが、

 

それなのに、

最後はなぜか考えさせられてしまう。

 

科学ってなんだ?

生命ってなんだ?

家族ってなんだ?

…という感じに。

 

私がこのマンガを読むときに、

参考にさせていただいた先のレビューにも、

こんなふうに書いてありました。

 

すごいのは、一見した程度ではそれぞれの話が関係ないように見えること。
そして物語の前半部分はゆるゆるな雰囲気で、基本的にくだらないんですよ。
しかし、そのしょうもない話の中にも巧みな伏線がいくつも隠されているのです。

 

第一章は、

「エロ・リサイクル」という話で始まります。

 

知能犯の芹沢と、

実行犯のアリオ、

そして脇役のタイチといった少年3人は、

 

 

書店でエロ本の万引きを計画しましたが、

失敗してしまいます。

 

その後、

資源ごみの中にエロ本があるという噂をかぎつけ、

晴れてゴミ捨て場からエロ本をゲットするのですが、

 

ところどころ切り抜かれていたり、

やぶれていたり、

という法則性の有無を発見した3人は、

 

もっともな推理を並べながら、

それが誰かのおさがりであることに気づきます。

 

ここでアリオの姉・キリエが登場。

 

 

姉のアドバイスも交わって、

アリオたちのエロ本を探し当てた行動は、

「エロ・リサイクル」どころか、

「エロ・カースト」だったと判明。

 

つまり、

アリオたち以外にも別のグループがエロを分け合っていて、

そのひとりが捨てた一部のエロ本を、

彼らは三人で分けていたということ。

一人あたりのエロの量は減るばかり。

 

アリオは愕然とします。

 

姉は、

そんなアリオに対して、

さらに追い打ちをかけます。

 

(そのエロ・カーストのなかでも)

たぶん、あんたが最下級よ。

 

資源ゴミの回収…明日の朝だから

 

なんじゃこのオチは。笑

なんじゃこの話は。笑

 

万引きするときの書店の棚を、

悪魔の棚・天使の棚・女神の棚

と名付けているところもバカだし、

 

その万引きに失敗したエロ本が、

『熟女ハードコア GONG』

っていう雑誌?だったのもウケるし、

 

どの雑誌からも必ず切り取られている写真のモデルが、

”片桐ルンバ”っていうのも笑える。

なんだよ、片桐ルンバって。笑

 

そうやって、

ちょいちょい笑いのツボを刺激してくるのです。

 

かと思えば、

このときから物語の「つながり」は、

すでにはじまっていて、

 

万引き少年の知能犯だった芹沢は、

のちに芹沢博士として、

第3話の「罪悪」や第8話「アリオ」、

最終章「キリエ」にも登場しますし、

 

タイチもまた、

俳優として第2話の「宇宙刑事vsディテクト」に登場したり、

第7話「鰐沼家の一族」にも出てきます。

 

アリオの姉・キリエが、

なぜかアイスを食べながら登場したり、

アリオと姉が住む部屋が「B312号室」だったり。

 

そう、

あとになって、

そのアイスが何だったのかとか、

B312号室がどこにあったのかとか、

全部つながってくるのです。

 

ロボットがロボットを殺める話(第3話「罪悪」)でも、

アイスを食べるキリエが出てきます。

 

アリオやキリエが住む部屋も、

いろんな怪事件が起こる部屋も、

それはすべて「外天楼(げてんろう)」にあったわけです。

 

…と、

最初のほうの数話を例に取り上げて書きましたが、

こんな感じで1冊のストーリーが出来上がっています。

 

小説やマンガを読んでいると、

この人の頭の中ってどうなってるんだ?

と思う作家や漫画家がたまーにいます。

奇才とか天才とか言われるような人。

 

私の中では、

村上春樹さんなんてその一人ですし、

今回の石黒正数さんもこれに該当します。

 

どうやったら、

こういうストーリーが思い浮かぶのか?

 

その独特な世界観もそうだし、

話のまとめかた(並べ方)というか、

構成力もすごい。

 

これはもう才能なんじゃないかと思います。

 

この構成力を、

伏線によるトリックとして評価する方が多いらしいのですが、

 

一方で、

「外天楼」は伏線回収が上手い漫画では無いと思う 

と言っている方なんかもいて、

これはこれで、

ナルホドとうなずけました。

 

とはいえ、

それが最初から意図して敷かれた伏線なのか、

そうではないのかは、

正直どっちでもよくて、

 

これらの違いは、

著者の構成力をAととるかBととるかといった違いでしかなく、

やっぱり話のまとめかたがすごいというのが、

読者が共通してもっている印象かと思いました。

 

A.

あらかじめゴールやプロセスが設計されたうえで、

綿密かつ巧妙に、

そのプロセスのなかに「伏線」を散りばめている

と評価している

 

B.

そこまで最初から綿密には計算していなかったんだけれども、

一話一話を制作していく途中で、

物語全体の整合性(つじつま)が合うよう巧妙に構成されている

と評価している

 

「外天楼」は伏線回収が巧みなのでは無くて、
何でもない事を伏線に変えて辻褄を合わせる事が上手いのだと思います!

それ町」も「外天楼」も何度読み返しても飽きないと言われています。
読み返すたびに発見があるから。
それもそのはずで、そうなるように計算されているからなのだと思うのです。
後から後から”何でも無い点”を”伏線”に昇華させているから、読むたびに新たな発見がある。
辻褄合わせの天才が描いている極上のエンターティメント作品。
それが石黒先生の漫画なのだと思っています。

 

みなさんよく考察されていますし、

黒作品をよく読んでいます。

 

私なんかはまだまだ序の口で、

実はこんなレビューを書くのもおこがましいくらいで、

全然著者のすごさをわかっていないほうだと思っています。

 

↓このレビューなんて、すごい。

「外天楼」凄い漫画すぎて鳥肌立った件:ヤマカム

 

私も是非、

別の作品を読んでみたいと思いました。

 

私が深いなぁと思ったシーンは、

ここ。

 

ロボット(P99S)が長年愛用してきたロボット(S12)を壊したときに、

芹沢たち研究者は、

P99Sが破壊ののちに「罪悪感」の思考回路をもっていたことに気づいて、

こんな会話をやり取りします。

 

”上手くいかないもんだな…

 行動の前に(罪悪感が)起動してくれないと…"

 

"優先順位の問題じゃないでしょう。

 そもそもやってもいない行動に罪の意識を感じる事などロボットにできますかね?

 欲や妬みのような負の感情は問題なく機能しているというのに…"

 

また、

芹沢がアリオと再会し、

自身がロボット工学でやってきたこととその限界について、

打ち明けるシーンも深かった。

 

(いくら思考回路という感情らしきものを作り出しても)

(ロボットは)生まれながらに矛盾を抱え、答えに到達できずにフリーズしてしまっていた…

 

例えば…

人は異性と交わって生まれる

そのことは神聖視するのに

異性への興味や性行為そのものは恥じ 隠し 軽蔑するよな

様々な矛盾を時と場合によって出したり引っ込めたりしながら

厚かましく生きていられるのは人間だからだ

ロボットにはそれができなかった

 

私たち人間は、

「空気を読んで」→「TPOをわきまえて」→「言動をかえる」

という、

こうした一連の行動を、

柔軟だとか臨機応変といった綺麗な言葉で形容しているわけです。

 

これも人間のもつ生存本能の1つと言ってしまえば、

それで終わりかもしれませんが、

 

ある意味、

ズルいというか、

たしかに厚かましいよなーと思いました。

 

いやー深かった。

 

このマンガ、

何度か読み返すとよいらしく、

読むたびに新たな発見があるんだとか。

 

なるほど。

 

あと2回くらい読んだら、

またこのレビューを更新しようと思います。笑

 

 

■まとめ:

・初!石黒正数マンガ。期待し過ぎたせいか、そこまで感動はしなかった。とはいえ、著者の想像力・構成力は確かにスゴイ。いわゆる奇才・天才かもしれない。

・ところどころで笑いのツボが刺激される反面、現代科学主義の行きつく先みたいな考えさせられるところもあって、内容的には深かった。

・何度か読むと新たな発見もあるらしいので、あと数回読んでみたいと思う。

 

■カテゴリー:

マンガ

 

■評価:

★★★☆☆

 

 

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外天楼 (KCデラックス)

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