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邪魔 ★★★★☆

奥田英朗さんの

邪魔(上) (下) 

を読みました。

 

評価は、

星4つです。

 

3つか4つで迷うところですが、

ストーリー展開にひきつけられたのは確かなので、

4つにしました。

 

前回読んだ、

ナオミとカナコ』が超絶おもしろかったので、

再び同じ作者(奥田英朗)の作品をチョイス。

 

夫の放火事件をきっかけに、

どこにでもいる普通の幸せそうな家族が、

ある日を境に崩壊していくサマと、

それを捜査する警察と暴力団の癒着、

そしてその汚職に関する警察内部のイザコザ、

果ては企業と暴力団との取引まで、

いろんな組織・人物が複雑に絡み合い、

ドラマが繰り広げられていきます。

 

もろもろ、

どう決着するのかな?と先が気になる感はハンパなく、

さすがは奥田作品!という感じなんですが、

 

いろいろ絡み合い過ぎてよくわからないというか、

なんだかスッキリしない、

中途半端な感じがあったのも事実です。

 

ラストの、

主人公1=及川恭子のオチがそれかよ!っていう

救われなさにはちょっと失望したし、

主人公2=九野刑事の処遇やその後が尻切れトンボで、

うやむやになってしまったところにも、

読了後の居心地の悪さがありました。

 

すっごい先が気になって、

早く知りたいとひきつけられたけれど、

結末にガッカリ…という感じ。

 

特に終盤は先が気になり過ぎて、

一度閉じた本をまた開き、

いっきにラストまで読み終えたわけですが、

気づいたら夜中の2時過ぎ。

 

それだけに、

ラストこれかよ~(涙)

という残念感が増幅されたのかもしれません。

 

でも、

やっぱり奥田作品は秀逸! 

 

 

▽内容:

及川恭子、34歳。サラリーマンの夫、子供2人と東京郊外の建売り住宅に住む。スーパーのパート歴1年。平凡だが幸福な生活が、夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺らぎ始める。恭子の心に夫への疑惑が兆し、不信は波紋のように広がる。日常に潜む悪夢、やりきれない思い。

九野薫、36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として、所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚・花村の素行調査を担当し、逆恨みされる。放火事件では、経理課長・及川に疑念を抱く。わずかな契機で変貌していく人間たちを絶妙の筆致で描きあげる犯罪小説の白眉。

 

上記のとおり、

この作品は二人の主人公がいます。

いや、正確には三人かな。

 

主婦の及川恭子と刑事の九野薫、

そして不良少年の渡辺裕輔。

 

なので、

恭子目線と九野目線(たまに裕輔目線)で、

ドラマが展開していくわけです。

 

※※この先、ネタバレあります※※

 

ことの発端は、

恭子の夫の勤務先で起こった放火事件。

 

この勤務先が過去に暴力団とからんでいた経緯もあって、

犯人は暴力団では?という推測が警察のなかで浮上します。

 

ところが、

この放火事件の第一発見者が恭子の夫で、

なにかと怪しい…。

 

マル暴対策で検挙に必死な警察上層部と、

暴力団の取り締まりが担当の警視庁捜査四課。

彼らとそれに従う所轄署の面々は、

疑惑の暴力団の捜査に躍起になります。

 

一方で、

恭子の夫が怪しいと踏む九野と、

本庁から出向いてきた服部刑事。

この服部とかいう刑事は、

本庁の四課や指揮官を小馬鹿にしていて、

密かに対抗心を燃やしています。

二人はタッグを組んで、

夫を見張りつづけます。

 

ところが、

暴力団が放火にからんだ証拠がまったく出てこない。

 

所轄の面々も四課の面々も、

そろそろ雲行きが怪しいといぶかしがり、

捜査も規模が縮小されていく始末。

 

上層部はこれをどう落とし前つけるんだ?

と皆が陰で軽口をたたきはじめます。

 

引くに引けない上層部。

そしてそれを鼻で笑う九野の相棒(服部)。

 

恭子の夫が怪しいと睨み続ける九野ですが、

彼は所轄署のなかで

もう1つミッションを抱えていました。

 

それは同じ署内の、

同僚刑事(花村)の素行調査。

 

この同僚は、

もともと暴力団を取り締まるチームに所属していましたが、

彼は不倫行為がバレ、

署内の金銭事情でも上層部に楯突いたりで、

組織からにらまれ、

警察をクビになります。

 

九野は、

副署長(工藤)の指示で花村の不倫の実態を調査していましたが、

それが花村に知られてしまい犬猿の仲に。

挙句の果てには、

その不倫相手の女性をめぐって花村と差し違えてしまうという。

 

九野は、

最愛の妻を事故で亡くしていて、

言わば「男やもめ」であり、

この不倫相手の女性は元婦警で(今はホステス)、

九野とも関係をもった間柄でした。

 

なので、

独り身の九野からすれば、

自身は不倫でもなんでもありません。

 

ただ彼は、

妻を亡くしてから精神を病んでおり、

不眠症を患って安定剤も服用しています。

本来であれば内勤となるところを、

工藤(副署長)の取り計らいで、

なんとか一線に置いてもらっている。

 

だから、

そんな九野を心配して、

同僚らは縁談をもちかけたりしますが、

亡き妻がひとり娘だったこともあって、

いまだに独り身を貫き、

義母を心の支えにしていました。

 

そして、

義母と養子縁組することまでも考えていました。

 

しかし、

実はその義母は、

すでに死んでいたのです…!

(このシーン、軽くホラーかと思いました)

 

彼が慕い、慈しんできた義母は、

実は幻であって、現実ではない。

彼女は(彼女も)もうこの世にはいなかったのです。

 

いま思えば、

義母の自宅にやたら不動産屋が押しかけていたり、

近所の花屋の兄ちゃんと話が噛み合わないことがあったり、

九野が義母宅に電話しても電話に出なかったりしていたのは、

実は九野の脳がクリアなときで、

義母が実在しなかったからなんでしょうね。

 

(読み直していないから、

詳らかに検証したわけではありませんが)

きっと、

安定剤を飲んで頭が朦朧としているときは、

義母が見える。

 

そんな九野の精神状態について、

いよいよ署内でヤバいと知れ渡ります。

 

彼は長期休暇を命じられ、

捜査の前線からも退くことになってしまう。

 

一方で、

夫に対する黒い疑念がどんどん膨らんでいく恭子。

 

刑事やマスコミの尾行、

彼らが知っていることと、

夫が言うことの食い違い。

そして自分だけが知っている数々の疑わしい物証…。

 

言われてみれば、

昔から夫はコソ泥チックなところがある。

まさか・まさか・まさか…!

 

彼女は、

近所のスーパーでパート勤めをしていましたが、

折しもそんなとき、

職場で雇用改善を求める運動が始まります。

 

いままで、

面倒くさい世事からは距離をおいていた恭子ですが、

家庭のイザコザを忘れんとするばかりに、

この職場闘争に参加するようになり、

いままで抑えていた何かが噴出します。

 

たかがパート、されどパート…!

 

パートの雇用条件の改善を訴えて、

彼女は立ち上がるわけです。

 

そしてそこから、

共産系の団体や弁護士と関わることになったり、

スーパーの店長や上司、

果ては専務や社長とも対立するようになります。

 

一介の主婦が、です。

 

これを皮切りに恭子は、

自分の知らなかった一面が

どんどん開花していきます。

 

引っ込み思案な恭子から、

挑戦的な恭子へ。

 

それは、

もともともっていた素質なのか、

追い詰められた人間の極致なのか、

おそらく両方なんでしょうけれど、

とにかく彼女はどんどん変わっていくのです。

 

職場でも、家庭でも、それ以外でも。

 

さて、

こんなふうに物語は展開していくわけですが、

いくつかの謎かけを我々に問うてきます。

 

1.放火事件の犯人は誰なのか?そして、その目的は?

2.警察は、この事件をどうやって解決するのか?

3.九野vs花村の抗争はどう決着するのか?

4.恭子のスーパーの職場闘争はどう着地するのか?

5.恭子と九野刑事の私生活の行く末は?

 

だいたいこの5つかな、と。

 

5つもあるからハラハラドキドキするのですが、

逆に5つもあって鬱陶しい気も。

 

そして、

それぞれがなんとなく中途半端でした。

 

まず、

1.放火事件の犯人は誰なのか?そして、その目的は?

については、

わりと中盤まで犯人は恭子の夫なのか、

そうじゃないのかが明確になりませんし、

犯行目的については最後までハッキリしない。

 

もちろんなんとなくはわかるんですが、

逆にハッキリしないだけに、

疑念の余白というか、

実は犯人は夫じゃないのかも?

目的は金銭目的ではなかったのかも?

──みたいな余地が結構残されていたりもして、

読者としてはイマイチ尻尾がつかめません。

 

だからこそ、

どうなるどうなる?感は強まるわけなんですが、

いざ終わってみると、

結局犯人はやっぱり夫で、

ちょっといろいろ引っ張り過ぎ・複雑に絡ませすぎじゃね?となる。

 

くどい。

 

その一言です。

 

次に、

2.警察は、この事件をどうやって解決するのか?

について。

 

結局、最後の最後は、

恭子の夫が逮捕されるのですが、

それまでに紆余曲折あります。

 

この紆余曲折が長い…!

 

逆にそれがこの小説の醍醐味なんだろうけれど、

自分としては、ちと面倒でした。

くどいんだよなぁ、やっぱり。

 

暴力団への嫌疑から、

別件容疑で幹部をひっぱったり、

家宅捜索をかけたりもするのですが、

その過程で、

所轄署と暴力団の癒着が発覚します。

 

暴力団が担保としておさえていた車を、

花村刑事の仲介で、

署内の複数の刑事たちが格安で手に入れていたのです!

 

それが本庁にもバレて、

関係者への罰則が通達されます。

しかもこれは警察内でのあるまじきタブーなので、

公にするわけにはいきません。

 

だから、

全員を懲戒免職とことはできない。

一人ずつ、段階的に処分していくしかない。

 

ところがこれを逆手にとった花村が、

自分をクビにするなら、

副署長と九野を辞めさせろ、

さもないと外部に署内の汚職をバラすぞ!と脅してくる。

 

九野がわけもわからず辞職願を提出させられた背景には、

こんな経緯があったわけです。

 

一方で、

放火事件のほうは、

相変わらず恭子の夫がいよいよ怪しくなり、

上層部のほうも、

もはや暴力団は絡んでいないと諦めモード。

(そんなことよりも署内の汚職のほうが大問題!)

 

折しも、

暴力団の息のかかった不良少年が、

「自分がやった」と出頭してきます。

 

これで、

捜査はいったん幕引きとなってしまうのです。

 

九野は焦ります。

 

そんなわけない!

絶対何か裏がある!

あの不良少年暴力団の息がかかってるヤツじゃん!

しかもあいつ花村の素行調査のときに、

偶然出くわした少年じゃん!

(実は素行調査のときに、九野は不良に絡まれていて、

少年らを殴って障害を負わせている)

 

彼は署内で訴えます。

 

──が、

そんなときに、

九野の精神状態が芳しくないことが署内で知れ渡り、

彼は現場から外されるのです。

 

やむを得ず、

彼は密かに及川家を追うことに。

周囲の監視を振り切って、

家族旅行に出かけた及川家を追って箱根まで。

 

しかしその途中で、

真夜中に箱根から東京へ逆走する恭子に出くわし、

あとをつける。

 

恭子は夫が犯人であるという疑惑を消すため、

同じ街で再び放火をしようと企んでいたのです。

 

それを知った九野。

恭子と亡き妻が重なることもあって、

恭子が手をけがすことを辞めさせ、

夫を出頭させて新たな人生を歩むよう説得します。

 

が、

ここであの花村が現れ、

九野に襲いかかってくる。

 

狂気に満ちた花村は、

九野の車にGPSをつけてあとをつけていたのです。

 

乱闘の末、

花村を仕留める九野ですが、

それを横目にみていた恭子が九野を襲い、

狙いを定めていた車に放火して逃走。

 

九野の真意は恭子に伝わらず、

そればかりか自らの計画が邪魔されたと九野を刺し、

放火を終えて逃げるのですが、

予定外のことが起こり過ぎて恭子もパニックになり、

致命傷を与えるまでにもいかず、

九野は署に連絡して応援を頼みます。

 

そして、

及川家(恭子とその夫)への容疑が固まり、

最後に夫は逮捕されるのです。

 

このように、

夫がなかなか逮捕されなかったのは、

暴力団への嫌疑から始まって、

夫の捜査がおざなりになり、

暴力団を追い込む過程で、

あろうはずがない署内の汚職が発覚し、

それどころではなくなってしまった…

という大きな要因があるのですが、

 

実はそれ以外にも要因があって、

先に少しネタバレさせたとおり、

暴力団の息のかかった不良少年の自首が、

さらに真実を暗ませてしまった。

 

この「暴力団の息のかかった」というのがミソです。

 

夫の勤務先企業は、

実は上場を控えていて、

放火事件の当日には監査が入る予定だったのですが、

不正会計の事実もあった。

もちろんうまく帳簿をごまかしているでしょうが、

放火となれば伝票類の証拠も消え去りますので、

会社としては実はラッキーだったかもしれないのです。

 

──が、

社内調査で恭子の夫が怪しいとふんでいたのでしょう。

暴力団が犯人でもなく、

社内に真犯人がいることが明らかになり、

かつその当事者(夫)が逮捕されてすべてを話してしまったら、

放火自体はあくまで個人によるものだとしても、

それに至った経緯からほころびが出てしまったら、

会社としては社会的な信用を失いかねませんし、

上場が取り消しになってしまう。

 

だから会社としては、

恭子の夫が警察につかまらないように、

会社の管理下に置いておくしかない。

 

恭子の夫は、

組織がらみで裏金をつくっていたことにも関わっていましたし、

それで味をしめて自らの懐にも入れていました。

もはや帳簿をいじる程度では、

ごまかしが利かないと踏んだのでしょう。

だから監査が入る前に火をつけた。

 

会社もきっと気づいていた。

だから本社配属に転換し、

仕事は与えず、

ただただ監視下においた。

きっと上場後にでも解雇するつもりだったんでしょうね。

 

そこにゆすりをかけたのが、

当の暴力団というわけです。

ウチじゃないわけだし、

マスコミや警察からの情報で、

どうも身内に犯人がいるらしい。

しかもそれは第一発見者のあいつらしい。

 

おたくの会社、上場を控えているのに大丈夫ですか?

そろそろあの人逮捕されちゃいますよ?

警察OBから手をまわしているようですけど、

確実に逃れる方法を教えましょうか?

3億円、いや2億円でいいですよ。

 

──そうやって取引をもちかけた。

 

そして、

その方法こそが、

暴力団の息がかかった不良少年の自主」だったというわけです。

 

言わば、

この不良少年は人身御供ですね。

 

企業側も利益を優先し、

この取引に応じたのです。

 

このバーターに、

九野は気付いてしまうのですが、

時すでに遅し。

 

なにせ、

企業側の警察OBから、

犯人は自主少年のほうでいくようにと、

すでに手はまわっている。

 

立件後には、

さらに警察OBを受け入れる用意があるとまで表明。

 

だから警察としては、

これ以上、たかが倉庫の一部が燃えた程度の放火で、

捜査を再開させたくもない。

 

もしも、

九野が恭子に刺されて傷害を負っていなければ、

真犯人は解明されなかたでしょう。

 

──そういうオチでした。

 

こうつながるのかー!とか、

そういうことだったのかー!とか、

それなりに感嘆する部分も多いのですが、

 

自分としては、

仕組みとしては良く出来ていると思うけど、

ちょと複雑すぎてくどい感じのほうが強かったです。

 

お次は 

3.九野vs花村の抗争はどう決着するのか?

です。

 

警察をクビになりそうな花村は、

九野を目の仇にして、

彼の失脚を望んでいました。

 

九野が花村の不倫行為をマークしていて、

上に報告していたことが大きな要因ですが、

 

彼の不倫相手が、

むかし九野とも関係のあった女性であることもまた、

怒りを後押ししていました。

 

でも、

その女性本人は、

花村からしつこく付きまとわれるのを嫌悪していたましたし、

いよいよ関係が怪しくなってきたおりには、

彼女は花村のもとから逃げて、

九野のところに駆け込んできたのです。

 

これがいっそう花村の執着に拍車をかけた。

 

彼は女性のあとをつけてきて、

九野の家に転がり込んだことも知っていました。

 

だから、

彼の留守を見計らって侵入し、

女性を刺した。

 

そして、

九野の車にGPSを仕掛けて、

殺害しようと企てます。

 

最後は結局、

九野と刺しちがえて勝てず、

精神鑑定のために措置入院させられて長期拘留…

というオチですが、

 

花村がこうした処遇になった理由として、

・襲われた女性が、警察の超お偉いさんの娘であったこと

(まさか不倫相手として、元刑事に刺されたとは公表できません)

・実は、花村はジャンキーだったこと

(現職刑事がシャブ中毒だったなんてことも、公になるとイタイ)

があるようです。。

 

花村の、

嫉妬と恨みと狂気。

 

実は花村がジャンキーだったなんて、

そんな後出しじゃんけんあるか?!

(もっと早くわかってただろうに…)

っていうのもあるし、

 

花村の内部調査に九野が任命され、

その不倫相手の女性と九野が、

昔関係があったなんていうのも、

過剰な因縁のように思うし、

 

今回の放火事件で、

疑われた暴力団と花村が関係していたのはまあいいとして、

九野と不良少年がつながって、

その不良少年暴力団がつながって、

九野ー不良ー暴力団ー花村のラインが出来上がるのも、

ちょっと出来過ぎじゃね?!って思いました。

 

構成的にうまく出来ているのは事実ですが、

ちょっとリアリティに欠ける。

 

しかも、

襲われた元婦警の女性(脇田美穂)は、

父親が警察のお偉いさんなのはわかったけれど、

 

美穂は父親に勧められて警官になったと言っていた。嘘だなと九野は思った。キャリアが自分の娘を婦警にしたがるはずがない。どんな親子関係があることやら。

 

──なーんて疑問符を投げかけておきながら、

結局なんだったのかわからずじまい。

 

なんとも歯切れの悪い内容でした。

 

これだから、

登場人物が複雑に絡み合いすぎるのって、

自分は好きじゃない。

なんだかんだ中途半端になる部分が多い。

 

最後まで読むと、

各人やその背景が、

こうつながるのかーってのがわかるんだけれども、

 

他方で、

あれはどうなった?

こっちは?

──みたいなところもあって。

 

結末にはあんまり関係がないから、

作者としてもどうでもいいんだろうけど、

だったら余計な布石は残してくれるな…とも思ったりして。

 

私の読みの甘さか?とも思ったのですが、

自分と同じような感想をもった人がほかにもいたようで、

これには安心しました。

 

次の謎も疑問が残ります。

疑問といか、未消化な感じですが。

4.恭子のスーパーの職場闘争はどう着地するのか?

 

先述のとおり、

現実から目を逸らそうと必死な彼女は、

別の現実に必死に抗います。

 

それがパートとして勤めていたスーパーでの雇用条件の改善。

 

彼女は、

共産系の市民団体に身を寄せながら、

二人三脚で率先して活動をおこなってきたのですが、

 

蓋をあけてみたらその団体は、

労働基準監督署へチクったり、

店の前でデモするのを中止するかわりに、

スーパー側から金銭を授受するという結末。

 

要は、

恭子はうまく使われただけで、

彼女もそれに気づいて呆気にとられます。

 

こんなはずじゃなかった。

 

周りの同僚からなかば呆れられながら、

どこか畏敬の眼で見られていた部分もあったのに、

闘争運動で得た結果がこれじゃあ、

彼女も立場がないわけです。

 

でも、

だからといって職場を辞めるわけにはいかない。

 

家のローンはまだまだあるし、

夫の進退だって先行き不透明だし、

とりあえず目の前の現実から目を逸らすためにやってきたわけだから、

ここで仕事も何もかも失って、

毎晩、夫の放火事件について思案するなんて無理。

 

彼女は、

同僚や上司に白い眼で見られながらも、

闘争が決着したあとも、

スーパーで働かせて下さいと懇願します。

 

驚いたのは店側ですが、

クビにすることはできないので、

そのまま雇用を続けるのですが、

社長がそれを知ってウルトラCを提示してきます。

 

彼女の根性を見直したんですね。

 

パートにしておくには勿体ない、

社員として俺の秘書にならないか、

──と。

 

自分としては、

おお、そうきたか!

となる。

 

せっかく頑張ってきたのに、

いかがわしい市民団体にいいように使われて、

正直、可哀想だったので、

いいじゃないこの流れ!

と感じていました。

 

──が、

ここで終わっていたらよかったのに!

 

社長は、

女性としても恭子に惚れ直してしまい、

すぐさま体の関係を求めてくるのです。

 

早速ラブホに直行し、

ヤルかヤラナイかをネタに年収交渉。

ないなぁ…と思いました。

 

そこまで落ちぶれるかぁ、と。

 

いや、

それが現実かもしれない。

 

実際、

シングルマザーで水商売やる人だっているわけだし。

 

この先、

家庭が崩壊することが目にみえていて、

子供二人抱えてどうやって生活していけばいいのやら…

となったら、

プライドだって捨てざるを得ない。

 

だから、

このシーンはリアリティはあると思うのですが、

なんだか救われなくて、

あーあ、まじかぁ…

と残念な気分になりました。

 

最後、

5.恭子と九野刑事の私生活の行く末は?

ですが、

 

終盤で九野が、

恭子の放火現場に居合わせたことで、

一連の放火事件の真相が公になるわけですが、

 

既述のとおり、

九野は恭子に刺されてしまいました。

 

しかし、

致命傷は負っておらず、

一命はとりとめましたし、

 

花村と刺し違えて彼を撃退したことで、

花村は拘束され、

自身が辞職しなければならない線も消えました。

 

彼はその後、

同僚に助けられ入院したのですが、

そこから先は何も書かれていません。

 

どうぞお察しください、という体かな。

 

それはいいです。

 

きっと、

長期療養で現場か配置転換があるかはわからないけれど、

死なずに警察を続けるんだろうな、と。

よかったね、と。

 

問題は、恭子のほうです。

 

彼女は、

九野を刺して放火を起こしてから、

東京から箱根にとんぼ返りしますが、

途中で指名手配され、

車を捨てて移動手段と方向をかえます。

 

最後は、

どこかの漁港で見知らぬおばちゃんにジャンパーをもらい、

(気づかないうちに引火したりで服がボロボロだった)

夫は逮捕されて妻は逃走中…

というところで物語は幕を閉じます。

 

まじかぁ…です。

 

これもそのあとは読者の推測にお任せします、

と言わんばかりですが、

まぁ普通に考えたら、

絶対つかまるよね。

 

いくらおばちゃんから上着もらったところで、

つかまるのは時間の問題かな、と。

 

結局、

ここでも恭子は救われなかったのです。

 

あんなに頑張っていたのに、

なんか可哀想すぎる。

 

いや、でもね、

これもまた現実だと思うんですよ。

 

彼女がここで逃げ切れたら、

そんなにうまい結末あるか?!

となるわけで。

 

でも、

逃げるとか逃げないとかじゃなくて、

もっと別の幸せにみえる人生が用意されていたらよかったなぁ…

と個人的には思いました。

 

恭子も可哀想ですが、

両親が逮捕されて、

何も知らない二人の幼子が、

いたたまれませんでした。

 

この小説は、

現実的な部分と、

出来過ぎでしょ?!という非現実的な部分が交錯していて、

そこがまた中途半端さを増幅させた気もします。

 

小説なら、

わりと多くの人が救われない結末なんて見たくないんでしょうが、

この作品はそれ。

 

しかし、

その結末にこそリアリティがあったという。

 

欲を言えば、

リアリティは別の部分で出してほしかったな、

と思うわけです。

 

なんとも後味の悪い作品でした。。。

 

以上、

こう書くとこの作品、

全然ダメじゃん!っていうふうに見えますが、

 

それは自分が、

印象として悪かったところを中心に指摘したからなだけで、

 

相対的にみたら、

いままで読んだ小説のなかでも、

読みやすくて面白いほうです。

 

あー!どうなっちゃうんだろコレ?!

というドキドキ感は圧巻でした。

 

だからこそ、

ラストの救われなさっぷりが、

いっきに崖から落とされた感じもあって、

ガッカリだったのです。

 

恭子は救われなかったけど、

九野は救われて良かったじゃん!

と思うことにしよう。

 

ところで、

この作品のタイトル『邪魔』ですが、

読み終わってその意味を考えました。

 

自分が最初に思いついたのは、

恭子がラストで九野を襲うシーン。

せっかく腹をくくって、

夫のアリバイをつくろうと、

自身の手を汚すことを決心したのに、

あの九野とかいう刑事が、

最後まで邪魔してくる。

 

恭子にとっての九野は、

事件が起こったときから、

ずっと邪魔な存在だったわけです。

 

でも、

それだけだと短絡的すぎる気もして、

ネットで調べてみたら、

 

「恭子の心に邪悪な魔が差した」ことを示す

と言っている人がいたり、

 

すべての「邪魔」なものを捨ててしまった及川恭子

 をあらわしているという人がいたり、

 

それぞれの登場人物に「邪魔」っていう存在

 がいることが、

タイトルの意味なんじゃないかという人もいます。

 

自分としては、

最後のそれぞれの登場人物に「邪魔」なものがあってという説に

激しく同意ですが、

2番目の恭子にフォーカスした「邪魔」についても、

なるほどなぁと思いました。

 

ただ、

この小説は九野も主人公なので、

恭子だけにフォーカスしたタイトルっていうのも、

なんだかいただけません。

 

なので、

付け加えるなら、

九野もまた、

過去の哀しい出来事が「邪魔」になっていて、

自身の心身ひいては刑事としての行く末に、

悪影響を与えていたのではないか、と。

 

人間生きてると、

いろんな「邪魔」なものが出てきて、

それは他人であったり、

あるいは自分の中にある欲とかしがらみとか記憶とか、

そういうものだったりして、

何がきっかけでそれに気づき、

どう拭い去るのかは人それぞれ。

 

花村のように、

力ずくで追い払おうとしたり、

恭子のように、

追い込まれて捨てきろうとしたり、

九野のように、

ポジティブに生きるため、

何が足かせになっていたのか?にようやく気づいたり。

 

──おそらくそんな複合的な意味が、

このタイトルには込められているのではないでしょうか。

 

ちなみに、

この作品もまた、

ドラマ化されていました。

 

www.tv-tokyo.co.jp

 

奥田作品は、

かなりの確率で映像化されますね、さすが。

 

 

■まとめ:

・ストーリー展開にひきつけられ、やや一気読み気味になった。特に終盤にかけては、ドキドキ感が満載。さすが奥田作品!

・ラストが救われない。きっと現実はこうなんだろうけれど、小説なだけに結末はハッピーエンドがよかった。

・登場人物が多く、複雑に絡み合っていて、その繋がり方がうまいんだけれど、出来過ぎている感もあり、そこがリアリティに欠けていた。複雑すぎて、各人の経過や背景が尻切れトンボ。九野の幻覚はその後どうなったのかとか、謎の不動産屋はどうしたのかとか、花村の不倫相手で刺された元婦警は、いったいどんな父娘関係があったのかとか不透明で、いろいろ中途半端だった。

 

 

■カテゴリー:

ミステリー

 

 

■評価:

★★★★☆

 

 

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