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うさぎとマツコの往復書簡  ★★★★☆

一昨日、読み終えました。

 

評価は、星4つです。

 

この本は、

中村うさぎさんとマツコ・デラックスが、

雑誌「サンデー毎日」で展開する紙面上の対談を書籍化したものです。

 

▽内容:

地獄? 結構じゃないのさ。ほら閻魔、かかってこいや!」

浪費、整形etc……女の業をさすらう女王様・中村うさぎと、規格外の存在感で各界を震撼させる「女装渡世」マツコ・デラックス。みずからの魂を売り物にする2人が繰り広げる、天衣無縫のガチバトル、ついに書籍化! 特別対談「性と差別」ほかも収録。

 

この対談は、

2009年6月28日号の「サンデー毎日」から連載がスタートし、

一時期、中村うさぎさんの体調不良で連載がストップしていたようですが、

2013年11月からまた連載が再開しているとか。

 

入院中の中村うさぎさん 「サンデー毎日」の連載再開 : J-CASTニュース

 

今年に入って、また3月に再入院していたようですが、

今月の頭には退院された模様です。

 

中村うさぎさん、退院を報告……「自宅は天国じゃー!」 | RBB TODAY

 

うさぎさんを苦しめているこの病は、

原因不明の難病らしく、

一部では「ギラン・バレー症候群」とか「スティップパーソン症候群」とか報道されており、

現段階では後者の筋が強いようですが、

厳密にはまだ明らかになっていない?とか。

 

中村うさぎさんにも疑い…難病のスティッフパーソン症候群とは - NAVER まとめ

 

私は中村うさぎさんについて、

恥ずかしながらお名前しか聞いたことがなく、

実際どのようなことをされてきた方なのか、

お仕事は何なのか、

おいくつなのか、

どういった生い立ちなのか、

…などなど、全く無知でしたが、

この本を読んで少し興味が湧きました。

 

もちろん、

難病で報道されたのをきっかけに、

この人、変わってるなー!

と、少し惹かれたからなんですが、

 

あの佐藤優さんと共著で、

聖書についての本を出されていたりすると、

識者で頭のキレる人

というイメージもありました。

 

※私はこの本をまだ読んだことがありませんが、是非読みたいと思っています。

 

 ▽聖書を語る

聖書を語る (文春文庫)

聖書を語る (文春文庫)

 

▽聖書を読む 

聖書を読む

聖書を読む

 

 …で、

実際に本を読んでみてですが、

やっぱり、この人、アタマいいな!

と思いました。笑

 

マツコ・デラックスもそうですが、

中村うさぎさんも勉強家だと思います。

教養がある。

 

その教養は、

たとえばロンブーの淳とか加藤浩二のように、

朝の情報番組やバラエティ番組などで、

とりあえずしゃべることができるくらい、

世の中の時事問題を知っているという程度のものではなく、

もっと深いし、幅広い。

 

(ある事象に対して)

なぜそんなことが起こったのか、

そもそも根底にあるものは何なのか、

歴史を紐解いたらどうなっているのか、

類似したもの・対極にある考えはどういったものがあるのか、

それは学術的にはどのように解釈されているのか、

…など、

 

眉唾で得た知識とかではなく、

そもそもベースとして膨大な知識・教養をもっていて、

そのうえで自分の考えを提示しているので、

私なんかの凡人からすると、

かなわないなと思ってしまいます。

 

そして、

その言動がまたオリジナリティに溢れている。

 

整形しまくったり、

買い物中毒になったり、

デリヘルをやってみたり、

ホストに貢ぎこんだり、

ゲイの男性と結婚したり。

 

でも、

彼女はバカではないから、

そんな自分が周りからどう見られているかも知っているし、

政治や宗教、思想や文化についてもよく勉強していて、

自分なりの意見をもっている。

 

まわりからは変人だと思われるだろうな

と思いつつも、

素敵な人だなぁ

と思いました。

 

この往復書簡は、

 

前半が、

いまの政治(家)に見る性の問題が中心で、

誌面上のやりとりとは別に、

実際におこなわれた対談(「政と性」)も文字にまとめられています。

 

後半は、

自分とは?自分探しとは?他者とは?人生とは?

といった哲学的な内容になっていきます。

 

このなかで中村うさぎさんが、

 

昔は、

やりたいことをやって地獄も経験しそれゆえの天国もみた、

いまは、

生きることが楽しくも苦しくもない砂漠のようなものだ、

として

 

「人生は、地獄か砂漠かの二択である」

と言っていたのが印象的でした。

 

彼女のような波乱万丈で自由奔放な生き方からすれば、

私の人生なんて、

ざっぱんざっぱんと音だけデカい小波のようなものだと思いますが、

そんな私でも「わかるわかる」と思ったからです。

 

お笑いの板尾創路さんがお子さんが亡くなられたあとに、

「いいことは起こらないでいいから、悪いことも起きないで欲しい」

とおっしゃったそうですが、

 

うさぎさんがいう「砂漠」とは、まさにこの状態で、

「いいことも悪いことも起こらなない」けれど「無味乾燥」とした世界、

彼女がいう「地獄」とは、

「悪いことも起こる」けれど「だからこそ、いいこともある」と感じられる世界、

なのかと思います。

 

いいと感じるには地獄を見なければならず、

地獄がみたくなければメリハリのない無味乾燥した世界を生き続けなければいけないわけで。

 

うさぎさん同様に、

私はどっちもイヤだなと思うときがあるのですが、

無味乾燥とした世界がいいと思えるとき(人)は、

仏教でいうところの悟りの境地に近い気がします。

そうなったほうが人生は楽だと思う。

 

話は戻りまして、

前半の対談「政と性」のなかで、

二人が政治に対するメディアの責任(もっと言えばそれを信じる国民の責任)を追求する部分があるのですが、

そこには少しハッとさせられました。

 

うさぎ:

(消費税に関して言えば)メディアが「争点は消費税」とか言い出してさ。マスコミが決めることじゃないっつーの。(中略)争点なんて個人が自分の中に持ってるものよ。(郵政のときは)「今度の選挙は郵政が争点」とか言ってさ、それでもう郵政の話しかしないいたいな。メディアがアンポンタンだと思うのよ。

 

マツコ:

アタシ、もっとみんなメディアを疑うべきだと思う。メディアは作為的にショーアップしたものを表に出しているってことを、自覚した方がいい。(中略)受け取る側が、まずメディアに対して、反旗を翻さなきゃいけないのよ。

 

私たちは日々何気なく見聞きしている新聞やテレビのニュースに対して、

それを鵜呑みにして自分の価値判断を加えることが多いと思いますが、

 

ふうん、そんなこともあるのか…

程度にとどめておいて、

本当にそのことが自分に必要な「争点」なのかどうか

(実は案外どうでもいい「争点」なんじゃないか?)

そのうえで、いいとか悪いとか白黒つける必要があるのかどうか

(どうでもよかったら、白黒つける必要もないんじゃないか?)

自分に必要な「争点」ならばもう少しいろんな角度で見てみたらどうなるのか

(そのニュースが100%ではいはず?)

 

…といった、

いったん冷静に受け止めて

流したり・疑ってみたり・より情報を集めてみたり

という作業をしてよいのかもしれません。

 

世間でいわれている「当たり前」のことや、

知らぬ間に自分もそれに流されていることに、

もっと敏感になってみてもいいのかもしれません。

 

対談のなかの、

このやりとりも考えさせられました。

 

マツコ:

日本って戦後復興から始まって、経済発展が国を豊かにするって信じて突っ走ってきた。でも、そろそろ人間の一生で言えば年金生活の時期に入っててさ。そうなると外食を控えるとか、つつましくするじゃない。国も同じことをしなきゃいけないんだけど、それだけだと存在感が薄くなるから、その代り「ここの分野は強くしよう」と考えていくしかない。けれど政治家の多くは、まだ経済至上主義という夢の中にいると思うのよ。

 

うさぎ:

うちの親もそうだけど、成長を夢見るというのが骨身に沁みてる。実際に成長してきたわけだし。だから、急に価値観を変えろというのも無理な話だとは思うんだけどさ。

 

いま私は、

小池龍之介さんの

『平常心のレッスン』

を読んでいますが、

 

まさにこの

「(経済的に)成長するのが当たり前」という考え方は、

この本に出てくる

「カルマ=過去の経験にとらわれること」であり、

今と過去を切り離せない状態にいるのかと思います。

 

気がつけば私自身も、

仕事で・プライベートで、

何か成長しなくてはいけないと常に焦っていることがあります。

 

過去に成果を出してきた自負があるために、

今、何も成果を出していなかったりすると、

自分は成長していないと感じたり、

 

まわりが頑張っているのに、

自分が頑張っていなかったりすると、

自分だけが成長していない気になる。

 

ただ、よく考えてみると、

このときの「成果」や「成長」を定義するのは、

 

たとえば

お金はたくさん稼いだほうがいい、

どんなにイヤなことにも耐えることが美徳だ、

結婚して子供を育てて一人前、

というような、

いわゆる「世間の常識」であって自分ではないのです。

 

自分にとって何が「成長」なのか?

どうしてそう思うのか?

それは本当に必要な「成果」なのか?

 

といったことを、

メディアから得る情報と一緒で、

いつも少し距離をおいて考えてみる必要がありそうです。

 

後半にも、

リアル形式の対談が盛り込まれています。

テーマは「性と差別」です。

 

マツコいわく、

ゲイは、自分がゲイを意識した瞬間(=自らを差別した瞬間)、

危機感をおぼえ、

コミュニティでおもしろい存在になろうとして弁が立つようになるそうです。

 

これを

オカマの生存本能

と説明しているのは興味深かったです。

 

このことはオカマだけではなく、

「おもしろい存在」という立ち位置をとってきたことがある人ならば、

たぶん共感できるポイントじゃないかと思っていて、

そこには何かしらのコンプレックスがある(あった)のかもしれません。

 

あと、

うさぎさんの、

差別が文化を育んでいく

という視点も面白かった。

 

うさぎ:

「ゲイだ」「オカマだ」という差別はよくないけど、その差別と闘った原動力がゲイ文化を生んだと思う。今は普通に会社や学校でカミングアウトする人が増えて、周囲も受け入れて理想に近づいてはいるけど、カルチャーは衰退した。コンプレックスとか被害者意識ゆえに結束したパワーが毒々しい花を咲かせるっていうか、文化ってそういうものだと思う。「みんな違っていていい」というのは社会としては理想でも、文化としては沈んでいくんだろうなと思わざるを得ない。

 

抑圧された環境が文化を育むというのは、

あながち間違ってはいないと思います。

 

アイヌ文化」「ゲイカルチャー」「オタク文化」…etc。

 

もし、アイヌの存在が空気みたいだったら、

もし、大昔からゲイの性愛が普通にあったら、

もし、いつの時代もオタクがいるのが当たり前だったら、

彼らの文化なんてどうでもよかったはずですし、

世の中にフィーチャーされなかったはず。

 

一般的で世俗的な意味をもつ「大衆文化」も、

一部の高貴な「ハイカルチャー」の対極で語られる「やすっぽい文化」として扱われていたり、

逆に「マイナーなもの」の対角線上にある「普通のもの」として位置づけられることもあるわけで、

そこには何かしらの差別意識が働いているはずです。

 

政治や政策の場でつかわれる「多文化主義」という言葉も、

異なる集団がもつ様々な文化を認め「対等に扱う」

という考え方ですから、

そこには差別の概念が多かれ少なかれ含まれているのかと思います。

 

言われてみれば、

差別と文化は密接な関わりがあるように思いました。

 

文化が生まれる背景に、

ネガティブかポジティブかは別として、

そもそも「違いを認める」という要素が絶対的にあるわけですが、

「ネガティブなところから生まれる文化」=「差別が育む文化」は、

もう少し深堀してそのルーツを知りたいところです。

 

マツコと中村うさぎ

二人とも教養があって勉強家だということはよくわかったのですが、

同時に

両氏がここまで絆の強いソウルメイトだとは思いませんでした。

 

早く次が読みたいです。

 

以下は、私が印象に残った両氏の言葉の備忘録です。

 

マツコの名言

・(人間は下賎な生き物だから)何万人、何億人から賞賛されることで満たされるのなら、マイケル・ジャクソンは死なずに済んだのかもしれないし、たったひとりからとてつもない深い愛情を受ければおさまるのなら、人はこんなにも欲にまみれて生きない

 

・(政治の世界こそ男尊女卑が根強くあると思うが)アタシは、何もかもが平等であることが正義だなんてちっとも思ってやしないの。男女雇用機会均等法なんて、ただ男のルールに女を合わせただけで、むしろ、いっそう女が苦しい場面に立たされていることも多いわ。

 

うさぎの名言

・(日本のフェミニズム運動が当の女性たちから支持されないのは)フェミニズムの運動家たちって、愚かな女たちを啓蒙してやろう的な意識がチラ見えして、なーんかちょっと「上から目線」なの。「等身大の女」って感じがしないのよ。これじゃ、どんなにいい事言ってても伝わらない。女たちのハートに訴えようと思ったら、「啓蒙」とか「教育」なんかじゃなく、「共感」を獲得しなきゃダメ

 

・(オカマは男に対しても女に対しても「あんたたち、全然ダメよ!」っていうツッコミ芸が許されているけれども)これは、私が常々言ってる「オカマの治外法権的特権」ってヤツで、たとえば私が女に対して「だからバカな女って嫌いよ!」みたいな事を言ったら「おまえ、何様?女が女をバカにするって、反則じゃない?」って批判が噴出するけど、同じ言葉をオカマが言うと世間は笑って許してくれる。

 

・それにしても、人間って何故、「ゴールがある」と思ってしまうのかしらねぇ。悪足掻きの現在を積み重ねた先に、すべての苦労が報われるような輝かしいゴールがあると信じきれば、そりゃあ生きる支えにもなるってもんだけどさ、そんなゴール、誰も証明してないのよ。そんなの、頑張って宝くじ買い続ければいつかは当たるって信念と同じくらいアテにならないわ。この根拠なき希望こそ、人間の一番の煩悩かもしれないわね。

 

・天国って、地獄と対極の場所にあると思ってたけど、違ったわ。天国は地獄の真ん中にあったのよ!(中略)天国を見たければ、人類よ、自ら地獄に飛び込みなさい。愛を知りたければ、憎しみを知りなさい。救われたければ、罪を犯しなさい。神に会いたければ、悪魔と付き合いなさい。崇高なる瞬間は、汚泥の中にこそある。

 

■まとめ:

中村うさぎマツコ・デラックスの教養の深さ、独創的な考えがわかる一冊

・両氏の「ソウルメイト」たる、絆の強さを垣間見ることができる

・政治や性における差別の在り方から、自分とは?他者とは?人生とは?という哲学的な内容をも対筆。奥が深すぎて正直、(私の頭では)何を言っているかわからないところもあった。

 

■カテゴリ:

自己啓発

 

■評価:

★★★★☆

 

▽ペーパー本は、こちら

うさぎとマツコの往復書簡

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