マンホール  ★★★★☆

筒井哲也さんのマンガ

マンホール

を読み終えました。

 

評価は、星4つです。

 

ちょっと前まではアフリカでのエボラ熱がヤバいと言われ、

最近ではもっぱら国内でのデング熱の感染が話題にのぼり、

ウィルスの恐怖はもはや対岸の火事ではない今日この頃、

その脅威はフィクションの世界を越え、

現実のものとなってきています。

 

そんなときにこのマンガを読むと、

余計に怖くなるかも。(笑)

 

デング熱も蚊が媒介することで人間に感染しますが、

蚊によってもたらされる危険なウィルスは、

実はもっといろいろあるわけで。

 

マラリアフィラリア、ナイル熱、日本脳炎…etc.

 

 本書は、

「シンブンシ」でおなじみ、

予告犯』の作者・筒井哲也さんが、

いまから8~9年前に描いている作品で、

内容はフィラリアパンデミックを扱っています。

 

具体的な内容についてはあとで言及するとして、 

この漫画家、すごい。

 

コミック界の山崎豊子か?

っていうくらい、

よく調べているし勉強していると思います。

 

ストーリーの構成も上手だし、

絵もうまいと思います。

 

この作品は、

長崎県で有害図書類に指定されたくらい、

たしかに過激な表現が多く、

気持ち悪いところもあるのですが、

 

最後まで目が離せないという引き込まれ感は、

『予告犯』に似たようなものがありました。

 

そして、

これも『予告犯』と同じですが、

人間の欲望とか犯罪対策とか精神病治療とか、

なにげに考えさせられるところがあります。

 

一見、

バイオ・ホラーサスペンス的な作品ですが、

中身は結構、

社会派サスペンスだったりもして。

 

単に刺激だけ強い作品とかではないので、

この作者、

やっぱり頭いいなーと思いました。

 

逆に、

究極にクレイジー(mad?)なホラーサスペンスを求めている方には、

逆に物足りないかもしれませんが。

 

絵のうまさ、

ストーリーの構成力と引っ込まれ感アリ、

読了後にいろいろ考えさせられる感アリで、

若干気持ち悪かったけど、

面白かったです!

 

▽内容:

ヤングガンガン』誌上にて2004年創刊号から2006年10号まで連載された筒井哲也の漫画。単行本全3巻、廉価版全2巻。寄生虫を利用した犯罪事件と、それを追う警察の攻防を描いた、バイオ・ホラー作品。

 

『予告犯』が、

ネットを駆使した社会的制裁(犯罪)

というテーマだったのに対し、

 

『マンホール』は、

バイオテロ寄生虫)を駆使した社会的制裁(犯罪)

というテーマで描かれています。

 

犯罪なんだけれども、

実行犯からすると、

社会の悪者に対する制裁でもある。

 

どちらも、

まんざら犯人=悪者と100%決めつけられないところがあります。

 

犯人が犯罪をおかすには、

実はそれなりの理由がある。

 

筒井さんの作品は、

「それなりの理由」を追いかけていくので、

犯人=完全に悪者と決めつけられない構図になっています。

(といっても、まだ2作品しか読んでいませんが…)

 

とはいえ、

どうやっても許せない犯罪もある。

 

例えば、

ロリコンレイプ魔だとか、

無差別的な凶悪犯がそれです。

 

そしてその根底には、

お決まりのごとく「精神異常」があったりするわけですが、

だったらこの「精神異常」こそ悪の根源じゃないかと。

 

この作品では、

こうした「精神異常」は、

行き過ぎた人間の「欲望」から来るものとして描かれています。

 

それが「理性」のもとでコントロールできなくなったとき、

彼らは異常者として犯行におよびます。

 

犯人は、

孫娘をそうした異常者に犯された被害者でもあり、

彼からすると、

いくら精神を病んでいるとはいえ、

そんなレイプ魔は社会的な「カス」なわけで。

 

本作では、

名画『カッコーの巣の上で』を例に、

一時期、精神病の治療として

ロボトミー」という外科手術が実在したことを取り上げています。

 

ロボトミーはその後、

その副作用や人権的側面から廃止されたようですが、

 

ロボトミーに比べれば、

寄生虫を使う治療なんていうのは、

メスも使わず宿主の生命までは奪わないので画期的。

 

かつ、

精神的な病を負っているとはいえ、

凶悪な犯罪をおかした罪に対する罰という意味では、

大義も果たせる。

 

これが、

『マンホール』における犯人の主張でした。

 

じゃあ、

どうやったらそんな治療ができるのか?

 

それが、

フィラリア」という寄生虫を、

人間の視床下部に巣食わせ、

欲望を抑え込むのです。

 

マンホールは、

そういった「カス」に対する治療場(制裁を準備をする場)

として使用されていました。

 

当初はそこで特定の人物をターゲットにして、

実験・犯行が行われていましたが、

フィラリアというのは、

蚊によって媒介され伝染もします。

 

犯人も予想だにしなかったバイオテロが発生してしまうわけです。

いわゆる「アウトブレイク」ですね。

 

捜査一課が科学警察部隊を動員して

このアウトブレイクを封じ込めていくさまや、

犯人を特定し追い詰めていくさまは、

ハラハラドキドキMAXで、

目が離せませんでした。

 

後半の、

犯人による「作戦のつづき」=隣町の放火犯に対する制裁こそ、

彼が企んだバイオテロそのものでしたが、

こっちはちょっと話が一足飛びすぎて、

犯人に同情できませんでした。

 

この犯人も、

自分で「寄生虫」を試しただけあって、

神経がおかしくなってしまっているし、

カスに制裁を加えることはすべて大義だと思っている。

 

言わば原理主義的な過激さがあるけれど、

自分はそれに気づいていない。

 

だから、

放火犯が潜む隣町にアウトブレイクをおこそうとしたことは、

聖戦でもあるというわけですが、

 

このストーリー展開には、

若干無理があるように思いました。

 

孫娘と何の関係もないじゃん、と。

何も町の人全員をターゲットにしなくてもいいじゃん、と。

 

最後にその犯人が捕まって、

MRIにかけられ、

椅子のネジ(金属片)を飲みこみ、

MRIの中で自爆するところは、

 

げ!

MRIの撮影で金属を身につけてるとこんなことになるの?!

 

という教訓にはなりましたが。。。

 

このシーンも衝撃的だったなー。

 

いろいろグロテスクで、

ストーリーに文句つけたいところも若干ありましたが、

いずれにしても、

最後まで目が離せない漫画だったのは事実です。

 

面白かった!

 

■まとめ:

絵のうまさ、ストーリーの構成力と引っ込まれ感アリ、読了後にいろいろ考えさせられる感アリで、若干気持ち悪かったけど、面白かった。

・生物疫学や精神医学、バイオテロなどについて、作者はよく調べている。犯人が犯行に至るまでのストーリー展開も上手。しかし、第二の犯行計画(アウトブレイク)については、無理矢理感があった。
一見、バイオ・ホラーサスペンス的な作品だが、中身は社会派サスペンス的。単に刺激だけ強い作品とかではないので、作者の頭の良さを感じた。逆に、究極にmadなホラーサスペンスを求めている人には、物足りないかもしれない。

  

■カテゴリー:

マンガ

 

■評価:

★★★★☆

 

▽ペーパー本は、こちら

マンホール 1 (ヤングガンガンコミックス)

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マンホール 2 (ヤングガンガンコミックス)

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マンホール 3 (ヤングガンガンコミックス)

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Kindle本は、いまのところ出ていません

 

 

 

 

 

犯人はどこで