ナオミとカナコ ★★★★★

奥田英朗さんの

ナオミとカナコ

を読みました。

 

評価は、

星5つです!

 

久々のブックレビューです。

 

実は、

これまでにも何冊か読んではいたものの、

なかなか記録に残すことができずにいました。

 

最近、

少しずつ時間がとれるようになったので、

また可能な範囲で記録をつけていきたいと思っているのですが、

つい最近読んだのがこの作品。

 

えーっとですね、、、

マジでおもしろかった!!!

 

かっぱえびせん並みに、

ページをめくる手が、

やめられない止まらない。

 

久しぶりに、

こんなに先が気になる小説を読んだ!

という感じです。

 

終盤なんてもう、

息つくヒマもないっていうか。

 

最後まで読み終えたとき、

ふわぁー!!!

って思わず深呼吸しちゃいました。

 

 

▽内容:

二人は運命を共にし、男を一人殺すことにした。
「わたしたちは親友で、共犯者」

復讐か、サバイバルか、自己実現か——。
前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。

望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。
夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。
三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に
追いつめられた二人が下した究極の選択……。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」

すべては、泥沼の日常を抜け出して、人生を取り戻すため。
わたしたちは、絶対に捕まらない——。

ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の〈共犯者〉になる。
比類なき“奥田ワールド"全開! 待望の犯罪サスペンス長篇!!

 

実に1年ぶりに、

このレビューを再開したわけですが、

この本がここまで面白くなかったら、

たぶん再開はもっと遅くなっていた気も。

 

事実、

時間がなかったとはいえ、

これまでにも小説含めて何冊か読了しているのに、

このブックレビューには手をつけることが叶いませんでした。

 

だから、

この作品がここまで面白くなければ、

きっとまたレビューなんていいや…と思って、

先延ばしにしていたと思います。

 

奥田さんの作品は、

これまでにも何冊か読んだことがあって、

伊良部三部作『イン・ザ・プール 』『空中ブランコ』『町長選挙』のほかに、

映画化された『ガール』、

ドラマ化された『オリンピックの身代金(上)(下)』、

そして『最悪』と『家日和』なども、

かつて読んだ記憶があります。

 

伊良部シリーズは、

最初の『イン・ザ・プール』が一番おもしろくて、

あとはそれほどでも…というのが正直な印象ですが、

 

シリーズではない、

オリンピックの身代金(上)(下)』と『最悪』は、

めちゃくちゃ面白かった気が。

 

奥田さんって、

コピーライターや構成作家を経て小説家デビューしているので、

言葉の使い方とかストーリーの組み立て方がさすがに上手い。

読んでいるだけで、

なんとなく映像が目に浮かび上がるというか。

 

だから彼の作品は、

やたらドラマ化されたり映画化されたりするんだろうな、

と頷けます。

 

実際、

この『ナオミとカナコ』も、

2014年に刊行されて、

今年の1月には早くもフジテレビでドラマ化されています。

 

視聴率はあまりすぐれなかったようですが、

ナオミ役には広末涼子が、

カナコ役には内田有紀がキャスティングされ、

カナコのDV夫で、

夫に激似の中国人出稼ぎ労働者は、

佐藤隆太一人二役を演じたようです。

 

主役の二人には、

正直あまりひかれませんが、

DV夫の妹(陽子)を吉田羊さん、

日本で商社を運営する中国人の女性経営者を高畑淳子さんが演じており、

それだけでドラマも見たくなりました。

 

何が言いたいかっていうと、

主演の二人は、

自分のなかではマッチしなかったのですが、

助演の二人は、

わりとピッタリなんじゃないかっていう。

 

今度、

時間があったら是非、

DVDでも借りて観たいところです。

 

さて、本題。

 

内容としては、

ナオミとカナコという親友どうしの二人が、

カナコのDV夫を殺して山に埋めちゃうんですが、

事件に巻き込まれた疑いや死体が見つからなければ、

ただの失踪ということで家出人扱いされることが多く、

日本の警察は動かない。

 

そもそも、

この狭い日本で、

捜索願は年に8万件も出されるらしく(!)、

その1つ1つをまともにとりあっていたら、

警察なんて全く人手が足りるはずもなく、

ナオミはそこに目をつけたのです。

 

警察に疑われなければいける。

 

折しも、

仕事で懇意になった中国人女性(李朱美)の会社に、

カナコのDV夫にウリ二つの中国人男性がいて、

そいつにDV夫のパスポートを持たせて出国させれば、

夫は国外に出ていってしまったことになり、

まさか殺されているとは誰も思うまい…

という計画が組まれまる。

 

そして、

それは実行に移されます。

 

しかし、

夫が海外に行くのにも、

何かしらの動機があったほうがいい。

──ナオミは考えます。

 

そうだ、

会社で不正をはたらいたことにしよう!

そしてそれをもって国外逃亡したことにしよう!

 

カナコの夫は銀行員なので、

顧客のカネに手をつけるっていうのはどうだろう?

 

問題は、

どうやってその既成事実を作るか?ですが、

ナオミは百貨店の外商をしていたので、

富裕層を顧客としてもっています。

 

そうだ!

あの人を使おう!

 

それは最近上司から引継いだ、

医者の未亡人。

 

夫はすでに亡くなり、

子供たちも独立して家を出ているので、

屋敷に一人暮らしですが、

ナオミがここへ来訪するようになってから、

彼女はその老婦人からいたく可愛がられます。

資産管理や銀行通帳まで任される始末。

 

しかも、

通っているうちに彼女はあることに気づきます。

 

それは、

その老婦人が認知症を患っているということ。

引継ぎのときには何も聞いていなかったので、

上司や会社は気付いていないのでしょう。

 

ナオミはひらめきました。

 

あのDV夫にこの老婦人を紹介し、

夫が彼女の認知症に付け込んで、

彼女の預金に手をつけたことにしよう。

 

実際、

ナオミは老婦人の口座で、

オンラインバンキングができるように手配済みだったので、

ネット通信でカナコの口座に預金を移し、

それを夫が引き出したことにする。

 

でも、

その夫はすでに殺しているわけだから、

例の中国人ソックリ男に引き出させ、

それを報酬として、

彼を中国に帰国(出国)させたのです。

 

これでカナコは、

DV夫の暴力に怯えることなく、

おいしい水が飲めるようになり、

(カナコは口の中が切れて、おいしい水が飲めることがなかった)

 

ナオミは、

親友が夫の暴力で苦しんでいるんじゃ?と

憂慮することもなくなった。

 

──が、

めでたしめでたし♩チャンチャン♩

…というふうには勿論いくわけがありません。

 

夫の勤務先が怪しみ始め、

行内での調査が始まりました。

 

そこで、

彼が出国したことや、

顧客の口座からお金を引き出していた事実などが判明します。

 

でも、

どうにも納得がいかない。

 

あいつがこんなことするわけがないし、

銀行員がやったことにしては、

お粗末すぎることがいっぱいあって、

あいつが考えてやったこととは思えない。

誰かに脅されていたんじゃないか?

 

──そして、

お金が引き出されたATMの防犯カメラに、

DV夫らしき姿のほか、

女性二人組と思われる足元が映っていることが発覚するのです。

 

一方、

DV夫の実家も黙ってはいませんでした。

 

彼が顧客の預金に手をつけ、

海外に出国して行方がわからない?

いいや、あの子がそんなことするわけがない!と。

 

両親は為す術もなく、

ただただ泣いて息子の音信を待つのみでしたが、

ここには一人、

キレ者がいました。

 

それが妹の陽子です。

 

彼女はいわゆるバリキャリで、

行動力もあって頭脳明晰。

なにがなんだかわからず手を焼いている両親がいたたまれず、

かといって警察も当てにならないので、

自分たちで探偵を雇うようにしたのです。

 

カナコは、

そのことを妹(陽子)から知らされ焦ります。

 

でもナオミは言います、

大丈夫、大丈夫!

探偵を雇うにもお金がかかるから、

そんなに長くは雇えないし、

何も出てこないからすぐ諦めるだろう、と。

 

そっか、そうだよね、

とカナコ。

 

ところが、

彼女たちの予想に反し、

この陽子がめちゃくちゃしぶといのです。

 

彼女は兄(カナコのDV夫)が行方をくらませた日にさかのぼり、

その日の足跡をたどろうとします。

 

そして、

カナコたちのマンションの、

防犯カメラを見せてもらおうとする。

 

防犯カメラなんて見られたら、

完全にアウトです!

 

そこには前日に帰宅した兄(DV夫)の姿は映っていますが、

その先、彼がマンションを出た記録がないわけですから。

 

それどころか、

駐車場の防犯カメラには、

ナオミとカナコが大きな荷物を運び出す映像が映っています。

 

こんなもん見られたら、

二人が殺して死体を持ち出したってバレバレじゃん!と。

 

恐るべし陽子の推察力!

 

カナコはあの手この手をつかって、

防犯カメラの公開を引き留めます。

(陽子たちの手前、管理会社にお願いはしている、という体で)

 

しかし、

ここで引き下がる陽子ではありませんでした。

 

この義姉は、

本当にカメラの件をお願いしてくれているのか?

 

ていうか、

そもそも解決する気があるのか?

兄がいなくなってから、

義姉は落ち込むどころか、

むしろその逆のように見える。

 

だって、

そうじゃなかったら、

働き始めたりしないだろ?!と。

 

カナコは実際、

ナオミの紹介で、

中国人女性のもとで働き始めていました。

 

それを不信に思った陽子。

探偵にいろいろ探らせます。

 

そこに、

あろうことか、

あのソックリ男がいるではありませんか!

 

カナコはビックリしてナオミに告げます。

中国に帰ったはずのアイツがまだいる、と。

ナオミもびっくりです。

 

大慌てで、

二人はソックリ男を呼び出し、

再び姿を消すよう説得します。

 

もともと彼は、

他人のパスポートで出国させられた理由は聞かされていませんでしたが、

 

「実はそのパスポートの人物は、ヤクザに追われている。

だからここにアンタがいちゃ、まずい。殺されるよ!」

とウソの説明をし、

 

実際、

その場にやってきた怪しい男を指して、

「ほら、あれヤクザじゃない?!」

と言って。

 

ソックリ男は慌てふためき、

逃げ出します。

 

ところが、

その怪しい男こそ、

なんとあの陽子が雇った探偵だったのです!

 

いなくなったはずの兄が、

こんなとこにいるじゃん!どういうこと?!

と彼らは事実を突き止めはじめるのです。

 

兄にソックリの男がいて、

そいつは中国人で、

なにやらカナコとナオミと接点があるらしい──。

 

いよいよ、

これは何かあるな…と感じ始めた陽子。

 

そこから、

さらなる追撃が始まります。

 

彼女は、

カナコのマンションへカメラの件の続報を探りにきたと見せかけ、

盗聴器を仕掛けます。

 

そして、

カナコとナオミが電話で話している内容を聞く。

 

もう絶対、

カナコが怪しい!

 

そして、

彼女は防犯カメラの映像を見ることに成功するのです。

 

ついに陽子のなかで、

疑念が確信に変わりました。

 

再びマンションにやってきて、

カナコを問い詰めます。

お義姉さんが殺したんでしょ?!全部知ってるよ!カメラを観たんだから!

──と。

 

そして、

まさかの事実をカナコに明かします。

 

それというのも、

兄はカナコと結婚する前に付き合っていた女性がいて、

その女性に暴力をふるっていたことが原因で別れ、

相手の家から慰謝料を請求された、

──という過去の兄の古傷です。

 

この女(陽子)は、

知っていたのです。

 

兄がDV男で、

きっとカナコにも暴力をふるっていたんだろう、と。

だからそれで兄を殺したんだろう、と。

 

はじめは陽子について、

よくそこまで頭がまわるな、

仕事してるのにそこまでやるなんてヒマだな、

と感じた私でしたが、

 

兄のDVを知っていたなら、

話は別です。

 

なるほどな、

陽子はハナからカナコが怪しいと踏んでいたわけだ、と。

 

ソックリ男が存在していたこと、

その男とカナコたちが通じていること、

盗聴器から聞こえた二人の会話、

そして極めつけは防犯カメラの映像…。

 

これだけ証拠がそろうと、

もはや動かぬ警察ではありません。

 

ついにカナコは、

警察にしょっ引かれます。

そして問答無用の取り調べが始まる。

 

そこに助け舟を出したのは、

ナオミ。

 

中国人女性のツテをたどって弁護士を紹介してもらい、

カナコを取り調べから解放させる。

 

そして二人は、

(あぶなくなったら)海外に逃げようと決めていたことを

実行に移すのです。

 

警察は、

令状なしにカナコらをつかまえることはできませんが、

陽子は違いました。

 

常にカナコたちを見張っていたのです。

 

そして、

いざ空港へ行こうとするカナコたちの行方を阻みます。

 

逃がすもんか!と陽子。

逃げ切ってやる!と二人。

 

追っ手に気付いた二人は機転を利かせ、

GPSがついた携帯を成田行きの電車に置いて、

自分たちは羽田へ向かうのです。

 

そして最後、

手荷物検査から出国審査へ。

 

出国審査で引きとめられないか。

 

先にナオミが通過し、

次にカナコ。

 

ちょうどそのとき、

審査官が交代します。

 

え?!

まさかナオミだけ通過できて、

実はカナコはひっかかるんじゃないか?!

 

心臓バクバクです。

 

最後のオチは、

ここでは控えさせていただきますが、

これで物語は終わります。

 

すごい臨場感!

そして緊張感!

 

本当に、

最後まで目が離せませんでした。

 

スリル満点。

 

そもそも、

計画から実行に移すまでが早すぎるし、

その計画も簡素すぎるだろう、

(カナコはさておき)頭が良さそうなナオミなら、

そのくらい見抜けそうなのに…

 

このタイミングでDV男の子供を妊娠してたって、

ありえないっしょ?!

しかも男(子供にとっては父親)を殺しといて、

産むってなんだよ?!

正気じゃないでしょ?!

 

最後、

弁護士がついて取り調べから解放されたからといって、

空港まで警察がノーマークだなんてあり得ないだろ?!

逃亡のおそれはあるんだから、

あの手この手を使って国外脱出を阻むはずでしょ?!

 

──などなど、

ツッコミどころはまぁまぁあるんですが、

 

頑張れ!逃げ切れ!!と、

殺人犯の二人をいつの間にか応援しているし、

逆に、

被害者である陽子のしつこさのほうに、

恐ろしさを感じてしまうという。

 

小説で、

ここまで手に汗握ったのは、

本当に久しぶりでした。

 

一気読み必至の作品。

 

■まとめ:

・手に汗にぎる面白さ。すごい緊張感、すごい臨場感。スリル満点の逃走劇。一気読み必至。

・殺人犯であるはずのナオミとカナコに同情し、頑張れ!逃げ切れ!!と応援してしまう。逆に被害者の家族(陽子)のしつこさに辟易。

・細かいところでいろいろツッコミどころはあるけれど、にしてもストーリー展開が上手で最後まで目を離せない作品。

 


■カテゴリー:

ミステリー

 

 

■評価:

★★★★★

 


▽ペーパー本は、こちら

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