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羽衣ミシン ★★★★☆

小玉ユキさんのマンガ

羽衣ミシン

を読みました。

 

評価は、星4つです。

 

小玉ユキさんといえば、

坂道のアポロン』でブレイクした作家さん。

 

あの作品を読んだときの、

衝撃というか、

感動といったらなかったので、

 

今回、

アポロン以前に描かれたこのマンガも

読んでみることにしました。

 

▽内容:

さえない大学生・陽一(よういち)は、ある日、橋に引っかかった白鳥を助ける。その夜、見知らぬ女の子が唐突に陽一の部屋を訪れ、女の子と縁のない陽一は仰天! 彼女は、「自分は陽一に助けられた白鳥」などというのだが、そんなことって…!?透明感と潔さに、心ふるえる青春物語。かきおろし番外編「かえりみち」収録。

 

登場人物は、全部で4人。

 

気は弱いけど素朴で優しい陽一(よういち)、

白鳥の女の子・美羽(みわ)、

陽一の幼馴染でネットショップのオーナー・糸織(しおり)、

そのネットショップのニットクリエーター・沓澤(くつざわ)。

 

アポロンも、

主要人物はボンとセンとりっちゃんの3人で、

こっちのキャラクターも抜群によかったけれど、

今回のキャラも、

それぞれ個性的でピュアでよかったです。

 

彼女の作品に出てくるキャラクターは、

みんないいヤツが多い。

 

といっても、 

100%いいヤツっていうわけではなくて、

それなりに妬んだり僻んだりするところもあって、

それがまた人間らしくていいと思います。

 

そういう内面の妬みとか僻みと向き合って、

どうにかしていくのが人間というもの。

 

見て見ぬふりをして通り過ごすこともあれば、

ぐっと耐えて乗り越えることもあったり、

ときには予想もしないところで誰かに助けられたり…。

 

この漫画もまた、

そういった人間の機微というか、

葛藤とか他人とのかかわりあいとかが、

繊細に描かれていて、

よく出来ているなぁと思います。

 

ストーリーは、

鶴の恩返しがモチーフになっているのですが、

あれと違うのは、

「絶対に中を覗かないでください」

といった条件がないこと。

 

鶴の恩返しでは、

機を織る姿を見ないことを条件に、

美女は人間界に留まり、

それを亭主がうっかり見てしまったがために、

別れなければいけないという結末なので、

 

ある意味、

約束を破ったお前が悪い!

と男性のほうを非難することができるんですが、

 

こっちは違う。

 

最後は、

美羽の姉がやってきて、

無条件に美羽を連れ戻しに来ます。

 

陽一は、

ずっと美羽と暮らせるものと思っていて、

まさに幸せの絶頂にいたのに、

突然、彼女は姿を消してしまう。

 

なんの約束もしていないので、

仕方ないっちゃ仕方ないんだけど、

 

こっちはもう、

陽一かわいそうだな、オイ…

っていう結末でした。

 

結局、

美羽との出会いは、

一冬の良き思い出で終わりということ。

 

それがとてもせつなかったです。

 

でも、

美羽が来たことで、

陽一は橋をつくるという夢をかなえることができたし、

 

沓澤も糸織も、

お互いにとって大事な存在だということがわかって、

結ばれたわけで、

 

彼女を取り巻くまわりの世界は、

確実に「いい方向」に進んだともいえます。

 

幸せを運ぶ白鳥の少女。

 

──それが美羽だったというわけです。

 

私が好きなシーンは、

ミシンをもらった美羽と、

帰宅途中の川の土手で、

陽一がそのミシンを美羽にかわって持つところ。

 

純情な美羽に、

陽一はなぜか突然、

自分の夢を語ってしまいます。

 

陽一:

俺 橋 大好きなんだ

いつか自分で設計した橋を架けるのが夢なんだ

 

彼は、 

自分の言ったことが恥ずかしくなって、

 

い いや

それだけなんだけど

 

と顔を赤らめてしまう。

 

それに対して、

美羽がどう反応するかと思いきや、

 

美羽:

じゃあ私の夢は

その橋を見ることです

 

と返すのです。

 

陽一、ビックリ。

 

私も、ビックリ。

 

なんだこの素敵なセリフ?!

 

そして、

陽一は美羽の手にあったミシンを奪います。

彼女にかわって重いミシンを持とうとするわけです。

 

そのときの陽一の心の声が、

また素敵すぎる。

 

美羽さん俺 こんな気持ちはじめてで

喜びと感動で飛んでしまいそうだから

ミシンくらいの重さがちょうどいいんだ

 

一見、

めちゃくちゃ気障なセリフなんだけれど、

 

全然そう思わせない、

というか

むしろキュンとなってしまうのは、

 

 陽一のキャラクターのせいもあるし、

作品全体に漂う気品のせいもあります。

 

これはもう、

作者の腕によるところとしか言いようがありません。

 

このシーンこそ、

『羽衣ミシン』という

タイトルを象徴するクライマックスだった気がしています。

 

先述のとおり、

最後は哀しいんだけれども、

何とも言えない切なさと清らかさが残りました。

 

美羽がコンビニの唐揚げを食べて、

吐いてしまうところも、

ユーモアがあってよかった。

共食いだもんねぇ…。笑

 

涙あり・笑いあり・人間くささもあるのに、

なぜか気品あふれるピュア・ストーリーでした!

 

 

■まとめ:

・『坂道のアポロン』ばりに、登場人物のキャラが秀逸。個性的でピュア、人として誰もがもつような妬みやひがみも描いていて、人間くさくて良い。

・キュンとなってしまうセリフやコピーが所々にあるが、気障な嫌らしさをまるで感じさせないところがすごい。涙あり・笑いあり・人間くささもあるのに、ピュアな気品が溢れている作品。

・ハッピーエンドではないけれど、哀しさ・切なさと同時に、なんともいえない清らかさ・すがすがしさを感じる。

 

■カテゴリー:

少女マンガ

 

■評価:

★★★★☆

 

▽ペーパー本は、こちら

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Kindle本は、こちら

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