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無理 ★★★★☆

奥田英朗さん

無理〈上〉〈下〉

を読みました。

 

評価は、星4つです。

 

これも3つか4つで迷いましたが、

4で。

 

奥田さんの長編は、

最悪』や『邪魔』のように、

二字熟語のタイトルがいくつかあるので、

少し時間がたつと、

どれがどれだったかわからなくなっちゃうんですが、

本書も然り。

 

たぶん、

数カ月後には、

内容とタイトルが一致していない自分がいることでしょう…。

 

でも、

この二字熟語シリーズ、

結構面白くて、

今回の『無理〈上〉〈下〉』も、

時間さえ許せば、

一気読みできちゃう面白さでした。

 

 

▽内容:

人口12万人の寂れた地方都市・ゆめの。この地で鬱屈を抱えながら生きる5人の人間が陥った思いがけない事態を描く渾身の群像劇。
合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。相原友則―弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。久保史恵―東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。加藤裕也―暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。堀部妙子―スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。山本順一―もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。

 

奥田さんの作品は、

主人公が一人とは限らず、

複数にわたることが多いです。

 

『最悪』も、

たしかそうだったし、

 

先日読んだ『邪魔』も、

二人(厳密には三人)でした。

 

そして、

今回の『無理〈上〉〈下〉』。

 

この本には、

5人の老若男女が登場します。

 

それぞれ同じ町に住んでいますが、

みんな何のつながりもない他人どうし。

 

それぞれがそれぞれの生活を営んでいるわけですが、

少しずつ繋がりをみせ、

最後には一斉に同じ舞台に躍り出ます。

 

奥田さんって、

こういうのが得意。

 

一見、

関係のない複数の人物が、

それぞれ実はつながっていて、

クライマックスでこう絡むか?!

という着地を見せる。

 

本書も類に漏れず、

このタイプの構成になっていて、

 

自分も読みながら、

きっとどこかでこいつら繋がるんだろうな、

そろそろかなー、

───なんて思いながら、

ページをめくっていました。

 

今回の登場人物メモは、

ちょうど文春さんのHPに

本作の登場人物紹介ページがあったので、

そこから引っ張ってきます。

 

・相原友則(32):

県庁職員だが、出向してケースワーカーとしてゆめの市の社会福祉事務所に勤務する32歳。生活保護の不正受給者や、弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしている。妻の浮気が原因で1年前に離婚。主婦売春の現場を偶然目撃し、思わぬ深みにはまっていく。

 

・久保史恵(17):

県立向田高校2年。両親と弟の4人家族。退屈なゆめのを出て大学は東京へ行き、イケメンで金持ちの彼氏をつくろうと親友の和美と誓い合った。同じ予備校に通う北高の山本春樹にほのかな想いを抱いているが、ある日突然、予備校の帰りに何者かに拉致される。

 

・加藤裕也(23):

向田電気保安センターの社員で、詐欺まがいの漏電遮断器を売りつけるセールスマン。23歳。商業高校中退、暴走族ホワイトスネークの元メンバーで、先輩の柴田に触発されて仕事が面白くなりつつある。離婚した妻との間に1歳2ヶ月になる息子・翔太がいる。

 

・堀部妙子(48):

夫と離婚、子供も独立して一人暮らしの48歳。昼間は「ドリームタウン」の地下にあるスーパーで万引き犯を捕捉する保安員として働いているが、生活は苦しい。仏教系の宗教団体「沙修会」の会員で、教祖の教えにすがることでなんとか暮らしている。

 

・山本順一(45):

ゆめの市議会議員。町会議員だった父親の地盤を引き継ぎ、現在2期目の45歳。地元の山本土地開発社長でもある。妻・友代の浪費と飲酒が頭痛の種だが、自分も愛人を囲っているので目をつむっている。長男の春樹は東大を狙える成績なのが嬉しい。もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりだ。

 

───このように、

年も仕事もてんでんバラバラな五人ですが、 

最初につながりを見せたのは、

久保史恵と山本順一。

 

といっても、

私はわりとあとのほうで気付きましたが、

伏線としては結構最初から張られていました。

 

当人たちが直接つながっているわけではなく、

史恵が通う予備校に、

学区内随一の進学校・北高から通う山本春樹も通っていて、

この山本春樹こそ、

市議会議員・山本順一の息子だったのです。

 

史恵は、

この山本春樹に想いを寄せていて、

春樹は東大を目指していたので、

自分は立教か青学あたりの大学に入り、

あわよくば春樹と花の東京生活を送れたら…

と夢見ていました。

 

次に、

つながりを見せたのが、

相原友則と加藤裕也。

 

一方は公務員という堅気な職に就き、

もう一方は怪しい詐欺商材を売るヤクザな仕事をしていて、

身の置き場としては全く違う畑なんだけれども、

裕也の別れた妻(佐藤彩香)が、

シングルマザーとして市の生活保護を受けていました。

その担当が相原友則。

 

友則は、

何かと理由をつけて働こうともせず、

生活保護にあずかる彩香を、

あの手この手で受給を打ち切ろうとします。

 

彩香のほうも、

全額打ち切りでは困るので、

なんとか減額にとどめようと、

急遽、

裕也との間に産まれた子(翔太)を裕也側に引き渡すことに。

 

ロクにオムツもかえたことがない裕也は、

突然、

一児の父になるわけですが、

仕事もしているし、

昼夜面倒を見ることもできません。

 

そこで、

市内に住む両親を頼り、

父親の借金を肩代わりするかわりに、

昼間は息子をあずかってもらうことに。

 

家計を支えるため、

母親は夕方からスナックに働きに出ていたが、

父親がタクシーの運転手をやっているため、

わりと時間に融通がきいて、

両親が交代で面倒をみてくれることになったのです。

 

で、

昼間家で育児がてら留守番しているこの父のもとに、

ある日やってきたのが堀部妙子。

 

彼女は数日前に警備員をクビになり、 

以前にも増してどっぷりはまるようなった新興宗教の布教活動をすべく、

近隣地域をまわっていたわけです。

 

要は勧誘なんですが、

この勧誘に裕也の父が引っ掛かる。

といっても、

彼はどちらかといえば、

妙子や信者の女性のほうに興味があって、

あわよくば女遊びできたらと思っている。

 

結局、

まんまと妙子とワンナイトラブに至ったりします。

(あんまし想像したくないけどね…)

 

ほかにも、

史恵の父親の勤務先である部品メーカーに、

ブラジル人の出稼ぎ労働者がいて、

彼らやその子供たちが一部暴徒化し、

裕也が元々在籍していた暴走族と対立したり、

〈↑ここで史恵と裕也に接点〉

 

裕也がまんまと漏電遮断器を売りつけた相手が、

山本順一の奥さん(友代)だったりと、

〈↑ここで裕也と山本に接点〉

 

なんだかんだで、

ちょいちょいつながっていくわけです。

 

『最悪』のときは、

たしか、

それぞれの人物が一緒になって

同じ犯罪に手を染めるんですが、

今回はそういうわけではない。

 

もちろん、

山本のように、

対抗するフィクサー(藤原)を殺してしまったり、

彼自身が直接手を下したわけではないけれど、

反対する市民団体の女性(坂上)の死体を隠ぺいしたり、

 

裕也のように、

親しい先輩(柴田)がやってしまった殺人に巻き込まれたりと、

 

それぞれが、

方々で犯罪に手を貸してしまったりするんですが、

 

5人が一緒になって、

ということではありません。

 

逆に、

史恵なんかは、

予備校帰りに、

引きこもりのオタク野郎に拉致監禁されたりします。

 

そういえば、

この〈引きこもりのオタク野郎〉は、

裕也の元同級生(ノブヒコ)で、

ここでも史恵と裕也に接点がありました。

 

ほんと、

うまくできてる。

 

それ以外にも、

友則は、

生活保護を受けさせず、

病死してしまった女性の息子(西田)に逆恨みされ、

ダンプカーでつきまとわれて追突されたり、

 

妙子は、

実母の面倒をみようと兄から引き取ったものの、

ほんの出来心で母のために買おうと思った車椅子を、

万引きしてしまいます。

 

そしてそのまま、

ショッピングセンターの保安員に御用となる。

 

つい先日まで、

自分が捕まえ・追及する側だったのに、

すっかり立場が逆になり、

自分が見てきた側の人間に成り下がってしまうのです。

 

───こんな感じで、

チョイチョイ接点はありながらも、

三者三様というか、

それぞれが犯罪に加担したり、

あるいは逆に巻き込まれたりして、

 

一体、

こいつらはどう着地するんだろう?と、

読んでいて先が気になります。

 

そして、

結末でついに一同が勢ぞろいします。

 

※※このあと、ネタバレあります※※

 

最後は、

友則が西田のダンプカーにまた追われ、

雪のせいでスリップして多重事故を起こすわけですが、

 

そこには、

逃走に失敗した史恵を乗せたノブヒコ車と、

 

警察に出頭すべく、

社長の死体をトランクに乗せたままの柴田&裕也車、

 

身元引受人として、

万引きした妙子を引き取り、

帰宅途中の姉妹の車、

 

殺してしまった市民(坂上)の死体を焼却すべく、

動物用の焼却炉を載せた山本一味のトラックが、

 

みな勢ぞろいして、

彼らがその事故に巻き込まれてしまうという。

 

せっかく警察に出頭しようと決めた裕也たちは、

トランクに社長の死体が積んであったので、

現場検証で、

出頭前にそれが見つかってしまうでしょうし、

 

山本も、

トラックに焼却炉が積んであったことが、

殺人事件に関わった足掛かりになるでしょう。

 

妙子も、

信じていた宗教には裏切られ、

(上層部と関わるようになって、結局カネだと気づく)

また一から生活をやり直そうとしていたところに、

出来心からの万引きと、

この事故で重傷を負ってしまいます。

 

辛うじて、

友則と史恵の二人は、

結果的には、

自分につきまとう人間(西田やノブヒコ)から

逃れることができたわけですが、

 

友則は、

事故の直前に、

いつもの人妻デートクラブで、

思いがけず元妻と出くわしてしまうし、

(自分も最低だけど、妻も最低だと知って、怒り爆発!)

 

史恵も、

事件から解放されたとはいえ、

このあとは、

いろんなウワサが飛び交うだろうし、

自分の将来はもはや〈お先真っ暗〉。

 

結局みんな、

ハッピーエンドじゃない。

 

つまり、

救われないってことです。

 

前回の『邪魔』もそうでしたが、

彼の作品は、

ちょいちょい救われない結末があって、

それがどうにもこうにも後味がよくない。

 

もちろん、

これはあくまで個人的主観なので、

この結末が醍醐味っていう読者もいると思うんですが、

 

さんざん読者を惹きつけておいて、

結局、

誰一人幸せになってないよね、

っていう終わり方なのです。

 

だから、

読んでいるほうとしては、

何だよ~もう~っ!

と思ってしまう。

 

いや、

たしかにそうなる予兆はあって、

 

それは物語全体を通しての伏線にもなっているんですが、

終始一貫して天気が悪い。

 

つねに曇っているし、

寒いし、

静かだし、

いまにも雪が降りだしそうな空ばかり。

 

雪が降っているときとか、

降るか降らないときっていうのは、

だいたいザ・曇天なわけだけれども、

 

この5人の人生を象徴するかのように、

ずっとこの曇天模様が続いているのです。

 

そして、

それは最後まで同じ。

 

だから、

どこかできっと、

晴れない結末なんだろうな…っていう、

なんとなくの予感はたぶんあって、

 

それまで意識はしていないけど、

終わってみたら、

あ、やっぱりな、ナルホドナ、

───みたいな。

 

構成上、

うまくできているし、

それぞれの人生がピンチを迎えて、

どういう結末になるんだろう?と

先が気になって仕方ないストーリー展開でしたが、

結末が残念だったなぁという感想でした。

 

ということで、

星4つ。

 

でも、

おもしろかったです。


■まとめ:

・一見、関係のない5人の老若男女が、それぞれ実はつながっていて、クライマックスでこう絡むか?!という着地を見せる。まさに、奥田さんが得意とする構成。

・とてもうまくできていて、それぞれが犯罪に加担したり巻き込まれたりして、人生のピンチを迎え、いったいどういう結末になるんだろう?と先が気になって仕方ないストーリー展開だったが、結末が残念。

・物語をとおして、5人の人生を象徴するかのように悪天候が続いており、ラストも誰も救われない。そういう意味では、後味がイマイチだった。

 


■カテゴリー:

 ミステリー

 

■評価:

★★★★☆

 

 

▽ペーパー本は、こちら

無理〈上〉 (文春文庫)

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