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犬を飼う  ★★★★☆

谷口ジローさん

『犬を飼う』

を読みました。

 

評価は、星3つです。

いや、4つかな?

4つにします。

 

この人の絵は、

最初は苦手だったんですが、

神々の山嶺』を読んでから、

ものすごく好きになりました。

 

内容も、

実体験に基づくぶんリアルでしたし、

飼い犬を喪う「じんわりした悲しみ」と、

ペットに囲まれて生活する「ほのぼの感」も、

すごくよく伝わってきました。

 

犬猫の映画はよくあるけれど、

マンガで、

しかもペットロスを描いて、

これだけリアリティを感じさせる作品ってないんじゃないかな。

 

やっぱり谷口ジローさんってすごいな!

と思いました。

 

▽内容

「たかが犬一匹、しかし、なくしたものがこれほど大きなものだとは思わなかった。そしてタムの死が私たちに残してくれたもの……それはさらに大きく大切なものだった」
谷口ジローが自らの体験にもとづいて描いた、愛犬の最期を看取る悲しくも感動的な日々。生命の重さがいやおうもなく胸を打つ。第三十七回小学館漫画賞審査委員特別賞受賞の名編。
ほかに『そして…猫を飼う』『庭のながめ』『三人の日々』『約束の地』の傑作4編を収録。文芸コミックの決定版。

 

谷口ジローさんといえば、

ちょっと前にTVドラマで盛り上がったこともあり、

孤独のグルメ』を思い出す方も多いと思いますが、

 

私は、

孤独のグルメ』=谷口ジローと知ったのは後からで、

つい最近、

神々の山嶺』を読んだことに始まります。

 

夢枕獏さん原作の山岳小説を、

谷口ジローさんが漫画化したものですが、

これが本当にすごかった。

 

山って生きているんだな、

とマンガなんかで思ったのは初めてです。

マンガなんかで。

 

それくらいリアルで、

臨場感あふれる、

素晴らしいマンガでした。

 

その谷口ジローさん、

他にどんな作品を描いているのかなと思って、

調べてみたところ、

先の『孤独のグルメ』が実はそうだったりもして、

この『犬を飼う』を読んでみるに至った、

というわけです。

 

彼は、

フランスやベルギーのマンガに影響を受けていて、

大友克洋などもそうらしいです)

 

逆にいまでは、

ヨーロッパでも高く評価されている漫画家さんなんだとか。

 

もともと、

ハードボイルドや冒険・動物・SF系のものをお描きになっていたそうですが、

 

このマンガがきっかけとなって、

日常のドラマもマンガにしていくという新境地が拓けたんだとか。

 

彼自身、

あとがきでこのように語っています。

 

「犬を飼う」は、私の狭い漫画表現の間口を拡げてくれた代表的な作品であり、新分野開拓への確かな手がかりとなりました。これは新たな喜びです。

 

実際、

この作品で賞ももらっています。

 

はじめはもっと長く、

それこそ犬を飼いだしてからの思い出を描くつもりだったそうですが、

読切型ということで、

「死ぬ間際」に期間を絞って描いたそうです。

 

当初、私は子犬の頃から死までの長編になる物語を考えていたのですが、読切となるとそうもいきません。思い切って、犬の死ぬ一年間の日々に焦点をあてました。それがかえって物語を凝縮させ、テンポも良くなり、画面にもある種の緊張感を出すことができたのだと思います。

 

あとがきで、

彼は上記のように述べているのですが、

本当にそのとおりです。

 

「よく死ぬことはよく生きることと同じだ」とは言いますが、

あえて死に際の飼い犬のふんばり・看取りに的を絞ったことで、

それまで谷口さん夫妻が飼い犬とどれほど一緒の時間を過ごして来たか、

飼い犬が夫婦の暮らしを豊かにしてきてくれたかが伝わってきます。

 

本来は彼らにしかわからない、

もっと「連続した時間」があると思うのですが、

このマンガは、

誌面上は空白になっているその時間すら、

読者に伝えてくるのです。

 

なんでしょうね、これ。

 

結果としてそうなったのかもしれませんが、

すごいと思う。

 

これも私は、

作者の力量だと思っています。

 

彼はまた、

以下のようにも言っています。

 

作業にとりかかったのは犬の死からまだ数ヶ月余り。描きながら犬の息づかいを感じ、辛くなる時もありました。犬の死ぬ間際、その姿を見て苦しんでいるのかどうかだけが気がかりでした。妻とふたりで何度も安楽死させるべきか悩みました。獣医さんに「ほとんど眠っている状態と同じで苦痛はないでしょう」と聞いてから、私たちは犬が生きようとしている限りできるだけのことはしてやろうと決意しました。

 

実際、

安楽死させるべきかどうか?」というシーンは、

マンガには出てこないのですが、

おそらくそんなことも何度も考えたであろう葛藤も、

ひしひしと伝わってきました。

 

本当にかわいそうなくらい、

リアルに飼い犬の最期が描かれていて、

それは壮絶というか、

たしかにとても重い。

 

でも逆に、

ここまでリアルに描いたからこそ、

たった数ページのマンガでも、

言葉や絵になっていない思いや時間みたいなものが、

読者に伝わってくるのかなと。

 

その昔、

犬とあなたの物語 いぬのえいが』という作品を、

わざわざ映画館で観たことがありますが、

私はペットを飼ったことがないので、

どうにも入り込めなかった。

 

でもこのマンガは、すごい。

 

犬なんか飼ったこともない私でも、

瀕死のタムタムの息づかいに、

心の中で頑張れと言ってしまっています。

 

とはいえ、

ペットロスの実際の苦しみなんて、

わかるわけもないんですけどね。

 

「犬を飼う」の次に収録されていた、

「そして…猫を飼う」もよかったです。

 

こっちは、

猫は死んでいませんが、

どんなにダメ猫のように見えても、

やっぱりママ猫になるとすごい。

 

普段、

私はあんまりこういうことは思わないのですが、

動物って、生命ってすごいんだなー

と傍目からみてもそう思いました。

 

命ってほんとに素晴らしい!とか

そういうことではなくて、

動物の本能とか生命の神秘って本当にあるんだなと。

 

最後の「約束の地」は、

短編の山岳漫画ですが、

これは『神々の山嶺』を読んでしまっているぶん、

感動はうすかったかなぁ。

 

この作品には、

標高の高いところでどうやって生きているんだ?!

という幻の動物「ユキヒョウ」が出てきます。

 

ベン・スティラー主演&監督の、

LIFE!/ライフ』という映画で、

 

プロカメラマン役のショーン・ペンが、

どうしても撮りたい写真があるといって

ヒマラヤにこもって追いかけていたのが、

このユキヒョウでした。

 

このユキヒョウ

もののけ姫」に出てくる「ししがみ様」と重なるんだよなー。

 

それだけ、

神秘的な動物といったイメージを持ったということなんですが。

 

いろいろ、

なかなかじんわりくる短編マンガ集でした。

 

■まとめ:

・「犬を飼う」では、本当にかわいそうなくらい、リアルに飼い犬の最期が描かれていて、壮絶で重い。

・しかし、あえて「死に際」に的を絞り、リアルに描いたことで、たった数ページのマンガでも、言葉や絵になっていない思いや時間みたいなものまで、伝わってくる。

・続編の「そして…猫を飼う」では、動物の本能とか生命の神秘って本当にあるんだなーという驚きがあったし、自分がたかだかマンガでそんなことを感じたのも驚きだった。

 

■カテゴリー:

マンガ

 

■評価:

★★★★☆

 

▽ペーパー本は、こちら

犬を飼う (小学館文庫)

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