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映画 わが母の記   ★★★★☆

久しぶりに自宅で映画を観ました。

 

主演:役所広司さん、

監督:原田眞人さんの作品、

わが母の記』。

 

わが母の記のポスター

 

作家・井上靖さんの自伝的小説を映画化したもの。

 

評価は、星4つです。

 

私評ですが、

とてもいい映画でした!

 

邦画にありがちの繊細さ・しんみり感が満載なので、

「まったり」・「しんみり」・「せつない」感じを求めている人には

めちゃくちゃオススメですが、

 

内容が繊細すぎるゆえに、

人の心の琴線をあれやこれやと考えないといけないのと、

まったりしすぎていて、

もっと先が知りたい・どうなるんだろう?!感は薄いです。

 

ですので、

さらっと観たかったり、

ストーリーに刺激を求めたり、

ぐいぐい引き込まれたいような気分の方には、

ちょっとキツイかも。

 

私も、

ずっと前から観たいと思っていた映画でしたが、

じっくり構えて観る状態でないと厳しいだろうな

と思っていたので、

鑑賞を先延ばしにしていました。

 

で、

今回ようやく観ることができたわけですが、

ストーリーよし!キャストよし!音楽よし!

と三拍子揃っていて、

「やっぱり邦画っていいなー」

と思える逸品でした。

 

でも、

もう一度観るにはちょっと億劫かな。笑

 

次はもっと歳をとってから、

もう一度観たいです。

 

▽内容:

小説家・井上靖が自身の家族とのきずなを基に著した自伝的小説「わが母の記」を、原田眞人監督が映画化した家族ドラマ。老いた母親との断絶を埋めようとする小説家の姿を映し、母の強い愛を描いていく。主人公の小説家には役所広司、母には樹木希林、そして小説家の娘に宮崎あおいがふんし、日本を代表する演技派俳優たちの共演に期待が高まる。
昭和39年。小説家の伊上洪作(役所広司)は実母の八重(樹木希林)の手で育てられなかったこともあって、長男ではあるが母と距離をとっていた。しかし、父が亡くなったのを機に、伊上は母と向き合うことになる。八重もまた消えゆく記憶の中で、息子への愛を確かめようとしていた。

 

▽予告:


『わが母の記』予告編 - YouTube

 

主人公の井上靖(伊上洪作)役は、

役所広司さん。

 

 

 

お母さんの八重(やえ)役に、

樹木希林さん。

 

そして、

三姉妹の末っ子・琴子役に、

宮崎あおいさん。

 

このキャスト、最高でした。

みなさん、素晴らしい演技。

 

とくに主人公の大御所二人は、

さすが!としか言いようがないくらい上手でした。

 

舞台は昭和34年~44年まで、

いまから約50年前の昭和な風景を描いています。

 

そのせいもあり、

樹木さん・役所さんの声は随所で聞き取りづらい。笑

 

これたぶん、

「邦画あるある」だと思います。

寺尾聡さんなんかも、

何言ってるか聴き取れないことがよくある。

 

宮崎あおいさんの声は高いので、

まったくそんなことはないんですけど。

 

ちなみに、

エンドロールのクレジットタイトルを観ていたら、

女給:大久保佳代子

という文字が!

 

え?大久保さん?!

いたっけ??

と記憶をたどってみましたが、

どうにもこうにも思い出せませんでした。

 

「女給」という役で思い当たるのは、

お母さん(樹木希林さん)が食堂に迷い込むシーンですが、

 

もう一度よく観ると、

いたいた!

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あまりになじみすぎていて、

まったく気づきませんでした。笑


これぞ、名脇役!

 

さて、

ここからはストーリーの感想なので、

ネタバレ含みます。

 

まず、

本作のテーマは、

言うまでもなく「家族愛」です。

 

映画の中で、

井上靖は自身の著書によく家族を登場させていたこと、

一家の大黒柱として家族を支える井上はまた、

家族のしきたりにもこだわる昔気質の頑固親父だったこと、

家族総出で作家生活を手伝わせていたこと、

などが描かれていて、

 

井上靖って、どんだけ家族好きよ?!

というくらい「家族」に対する執着が垣間見られるのですが、

 

彼が自分の家族にここまで固執するのは、

昔自分が母親に「捨てられた」という意識が

どうやらトラウマになっているからだ、

 

…ということが後々わかってきます。

 

年老いたお母さんの介護を通して、

井上靖とお母さんとの間にあった「溝」が「想い」にかわるのが、

何よりこの映画の見どころなのですが、

号泣ポイントが2つあります。

 

1つめは、

お母さんが井上の詩を口ずさんだとき。

 

井上は、

ずーっとお母さんに捨てられたと思っていて、

認知症で自分の息子の顔もおぼつかない母に、

あるとき思い切って、

「あなたは息子さんを郷里に置き去りにしたんですよね?」

と切り出します。

 

意外にも、

母の口から告げられたのは、

井上が少年時代に作った詩でした。

 

雨が止んだ。

校庭にはたくさんの水溜りができている。

太平洋、地中海、日本海、喜望峰、誘導円木の影、

だけど、僕の一番好きなのは、

地球のどこにもない、小さな新しい海峡。

お母さんと渡る海峡…

 

井上自身も記憶から忘れ去っていたこの詩を、

お母さんはずーっと覚えていたわけです。

 

彼は母を恨み続けて生きてきましたが、

このとき、

母は自分を捨てたのではなく、

ずっと想い続けてきた

ということを知ります。

 

ここで号泣。

 

2つめは、

お母さんが亡くなったという訃報を受けたとき。

 

少年時代に読んだ「姥捨て山」の絵本と情景を思い浮かべながら、

そして、

憎みながらも認知症を患う母親を介護してきた日々を振り返り、

井上はこう呟くのです。

 

「おふくろを背負って歩き回り、捨てなくてはと思っても、適当な場所が無いんだ。すると母親が怒るのだ。探し方が悪いって。一人の母のために捨てる場所くらい探してくれたって罪にはなりますまい」

 

ここでまた号泣。

 

憎んでも断ち切ることができない親への想いは、

実はどこかで愛情をまだ欲しているというか、

本当は自分は捨てられたわけじゃないという確信が欲しかっただけ。

 

そして実際にその確信が得られたとき、

井上はありのままの母親を受け容れ、

彼自身もまた、

家族に受け容れさせていた自分から、

家族を受け容れる自分に、

変容を遂げるわけです。

 

母親との溝を埋める作業を通して、

頑固親父が少しずつ変わっていく。

 

「一人の母のために捨てる場所くらい探してくれたって罪にはなりますまい」

という言葉は、

母親も、

自分がしたことをずっと後ろめたく思っていたからこそ

出てきたフレーズなんじゃないかと思います。

 

お母さんもずっと申し訳ないと思っていたし、

ずっと郷里に置いてきた井上のことを想い続けていた。


一方で、 

井上は自分は捨てられたと母を恨んでいたけど、

どこかでそんなはずはないと否定しながら生きてきた。

 

幸か不幸か、

認知症という母の厄介な病気を通して、

二人の溝が埋まっていきます。

 

その溝を埋めるのにあたって、

いちばん活躍したのが

宮崎あおいさん演じる三女(琴子)でしょう。

 

家族のしきたりを大事にする伊上家(井上家)のなかで、

琴子はひとりやりたい放題。

井上の手伝いはしないし、

家族そろって囲む食卓にも姿を見せない。

 

自由奔放でリベラルな彼女は、

当然、

井上とはいちばんソリが合わないわけですが、

家族の誰もが手を焼く母親の介護には、

誰よりも率先して協力。

 

ときに堪忍袋の緒が切れて、

思わず啖呵を切ってしまうこともありますが、

本人の意思を尊重しながら、

認知症の祖母と向き合っていきます。

 

そんな琴子の姿を見ながら、

(母の世話を通じて)

琴子と井上の溝もまた埋まっていく

 

この映画、

あからさまに泣かせようとかではなく、

自然に熱くて切ない想いがじわじわ来ます。


すごい。

 

その「じわじわ感」を後押しするのが、

富貴晴美(ふうきはるみ)さんの音楽。

 

私はこれまでまったく彼女のことを知りませんでしたが、

調べてみたら、

若いのにすごい作曲家さんでした。


ふだん私たちが見るともなしに見ている

映画やドラマや舞台で、

彼女の音楽がこんなに使われているのかとビビりました。

 

映画の冒頭で使われていたのは、

バッハの「アンダンテ」という曲のようですが、

これもよかった!

 

それにしても、

当時、井上靖さんは相当「売れっ子」作家だったようで、

そのバブリーぶりがこの映画からよく伝わってきました。

 

なんと言っても、

ご自宅は世田谷ですし、

お抱え運転手もいる。

次女はハワイ大学に留学。

 

Yahoo!映画のレビューで、

この映画のことを

「三丁目の夕日」お金持ちバージョン

と評していたコメントがあって、

うまいこというなーと思いましたが、

古き良き格式高い旧家の姿というか、

レトロだけどセレブ感満載なわけです。

 

お母さんの誕生日パーティーが開催されたホテルなんかは

もう豪華すぎて、

上流階級の方々でないと手が出なさそうな雰囲気がプンプン漂っていました。

 

このホテル、

伊豆にある「川奈ホテル」という老舗旅館らしいです。

プリンスホテル系列のようですが、

荘厳なロビーも、

格調高いビリヤード台も、

大きなプールも、

決してセットではなくて今でも普通に設備されているそうです。

 

※実際に泊まった人のレビュー・写真はこちら

 

この映画は、

「家族の絆」だけでなく、

「介護」や「認知症」といった高齢者問題についても、

現代社会を生きる私たちに、

いろいろ問いかけてくるのですが、

(調べてないけど、映画評論家の人たちとかこういうこと言ってそう)

 

これだけバブリーな生活を見せつけられると、

そりゃこんだけお金があれば、

(精神的な「姥捨て」はさておき)

経済的な「姥捨て」はしなくても済むだろうよ…

と思った人も、

少なからずいるのではないでしょうか。

 

以上、

ただの羨望でした。

 

■まとめ:

・ストーリーよし!キャストよし!音楽よし!と三拍子揃っていて、「やっぱり邦画っていいなー」と思える作品。

・年老いて認知症を患う母の介護を通して、主人公(井上靖)と母との間にあった「溝」、主人公と娘の間にあった「溝」が埋もれていき、「想い」にかわっていく。あからさまに泣かせようとかではなく、自然に熱い想いがじわじわ来る映画。

・内容が繊細すぎるゆえに、人の心の琴線をあれやこれやと考えないといけないのと、まったりしすぎていて刺激が少ないため、ぐいぐい引き込まれていく感じではない。じっくり構えて観る必要がある。年をとってまた観たい。

 

■カテゴリー:

ヒューマン

 

■評価:

★★★★☆

 

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わが母の記 オリジナル・サウンドトラック

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▽原作は、こちら

わが母の記 (講談社文庫)

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Kindle本もあります。

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