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孤独のグルメ ★★★☆☆

久住昌之さん原作、谷口ジローさん作画のマンガ

を読み終えました。
 
評価は、星3つです。
 

▽内容

主人公・井之頭五郎は、食べる。それも、よくある街角の定食屋やラーメン屋で、ひたすら食べる。時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき、彼はつかの間自分勝手になり、「自由」になる。孤独のグルメ―。それは、誰にも邪魔されず、気を使わずものを食べるという孤高の行為だ。そして、この行為こそが現代人に平等に与えられた、最高の「癒し」といえるのである。
個人で輸入雑貨商を営む主人公が一人で食事をするシチュエーションを淡々と描くハードボイルド・グルメマンガ。'94~'96年に月刊誌『パンジャ』(現在は休刊)に連載され、'97年に単行本化、'00年に文庫化。ジワジワと売れ続け、累計10万部を突破したロング&ベストセラーが新装版として登場。

 

孤独のグルメ』と言えば、
一大ブームを巻き起こしましたが、
なんと7月9日から、
また深夜放送するみたいです。
 
 
このドラマ版『孤独のグルメ』は、
2012年に放送が開始して以来、
結構な人気番組になっているんだとか。
 
これまでテレビ東京はネット世代には目もくれず、中年以上をターゲットに、お金をかけず、アイデア勝負の番組作りに徹してきました。そのおかげで今の好調があるわけで、『孤独のグルメ』はその象徴ともいえる。口コミ人気で、中年サラリーマンだけでなく、結果的にネット世代の支持まで得ています。
 
孤独のグルメ』は深夜枠なので、数字(視聴率)そのものは1ケタ台ですが、DVD化したり関連のアプリを出したりと“周辺”でも稼いでいます。実際、テレビ東京のネットやモバイル絡みの売り上げは、この1年で3割以上伸びている。
 
ドラマ版は、
制作スタッフが毎回お店を下調べして、
撮影交渉し、
映像化しているそうです。
 
私も数回観たことがありますが、
最初は、
なんだこのドラマ、パッとしないな…
なんて思っていたんですが、
 
観終わったあとに、
得体の知れない後味が残っていて、
その後味は、
決してマズイものではない。
 
なんだろう?この感じ。
 
ウマいウマいとは言うけれど、
ミスター味っ子的な飛び上がりっぷりはないし、
ずっと主人公の抑揚のない独り言を聞かされて、
今すぐ食べたくなるような鷲掴み感も少ない。
 
パッとしない。
 
なのに、
変な満腹感はある。
 
不思議でした。
 
良くも悪くも、
主人公と一体化している感じがするのです。
 
今回、
マンガも読んで、
私なりにその理由を考えてみたのですが、
3点あるかなと。
 
まず、一点目。
主人公・井之頭五郎の孤独なつぶやきに、共感できる。
 
誰かと食事するならいざ知らず、
一人で食事するときって、
みんな心の中で、
実はいろいろ呟いていると思います。
 
あー、腹減ったな…
今日、何食べよう?
から始まって、
 
飲食店なり小売店なり、
これから胃袋に入れるためのブツを求めてお店を探すわけですが、
そのときもまた、
昨日の夕飯が魚だったから肉かな?
この店はじめてだな緊張するな、
だったらいつものとこにしようかな、
いや待てよ面倒だからコンビニでいっか、
…などなど。
 
ありとあらゆる思念が交錯し、
頭の中で自問自答が繰り返されます。
 
要は、
ぐるぐる思いが駆け巡り、
ブツブツ独り言を唱えている状態。
 
たまにそこに、
テレビの音声や中継が入ったり、
他のお客さんの会話が耳に入ったりして、
(食事以外の)雑念が混入。
 
私たちは、
それに対しても反応して、
ぐるぐる思い、
ブツブツ唱えています。
 
自分が意識しているかしていないかは、
関係なく。
 
そしてそれは、
料理が出てきたときも、
食べている最中も、
食べ終わったあとも、
ずっと続いているわけです。
 
確かに井之頭五郎は孤独だし、
その声には抑揚もないのですが、
そりゃそうです、
彼の心の独り言を表現しているわけだから。
 
それは実は、
誰もが経験していることで、
みんな心の中では、
彼のようにブツクサ言っていますし、
心の中だけに抑揚はさほどないわけで。
 
そのことに、
視聴者はなんとなく気付いているから、
井之頭五郎に対して、
共感できてしまう。
 
客観的に観ていると、
なんだコイツ、気持ち悪いな…
と思いますが、
どこか井之頭さんに一体化している自分がいるのです。
 
それは、
(内容は別としても)
主人公がつぶやくこと自体やつぶやき方を、
誰もが経験して知っているからだと思います。
 
二つ目は、
料理に関する主人公のつぶやきが、
必ずしも褒めてばかりではないこと。
 
少し(あるいはだいぶ?)落として、
あとでベタ褒めするクチは、
グルメ番組ではよくあるパターンですが、
この『孤独なグルメ』にはそれがない。
 
汚いけど料理は最高!とか、
オヤジが気難しいけど味は絶品!とか、
そんな単純な考察では終わりません。
 
たいして普通だったな…とか、
ちょっと選択間違えたな…とか、
そういうミステイクもちゃんと入れてくる。
 
でも、よく考えたら、
たかが一食でも私たちはいちいち言葉にしていないだけで、
そこにはいろんなハプニング・感想があり、
簡単に美味かった・不味かっただけでは割り切れない、
モヤモヤした印象だって本当は抱いているはずで。
 
そういう意味では、
この作品が描く食後のレビューというか、
井之頭さんのつぶやきは、
リアルに近いと思います。
 
だから、
主人公に知らず知らず自分を重ねてしまう。
 
グルメ番組を見てて、
美味しそうだな〜とそそられることはあっても、
食ったこともない料理に、
共感はできません。
 
でも、
こちらはなんだか自分が食べたような気になったりもします。
(毎回ではないですが)
 
最後のポイントは、
料理以外の何気ない出来事や景色も、
淡々と描いていること。
 
一点目で少し触れましたが、
テレビやラジオの音声、
他のお客さんの何気ない会話、
裏さびれた路地、
汗だくのスーツ…。
 
いわゆる"あり得なさ"が、
この漫画なりドラマにはありません。
 
無いと言いきるのは、
語弊があるかもしれませんが、
とにかく少ない。
 
少なくとも漫画を読む限りでは、
あり得ねーだろ!
って思ったシーンはありませんでした。
 
普通、
何かしらあるもんですが。
 
だから、
余計にリアルで、
主人公と一体化しやすい。
 
普段から、
小綺麗なレストランしかいかないOLさんとか、
ジャンクフード命の学生ならばともかく、
 
いわゆる普通のサラリーマンや、
赤提灯やガード下でも普通に食事をしたことがある大人なら、
一度は見たこと・聞いたことがある風景が広がっていて、
 
この展開ウソでしょ?
というフィクションが少ない。
 
一言で言えば、
身の丈に合ったリアリティみたいなものが定着しているというか。
 
結果として、
主人公と一体化しやすいんですが、
 
リアルすぎて、
主人公がたいして評価してなかったり、
あるいは評価していても、
読んでいるこっちの好みに合わなければ、
その回の作品にはそそられないし、
たいしてこれといった発見・好奇心も湧きません。
 
それが難点です。笑
 
今回は、
漫画で読んだわけですが、
うわー行ってみたいなココ!!
っていうお店が自分は少なかった。
 
しいて言うなら、
吉祥寺の廻転寿司屋と、
赤羽の鰻丼、
それから、
あとがきで久住さんご自身が、
一見さんとして訪ねられた岩手のお店くらいです。
 
評価が低くなってしまったのは、
 
私がこの作品を読んだ目的に、
美味しいところが知りたい的な部分が多少なりともあって、
その結果がうまく得られなかったからだと思います。
 
この作品は、
それを求めすぎたらいけない。
 
自身の美食バイブルにしようとするのではなく、
井之頭五郎になりきることを楽しまなければ裏切られます。
 
自身の食ライフに紐付けるのは、
二次利用というか副産物としてとらえていたほうが賢明だし、
 
純粋に井之頭五郎さんの食ライフと割り切って読んでも、
全然楽しめると思います。
 
井之頭五郎になりきって、
まあまあだな…とか、
店に出会えたささやかな幸せを噛み締めたり、
はたまた店主の横暴な振る舞いに一緒になって憤ったり。
 
漫画の中で、
客の目の前で店員を怒鳴りつけるシーンが出てくるのですが
(板橋のハンバーグ・ランチ)、
 
あの温厚で臆病な井之頭さんが、
食べている途中でお代をテーブルに叩きつけ、
 
人の食べてる前で
あんなに怒鳴らなくたっていいでしょう
 
と店主に言い放ちます。
 
ところが、店主は、
イチイチ文句言うなら、
金なんていらないから出て行け!
と逆ギレ。
 
井之頭さんは怯みません。
 
あなたは客の気持ちを全然まるでわかっていない!
 
モノを食べるときはね
誰にも邪魔されず
自由で  なんというか
救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで…
 
と言い返します。
 
店主は実力行使に出て、
井之頭さんを店から追い出そうとするのですが、
力では井之頭さんのほうが強かったという…。
 
オチは横に置いておいて、
 
このように、
客が食べている目の前で、
バイトとかを叱りつけているシーンって、
私自体も遭遇したことがありますし、
そのとき井之頭さんみたいに行動には出さなくとも、
同じようなことを思ったはずで。
 
言ってみれば、これらは、

"飲食店あるある"なんですね。

 

私は、

この回を読んだとき、

わかるわかる、井之頭さん頑張れー!

と思いましたが、

そうやって単純に井之頭さんに集中しているだけでも

十分楽しめる作品です。

 

もう一度言いますが、

自身の美食バイブルにしようとすると失敗します。笑

 

会社や自宅の近辺のお店がでたらラッキー☆

くらいに留めておくのが良いかなと。

 

巻末に、

原作者の久住昌之さんが「あとがき」を書いているのですが、

これがなかなか面白かったです。

 

この久住さんって、

もともと何している人なんだろう?と思って、

Wiki先輩に聞いたら、

漫画も描くし、

エッセイも書く、

デザインもやって、

音楽もつくる、

…というマルチアーティストでした。

 

「あとがき」を読むと彼の人となりが少しわかるんですが、

たしかに、型にハマった感じがしなかったです。

人の好さというか、

いい意味でのゆるさがありました。


その久住さん、

結構、小心者らしく、笑

知らないお店に入るときはいつも緊張するそうです。


客としての彼の理想は、

粗野で口数少ない野武士。


野武士って…笑。


でも、

なんとなくわかる気がしました。


「野武士の似合うお店」に限って「イイ」店が多い、

という彼の自論も一理あります。


たとえば野武士かガラっと入ってきて、「酒」なんて言いそうな蕎麦屋。これはたいていおいしいよ。
たとえばコンビニに野武士が似合うか。野武士はコンビニには入らねぇよ。


食べもの屋で、おいしい店って、どこかコワイ部分、というか、見えない部分、謎めいた緊張感が漂ってるものだ。たとえば居酒屋だったらいい店って悪酔いしてゲロ吐いたりケンカして大騒ぎになったりしにくい。客に無意識の制御装置が働くようになってる。


これには、

なるほどー!と思いました。


自分のなかの隠れた名店を思い浮かべてみると、

たしかにあの店もあそこも、

野武士がいてもおかしくない雰囲気ってあるなー、と。


彼の”あるあるアンテナ”は、

あまりに王道すぎず、

でも、

誰もがわかるわかると頷いてしまうところを突いてくる。


きっとそこが魅力的なんだろうな、

と私なりに考えてみた次第です。

 

 

■まとめ:

・主人公の孤独なつぶやきに共感でき、そのつぶやきの内容も大げさすぎないところにリアリティーがあり、身近な”飲食(店)あるある”が描かれているのも、余計にリアル。知らないうちに、主人公と一体化してしまう。

・しかし、良くも悪くもリアルすぎて、たいしてそそられなかったり、美味しいところが知りたい欲求には満足のいく回答は得られなかった。

・自身の美食バイブルにしようとしたらダメ。井之頭五郎になりきることを楽しまなければ損する。

 

■カテゴリー:

漫画

 

■評価:

★★★☆☆

 

▽ペーパ本は、こちら

孤独のグルメ (扶桑社文庫)

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Kindle本は、こちら

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