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プラネテス  ★★★★★

幸村誠さんのマンガ

プラネテス全4巻

を読了しました。

 

評価は、星5つです。

 

いやー、面白かった!!!

そして、この作者すごい。

 

笑いあり涙あり、

夢だけじゃなく絶望もあって、

今年読んだ漫画のなかでは1,2を争うくらい

よかったかもしれません。

 

台風で一歩も外に出られらなかった日曜日でしたが、

このマンガのおかげで、

とても良い暇つぶしができました。

 

▽内容:

時代は2070年代(2075年以降)。人類は宇宙開発を進め、月面でのヘリウム3の採掘など、資源開発が商業規模で行われている。火星には実験居住施設もあり、木星土星への有人探査計画も進んでいる。毎日、地上と宇宙とを結ぶ高々度旅客機は軌道上と宇宙とを往復し、宇宙ステーションや月面には多くの人たちが生活し、様々な仕事をしている。しかし、長い宇宙開発の歴史の影で生まれたスペースデブリ(宇宙空間のゴミ。廃棄された人工衛星や、ロケットの残骸など)は軌道上にあふれ、実際にたびたび旅客機と衝突事故を起こすなど、社会問題となっていた。
主人公のハチマキは宇宙で働くサラリーマン。主な仕事は宇宙のゴミ「デブリ」の回収作業。いつか自分個人の宇宙船を所有することを夢みている。ゴミ拾いは大事な仕事だと自分を納得させつつ、当初の夢と現実の狭間でこのまま現実を受け入れるか、それとも夢を追い求めるか思い悩む。

 

この作品、

ずーっと気になってはいたんですが、

なかなか読む機会がなく、

結局、

いまごろになって読んだわけですが、

いやーすごかった。

 

何がすごいって、

まず、

よくこんなハナシ思いついたな、

っていう作者の想像力

 

宇宙のことに精通しているし、

本当によく調べたんだろうなって思います。

 

去年(2013)のアカデミー賞で最多7部門を受賞した

ゼロ・グラビティ』という映画を観ましたが、

 

このマンガの登場人物たちが就いている

デブリ回収作業」というのは、

不要になった衛星やロケットの残骸など、

いわゆる宇宙のゴミの清掃回収屋なんですが、

 

まさに『ゼロ・グラビティ』でも描かれていたような、

宇宙空間で危険と隣り合わせになりながら、

体力勝負・気力勝負・知力勝負の仕事なんだろうなぁ…

なんてことを思いながら読んでいました。

 

この作品が書かれたのは

1999年~2004年ということですから、

もう10年前のマンガになるわけですが、

ゼロ・グラビティの映画なんかよりずっと前に、

作者は宇宙空間での「仕事」を

ドラマ化していたことになります。

 

宇宙開発技術なんていうのは、

当時からそれ相当に発達していたとは思いますが、

それでも10年も前に、

宇宙ゴミの社会問題やその危険性に着眼し、

それらを回収する「仕事」を

テーマとして扱ったその発想には、

ただただ感嘆するばかりです。

 

ちなみに実際、

岡田光信さんという企業家が、

2013年にASTROSCALEという会社を立ち上げ、

この宇宙ゴミの問題に

世界で初めて取り組んでいるそうです。

 

そしてそんなハナシを、

読者を惹きつけるように、

読み応えあるストーリーとして紡いでいく構成力もまた、

素晴らしかった。

 

このマンガは、

PHASE1、PHASE2…というふうに、

1話ごとにストーリーが完結しているのですが、

 

それぞれのストーリーは時系列的につながっていて

(一部、回顧的なPHASEもありますが)

話はどんどん進んでいきます。

 

最初は、

なんだか話がそこで分断されるようで、

そこまで引き込まれなかったのですが、

PHASEが進んでいくうちに、

どんどんデブリ宇宙ゴミ)のこととか、

それぞれの登場人物のキャラクターがわかってきて、

気づいたら自分が次のPHASEを気にしている…

みたいな感じになっていました。

 

こういう編成の仕方というか、

話の持って行き方とでもいうのでしょうか、

結構、大事だと思います。

 

これによって自分は、

作品への引き込まれ方が結構左右されるので。

 

構成というところでいうと、

登場人物のキャラ設定もよかったです。

 

主人公のハチマキをはじめ、

それぞれが個性的で、

嫌らしさがない。

 

嫌らしさがないというのは、

人間的にダメなところ・良いところ、

陰のところ・陽のところ、

強いところ・弱いところを

それぞれ持っていて、

決してどちらかに偏ってはいない

という意味です。

 

フィクションの世界ではよく、

こんなヤツいるかよ?!

って思う登場人物がいますが、

 

それはフィクションなんだから

仕方ないことではあるとはわかっていても、

 

ウソつけこの野郎!

と毒づいてしまったり、

 

どうせ虚構なら、

思いっきりエッジの効いたキャラ設定をしろよ!

とか思ってしまうこともあったりして、

 

自分でも厄介だなーと

ときどき思います。

 

要は、

ただ優しいだけのキャラとか、

ただ暗いだけのキャラとか、

そんな偏った人間ばっかのドラマって、

つまんないなと思うわけです。

わかりやすけどね。

 

そういう意味では、

主人公のハチマキも、

豪快な女船長のフィーも、

冷静で寡黙なユーリも、

一見、天真爛漫なタナベも、

個性としての偏りはあっても

人間としての偏りはなくて、

そこが良くも悪くも人間らしくて、

みんないいと思いました。

 

以前、

坂道のアポロン』というマンガを読んで、

めちゃくちゃ感動しましたが、

あのマンガの登場人物たちもそんな感じでした。

 

逆に、

ゼロ・グラビティ』のほうは、

私は酷評していて、

 

無理やり家族ネタを結びつけて、ヒューマンドラマっぽく仕立てあげており、下手に感動させようとしているかのような感がバレバレでいやらしかった。

 

なんて書いているんですが、

 

家族ネタを結びつけてるのは、

この『プラネテス』も同じなのに、

なんでこんなにも印象が違うんだろう?

と考えてみたら、

 

ゼロ・グラビティ』は、

人物の生い立ちや

それまでの特徴的な出来事に関する背景描写が

荒っぽかったのに対し、

 

プラネテス』のほうは、

そこをすごく丁寧に繊細に描いていた

と思います。

 

だから、

ゼロ・グラビティ』のような無理やり感がなかった。

 

作品の構成において、

ストーリーの組み立て方・描き方、

キャラの設定というのは、

なかなか重要なポイントになってくるのではないでしょうか。

 

それによって、

話がどのように観客・読者に入っていくか、

かわってくると思います。

 

私は、

この作品の良さの1つに、

主人公たちの仕事を通じての人間関係というか、

彼ら個々人の感受性に満ち溢れたところが、

丁寧にそれとなく描かれていることが挙げられる

と思っているのですが、

 

自分はあまりヒューマンヒューマンしたもの、

つまり、

お涙頂戴的なものは得意ではありません。

 

猜疑心が強いので、

そういうものを見ると、

またまた~

その手に乗るか!

と思ってしまう。

 

ある意味、

エモーショナルなものには

流されない自信があるのですが、

 

この作品は、

未来の宇宙開発をテーマにした

単なるSFかと思っていたら、

実はヒューマンドラマじゃん!

みたいなオチで、

 

最後には完全に、

自分も感動全開でした(笑)。

 

それは、

(作者が意図してか意図せずかはわかりませんが)

感動を押しつけようとするような

ストーリー展開を見せなかったし、

 

それは、

そこにわざとらしさを出さないように

丁寧に緻密に描いていたからからかもしれませんが、

 

丁寧に描くといっても、

すべてを言葉にはせず

読者に「行間を読む」ような作業をさせて、

心で感じさせる。

 

それはもう、

繊細な繊細な紡ぎ方です。

 

この繊細な描き方は、

先の『坂道のアポロン』も同じでした。

 

ところどころに、

宮沢賢治の詩が引用されていたのも、

このマンガが

情緒的な作品感を醸し出す一因ではありますが、

 

そういった詩のように、

「行間を読ませる」部分が

ところどころに散りばめられていて、

なんだかわからないんだけれど、

心がジーンとなるシーンが

何度かありました。

 

絵もよかったですね。

細かい情景にも手を抜かず、

すごくリアルに表現されていました。

 

このマンガ、

ところどころカラーで印刷されています。

 

4巻のPHASE25(光の速さで45分)の冒頭もそれで、

人類初の木星到達に挑むフォン・ブラウン号が

どんどん木星に近づいていくところから始まるんですが、

 

宇宙空間に瞬く小さな木星が、

本当に「瞬いて」いるかのように

輝いて見えるのです。

 

それはカラー印刷の技術によるものでしょうけれど、

もうすでに自分が

宇宙にいるような気になっているからかもしれない。笑

 

何度もページを指でこすって、

これどうなってるんだ?

どんな仕掛けになってるわけ?

と確かめてしまいました。

 

私がよかったなと思うシーンは、

いろいろありますが、

ここでは4つ残しておきたいと思います。

 

1.

休暇で実家に帰省していたタナベが、

突然やってきたハチマキと一緒に、

また実家を離れて職場にかえっていくときのシーン。

 

彼女は親に捨てられ、

幼いころは自閉症を患っていましたが、

血は繋がらずとも、

温かい両親のもとで養子として育てられ、

デブリ回収員として、

ハチマキやフィーやユーリと職場を共にしていました。

 

彼らは常に死と隣り合わせなので、

有事の際にそなえて

遺言書を船内にストックしているわけですが、

ふとタナベの遺言書を見つけて、

勝手に見てしまったハチマキ。

 

そこには書きかけの文字が1つあって、

ペンでぐちゃぐちゃと消されていました。

 

タナベの実家を出て歩きながら、

ハチマキはタナベにそのことを白状し、

謝罪します。

 

ハチマキ:

いい両親だなタナベ

 

…DS-12号でお前の遺書を見つけたよ

無断で読んだ

だから…謝ろうと思って…

悪かった

 

そしてタナベは、 

封が切られた自分の遺書を手渡され、

まじまじとそれを見つめて

それから涙をツーっと流します。

 

タナベ:

書きたいんですよ

 

わ 私 頭悪いから

うまく書けないんですよ

 

ありがとうとか!

さようならとか!

ごめんなさいとか!

 

どっ どうして私が…

宇宙へ行くのかとか…

 

愛してるのよ

何もかもみんな

愛してる

だから…

 

そうやって涙ながらに話すタナベを、

ハチマキは抱きしめて言うわけです。

 

ハチマキ:

わかってる

もうわかってるから大丈夫

 

…なんだろう、

…なんなんだろうこのシーン。

 

なんで彼女は宇宙に行ったんだろう。

そしてハチマキは何がわかったんだろう。

 

血がつながっていないとはいえ、

あんなに優しい両親がいるのに、

なぜ彼女は、

遠い宇宙で働くことにしたのか。

 

ハチマキの母親が、

 

よい宇宙船員の条件は

必ず生きて帰ってくること

 

といっていましたが、

ヒントはここにあるのかもしれません。

 

あえて日常から離れた場所に身をおくことで、

ふだん自分が日常の世界で気付いていなかったり、

あるいは薄まってしまった感覚を

取り戻そうとしているのかもしれません。

 

それは日常から遠ければ遠いほど、

エキサイティングであればあるほど、

孤独であればあるほど、

反比例して日常に映り返ってくる。

 

たとえばそれは、

自分が誰かを愛していたり、

愛されていたりという確認作業でもあって、

 

タナベが取り戻そうとしていた日常の感覚というのは、

この確認作業なのかもしれない

と私は思いました。

 

自分が親に捨てられた過去のせいで、

いつまでも愛に飢えていて、

いつまでも不安だからこそ、

 

彼女は「自分が帰る場所」をずっと探していて、

わかってはいるけど、

「やっぱりここにいていいんだ」と

いうことを確かめずにはいられない。

 

それは親元から離れていればいるほど、

危険であればあるほど、

孤独であればあるほど、

「自分の帰る場所」=愛の深さが身に沁みる。

 

そういうことなのかなと思います。

 

私たちが旅行とか行くのは、

旅先で非日常が味わいたいからだけじゃなくて、

そうした非日常を味わうことで、

逆に日常のありがたみとか素晴らしさとか、

そういうものを

無意識に再確認したいからなのかもしれません。

 

あーやっぱり家っていいな、

日本ってやっぱ最高だな、

そう思える(思いたい)からまた旅に出る。

 

以上は、

私の勝手な解釈ですけれども、

 

読んでいる最中は

こんなふうに頭で解釈しようともせず、

なんとなくジーンときてしまったわけで、

それがこの作品の

「心で感じさせる」という側面です。

 

2.

いっきに距離が近づいた二人が、

その後、付き合うことになり、

結婚するシーン。

 

お互いの仕事の合間に

ちょこちょこ会うのがオレ達のやり方になった

なんでもないことをたくさん話す

それで二人共十分に楽しい

 

ちなみに今日のお題は

「宇宙に関係のあるもの」だ

 

といって、

ふたりは「宇宙しりとり」を始めます。

 

ハチマキ:

けんばん…ハーモニカ!

 

タナベ:

かみのけ!

 

おいおい、

これのどこが「宇宙に関係あるもの」なんだよ!?

ってツッコミたくなりましたが、

読んでいるそのときは、

あんまり気になりませんでした。

 

なぜなら、

次のやりとりにすべてもって行かれたから。

 

ハチマキ:

まーた「け」かい!

 

と愚図るハチマキ。

 

タナベは観念しろと言わんばかりに

こういいます。

 

タナベ:

もう(「け」で始まる言葉は)ないでしょ?

 

しばらく間をおいてから、

ハチマキは「…あるよ」と答えます。

 

そして、

彼がそのあとに発したのは、

なんと…!

 

ハチマキ:

結婚しよう

 

えーーーー!

どんな宇宙プロポーズだよ!?

と思いつつ、

まじかーーーー!

そう来たかーー!

と感動。

 

突然のことに驚いて

言葉が発せずにいるタナベに、

ハチマキは「う」だよ?と促します。

 

そして、

プロポーズは成功!

 

タナベ:

うん

 

ハチマキ:

よしゃおまえの負け

 

なんじゃこのシリトリ!

なんじゃこのプロポーズ!

とニヤニヤしながらも、

キュンキュンするこの甘酸っぱさ!

 

いやーすごいね。

 

この真似をしてプロポーズした男性も

なにげにいるんじゃないか…?

 

3.

謹慎処分を受けて地球に帰還したフィーが、

バイクで暴走して自損事故を起こし、

壊れたバイクを押しながら、

夜な夜な帰路を歩むシーン。

 

彼女は、

アメリカvs共和国の宇宙戦争で、

ケスラー・シンドロームが発生し、

宇宙空間がゴミだらけになることを懸念。

 

いままでは大人の感覚で、

見て見ぬふりをし、

上のいうことに従ってきた彼女でしたが、

 

地球にのこしてきた長男(アル)の

反骨心むき出しの眼が忘れられず、

アメリカ軍の宇宙機雷へ体当たりして

機雷の爆散回避を試みます。

 

そして参戦派はもちろん、

反戦派からの組織的な支持も拒否し、

軌道からいますぐ退却しろという

上からの指示も無視した行動にでます。

 

彼女にとっては、

国と国との利害がどうだから戦争がどうだとか、

そんなことはどうでもいい。

 

ただ、

この戦争によって宇宙にゴミがばら撒かれ、

それも何年も何十年かかっても回収できないような

莫大な量のゴミがでるのは、

彼女の仕事場に土足で踏み込んで

荒らしまくるような行為なわけで。

 

同僚の一人は、

そんな彼女を見て、

 

オレらの仕事は

ハナっからさ

勝ちのないケンカなんだよ

勝てないケンカに

ムキになっていいのはガキのうちだけさ

 

というふうに嘲りますが、

 

フィーはその「ムキ」さこそ、

いつのまにか忘れてしまった

己の信念であることを、

反抗期の息子を通じて思い出すのです。

 

誰の言ってることもまちがっちゃいない

誰が正しいってわけでもない

仕方ないことだ

否定はできない

でもそれで戦争が始まろうとしている

たぶん大人になる過程を経るうちに

何かが鈍くなってしまうんだろう

成長したいとか立派になりたいとか

そう思ってるうちに忘れてしまう感覚がある

私もそれを忘れた一人だったんだろ?

ねぇアルバート

 

フィーの体当たり防御は

あえなく失敗に終わり、

彼女は謹慎処分を言い渡されて地球に戻ります。

 

母親として家事もこなしますが、

その家事も慣れないせいでうまくかず、

ムシャクシャが収まらないフィー。

 

バイクで爆走しつつ、

憂さ晴らしをしていたところ、

ついに事故を起こしてしまうのです。

 

命は取り留めましたが、

バイクがぶっ壊れ、

やっと見つけたガソリンスタンドでは

取り置きを頼むも断られ、

仕方なく重いバイクを引きずって、

我が家までゼーゼーハーハー言いながら帰るわけです。

 

その夜道、

彼女は流れ星を見つけてこう呟きます。

 

ああそうか

何故ひとは流れ星に願うのかわかった

こんな時

こんな夜

つい空を見上げてしまうからなんだ

 

ため息がでてしまうほど凹んでしまうときや、

絶望するくらい落ち込んでしまったとき、

私たちは何故か空を見上げる。

 

なぜ上を見るのかはわかりませんが、

下を向いているのは疲れたから、

下ばかり向いていても仕方ないから、

おそらくそんな感じなのかと。

 

そしてその上を向いた一瞬に、

星が流れていたのを見つけたら、

かなわないとは思っていても、

希望をそこに見出したくなるから。

 

フィーのつぶやいた言葉には、

そんな意味が込められているのでしょう。

これも深い言葉だよなぁと思いました。

 

4.

あとはやっぱり最後のシーン。

ハチマキたちがついに木星に到達します。

人類として初めてそこに足を踏み入れた第一声は、

全世界で中継されるのですが、

その第一声を荷ったのはハチマキ。

 

オレ…ぼくは

木星往還船フォン・ブラウン号乗組員

星野八郎太です

 

いま木星にいます

あなたのいるところから見えますか?木星

 

今日は

思ったことをそのまま話します 

 

彼は、こう続けます。

 

長いですが、

ハチマキの成長とか苦労とか、

いままでどんな思いをしてきて

どんなことを感じ取ったかとか、

そういうのがぎゅっと集約された

一番のヤマ場なので、

そのまま引用します。

 

木星 往還船に乗る前のオレは

デブリ回収をやってました

宇宙のゴミを拾う仕事です

 

仕事仲間はみんないいヤツだったけど

オレはあんまりあの仕事が好きじゃなかった

 

キツイしあぶねェし

人では足りねーし

何より地味だ

 

金のためにやってんだ

こんなのは今だけだと

よく自分に言い聞かせていました

 

金を貯めたら宇宙船を買って

この宇宙を自由に駆けまわるんだ

宇宙船があればどこへだって行ける

本当の本当の自由だ

 

でもスッゲーがんばんないと

宇宙船なんか手に入らない

マジにならないとダメなんだ

 

だからオレは

それ以外のことはいっさいしないと決めた

それ以外のことを考えるのもやめようと思った

 

でも

でも

愛し合うことだけが

どうしてもやめられない

 

いいか悪いか知らないが

とても強い力だ

核融合なんて目じゃない

人間はスゲー力を持ってんだ

素晴らしいことだし 

おそろしいことだとも思う

オレはこの力の使い方

もっとうまくなりたいんだ

 

だから…

地球に帰ったら

またデブリ屋をやろうと思う

やっているときは気付かなかったけど

あの仕事はいい仕事だ

 

ユーリ

フィー

もう5年ほどしたら帰る

そしたらまた仲間に入れてくれ

おわり

 

はぁ…。

いい言葉だ。

 

愛の力は素晴らしいけれど、

おそろしくもあるって

すげーこと言うなと思いました。

 

でも、

使い方を間違えれば、

本当にそうかもしれない。

 

そして、

あれだけ夢見た「自由」への渇望を捨てて、

彼は結局もとの鞘にかえっていくという結末。

 

夢を諦めたわけじゃないかもしれないけれど、

夢は夢のままでそっと持っておけばいいっていうことに

自分で踏ん切りがついたんだと思います。

 

よく、

何かを乗り越えたら次のステージへとか

出世とかキャリアアップが素晴らしいことなんだとか

私たちは耳にタコができるくらい聞かされていますが、

 

振り出しに戻ってもいいじゃない

っていうのがこのマンガの結末で、

自分はそれに痛く感動しました。

 

頑張って努力してガムシャラに励んだり、

ちょっと無茶して背伸びしたりして、

金銭的なリターンや地位や肩書きを得るわけですが、

それで満足すれば、

その人にとっては「成長」なんだろうし、

 

とはいえやっぱり、

ここまで無茶しなくても前の自分でいいかな

と気づいて納得できれば、

それだって

その人にとっては「成長」と言えるわけです。

 

いろいろ経験して悩んで出した答えというのは、

本当に価値のあるものなんだろうな

と思える一言でした。

 

このマンガ、

アニメにもなっているらしく、

DVDも出ています。

 

これ観たい!

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バンダイチャンネルで観れるっぽいので、

時間あるときに観ようと思います。

 

ちなみに、

公式HPもあります。

 

作者の幸村さんが、

1巻のあとがきで

こんなことを書いていたのが印象的でした。

 

中国で紀元前2世紀頃に書かれた「淮南子」という書物に次の句があります。

往古来今これを宙といい、

四方上下これを宇という。

これが「宇宙」の語源だそうです。過去も未来も、どこもかしこもひっくるめて「宇宙」。地球も宇宙。人間はみんな筋金入りの宇宙人です。だから、大気層の内側だけが宇宙じゃなくて、しかも人間の世界はそこだけ、なんて考えるのは哀しいと思います。それがこの漫画を描き始めた本当の動機かもしれない。

 

作者のこの「想い」は、

漫画のなかでも描かれていて、

 

宇宙のなかでしか得られない、

宇宙にしかない「自由」を求めて、

ガムシャラに突き進むハチマキが、

 

相方の不遇の死に遭遇したり、

自分とは真反対の性格のタナベに惹かれていったりして、

ちょっとずつ変わっていくわけですが、

 

そのときのハチマキの言葉に、

作者の想いが代言されていました。

 

この世に宇宙の一部じゃないものなんてないのか

オレですらつながっていて

それではじめて宇宙なのか

 

という言葉や、

 

「ああこんなオレでも宇宙の一部なんだな」

最初にそう感じたときは感動しました

今までのオレの怒り

不安や焦りも

つまらない小さいことのように思えた

でも

同時に生きることそのものが

つまらなくなっちまった

 

ようやく知りました

オレ一人で宇宙と向き合うのは危険なんだ

宇宙服ごしに

死の世界と隣り合って暮らしていく方法

 

独りじゃないから

オレは生きていられるんだ

 

という言葉。

 

宇宙は手に入らない、

無限のもの。

ずっとあっちがわにあるもの。

 

だから、

頑張ってあっちにたどり着きたいと思い、

ひとりガムシャラになって突き進んできたハチマキ。

 

でも、

本当は宇宙はあっちがわにあるんじゃなくて、

こっちがわにあった。

というか一部だった。

 

限りなく無限のなかの、

小さな小さな存在。

 

自分だけじゃなくて、

みんながそう。

 

だから、

一生会うこともない人だっているわけだけど、

お互いの引力を上手につかって

支え合って生きていこうや、と。

仲間って素晴らしいものだぜ、と。

 

そんな感じでしょうかね。

 

■まとめ:

・未来の宇宙開発をテーマにした単なるSFかと思っていたら、実は宇宙の仕事を通して人や組織とぶつかったり理解しあったり、夢を追っかけたり向き合ったりする、ヒューマンドラマ。

・ストーリーの想像力や話の組み立て方、絵のタッチなど、どれをとっても最高。構想にあたっての知見の深さや情報収集力の高さ、話を組み立てるうえでのキャラ設定や人物の背景描写の緻密さ・丁寧さ。すべてを言葉にはせず、読者に「行間を読む」ような作業をさせて、心で感じさせるところが随所にあり、不覚にも感動。

・特によかったシーンは、4つ。タナベの帰省と遺書のシーン、ハチマキのプロポーズのシーン、フィーがアメリカ軍の機雷に体当たりするまで・してからの話、人類初の木星到達を遂げた第一声をハチマキが演説するシーン。最後の「愛し合うことだけは、やめられないんだ」は名言。

 

■カテゴリー:

マンガ

 

■評価:

★★★★★

 

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