「のび太」という生き方 ★★☆☆☆

何を隠そう、

私は、あまり自己啓発的な本が得意ではありません。

 

「何が苦手なのか?」と聞かれると、

自分でもよくわからないのですが、

 

その手の本ばかり書いている人や、

その類の本を読んでいる人をみかけると、

ちょっと気持ち悪いなぁ…と思ってしまうことがあります。

 

嫌悪感というより、

一種の軽蔑に近いかもしれません。

 

書き手に対しては、

ご自身の成功体験が、

必ずしも他人にそのままスライドできるわけがないのに、

こうすべき・ああすべきと偉そうに語り、

「俺、いま、いいこと言ってるだろ?」

…とでも言わんばかりに、

御託を並べられると、

まるでオナニーを見せられているような気持ち悪さを感じることがありますし、

 

読み手に対しては、

自分の頭で考えて行動することができず、

ただひたすら、啓発本(=他人)に頼り、

しかもそんな自分に酔いしれているような気がして、

カッコ悪いヤツだなぁと思うことがあります。

 

もちろん、

すべての啓発本がそうだとは思わないのですが、

やたらポジティブ発言しかしない本とか人は、

苦手だったりします。

 

きっと、

自分がネガティブだからだと思います。

 

こんな私も、

啓発本に興味が湧いたり、

「どれどれ」と思って

手にとることがあるのですが、

 

そういうときは、だいたい、

 

自分が少しメンタル的に弱くなっているか、

 

書評や帯などをみて、

「へぇ、そんな考え方あるんだ」

「この人の生きザマが知りたい」

とか、

単純にそう思っているかのどちらかです。

 

今回、この

のび太」という生き方

を手にとったのも、

タイミングとしては、

自身のメンタル要素と人間的な興味の両面からなのですが、

 

結論から先にいうと、

前向きな応援メッセージを欲している人

には、

この本はおススメです。

 

あと、

のび太」に人間的に興味がある人、

のび太」の本質を解明したい人、

愛すべきキャラクタ―の所以を知りたい人、

…など、

 

人間行動学的・心理学的な観点から

のび太」という一個人へアプローチを試みたい人には、

面白いとおもいます。

 

私個人としては、

のび太」というキャラクターの人間分析には単純に興味はありましたが、

メンタル的には、

前向きな応援メッセージが欲しいわけではなかったので、

結果としては星★2つになりました。

 

精神的にタフでない(ときの)私としては、

のび太」みたいにダメ人間でいいじゃない、

むしろダメ人間のほうがうまく人生歩けるよ、

こんなにダメでものび太はうまくやってるよ、

だからアナタもダメでいいんだよ、

…的なアドバイスを期待していたのですが、

 

蓋をあけたら全然違いました(笑)。

 

 

何が違うかというと、

 

のび太は、ダメ人間じゃない

 

のです。

 

のび太には、夢があるし、

のび太は、決してめげないし、

のび太は、優しくて偏見がないし、

のび太は、意外と行動力がある。

 

筆者は、

のび太なり」の努力で十分

と言いますが、

 

筆者によって精緻に分析された「のび太」は、

実は、その内面は鉄人クラスです。

ひょっとしたら、聖人かもしれない。

 

平たく言うと、

目に見える「のび太」は全然ダメだけど、

目に見えない「のび太」の精神は全然ダメじゃない。

 

表面上の「私」はダメじゃないかもしれないけど、

内面的な「私」の精神はわりとダメなのに、

そんな私に、鉄人クラスの精神力を説かれても、

 

そんなに毎回、ポジティブになれないよ!

いま欲しいのは、

頑張れとか諦めるなとか、

そんな前向きな言葉じゃなくて、

もっと違う言葉なんだよ!

 

…と言いたくなります。

 

なので、

 

ダメ人間でも大丈夫!

まあ、ゆっくりいこうぜ~

 

…的な、”ゆる~い”ヒント(癒し?)を求めている方には、

 

この本はおススメできません。

 

むしろ、

のび太」って実はスゴくないか?!

のび太」ですらこんなにスゴイのに、

自分は全然ダメじゃん…ううう…

と、苦しくなる危険性すらあります(笑)。

 

とはいえ、

この著者の横山泰行先生は、

富山大学教育学部で「生涯スポーツ」を専門として研究する一方で、

自ら「ドラえもんアナリスト」と称するほど

ドラえもんをこよなく愛するドラえもんマニアです。

 

6年間にわたり、年平均2000時間継続して「ドラえもん」を調べていくなかで、

全作品を50回以上読み、「吹き出し」「ひみつ道具」「登場人物」「事項索引」といったデーターベースを作成し、それらにもとづいて、のび太の言動を詳細に分析してまとめました。

 

これだけの分析に裏付けられた、

のび太」という人間の実態を解明していくサマは、

実にあっぱれです。

 

実は、のび太はすごいヤツだった!

 

これがわかったという点においては、

のび太」という一個人へのアプローチは、

わたし的には満たされました。

 

のび太」だけでなく「ドラえもん」をはじめ、

その他の登場人物に対しても、

鋭い観察力・相関図が描かれています。

 

読んだことはありませんが、

『磯野家の謎』(著・東京サザエさん学会)

も、こんな感じなのでしょうか。

 

ただ、自己啓発(本)という意味では、

夢をあきらめないとか、一歩一歩コツコツととか、

誰もが言っている当たり前のことを言っているだけで、

のび太」だからこそ、「ドラえもん」だからこそ、

の新鮮さはなかったです。

 

発売当初、何かと話題になった本らしいのですが、 

 

無理しなくても、ダメでも、大丈夫。

どんな人でも夢が叶う「のび太流」魔法の法則

 

というセールス文句のわりには、

(言い方は悪いですが)

のび太」という看板を借りただけの、

ごく一般的な人生教本かな、という感じがしました。

 

あと、この本の中では、

漫画のストーリーを、いちいち例としてとりあげているのですが、

筆者の言いたいことと、とりあげているストーリーの一例が、

ちょっと無理やりすぎて、

うまくリンクしていないな、とすら思いました。

 

■まとめ:

・「のび太」という人間の実態については、よく分析されている

・だからといって、そこから自己啓発本としての目新しい視点はない

・筆者の説く人生論と、漫画のストーリーの引用に、「無理やり感」すら感じる

 

■カテゴリ:

自己啓発

 

■評価:

★★☆☆☆

 

▽ペーパー本は、こちら

「のび太」という生きかた―頑張らない。無理しない。

「のび太」という生きかた―頑張らない。無理しない。

 

 

 ▽Kindle本は、こちら 

「のび太」という生きかた

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