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貧困ビジネス ★★★☆☆

門倉貴史さん著
を読み終えました。

評価は、星3つです。

安定したソフトな文体と、
その分かり易さは相変わらずで、
とても読みやすかったです。

個人的には、
目からウロコのような新たな発見(刺激?)が少し足りず、
星3つにとどまりましたが、
まあまあ面白かったです。


▽内容:

底なしの不況に落ち込んだ今、急増する貧困層を食い物にして儲けるビジネスが跋扈している。「敷金・礼金なし」で貧困層を誘い込み、ほんの数日の家賃滞納で法外な違約金を請求する「ゼロゼロ物件」。多重債務者にニセの養子縁組をさせてさらに借金を重ねさせる「リセット屋」等々。なけなしの金をむしりとり、貧困層をさらなる困窮へと陥れる「貧困ビジネス」は、もはやモラルをかなぐり捨てた、日本経済の末期的症状の象徴だ。気鋭のエコノミストがその実態を生々しくレポート。

この本が書かれたのは、
リーマンショック直後の2008年12月で、
刊行自体は2009年なので、

いまこれを読むと、
どうしても過去のことというか、
本のなかで書かれているような悲壮感・緊迫感がいまいちピンと来ません。

それだけ今、
景気は安定傾向にあるということなんだなと思いました。

そもそも「貧困ビジネス」とは、

貧困層をメインのターゲットにして、短期的な利益を追求するビジネス全般 

として定義されていますが、

筆者は、

貧困ビジネス」という言葉が登場するずっと以前から、貧困層を対象としたビジネスは存在していましまた。昔から存在していたにもかかわらず、最近になって「貧困ビジネス」が注目されているのは、貧困層のボリュームの拡大や、従来とは異なる新たなビジネスモデルの登場などによって「貧困ビジネス」が目に見える形で大きく膨らんできたという事情があります。

と述べられています。

書かれた当初は、
アメリカはもとより、
日本そして世界が経済的に混沌し、
すわ世界恐慌か?!的な不安感が蔓延しはじめていたときで(たぶん…)、

貧困層の割合が増え、
膨れ上がる社会不安から、
犯罪チックな貧困ビジネスが横行し、
ついついマスコミもフォーカスしてしまう、
といった負の連鎖が生まれていたのかなと思います。

だから、
「目に見える形で大きく膨らんできた」。

対していまは、
やれアベノミクス成長戦略だ(労働市場は)売り手市場だと、
わりと明るい話題が多くて、
貧困層をターゲットにした「貧困ビジネス」なんて、
もはや一昔前の話なんじゃないの?
と思ってしまうのですが、

景気回復が見られているとはいえ、
所得格差が顕著になりつつあるいま、
貧困層のボリュームは実はいうほど減ってはいないんじゃないかと思うわけです。

だから、
敷礼ゼロの「ゼロゼロ物件」も、
戸籍をリセットして手数料と融資成功報酬を得る「リセット屋」も、
途上国ではびこる「臓器ビジネス」も、
やっぱり需要がある。

市場の自由化が世界規模で拡大するなかで、
富める者(層)が増えれば
貧しい者(層)も増えるわけで、
貧しい池にも魚がいる限り、
そこで釣りをしてうまみを得ようとする人たちは必ずいる。

自分のことに置き換えてみたら、
いまはよくても、
老後はひょっとしたら、
年金(すらもらえない)貧困層になっているかもしれません。

高齢化社会の日本においては、
そんな貧乏老人が増えて、
それにつけこんだ貧困ビジネスが増えるかもしれない。

筆者が言うところの、
「従来とは異なる新たなビジネスモデル」が登場しているかもしれないです。

そう考えると、
まんざら他人事でもないかな、
と思ってきました。

仮に貧乏老人が自分ひとりだけだったら、
そんな貧困ビジネスの餌食になるリスクは少ないと思いますが、
一定数の人が集まれば、
そこにはもう立派な市場が成り立ちます。

いまは高齢者がお金を持っていて、
そこからお金を引き出す「振り込め詐欺」や「オレオレ詐欺」が騒がれて久しいですが、

あと何十年後かには、
お金がない高齢者を狙って、
逆に「振り込むよ詐欺」とかが出てくるのかも知れないなと、
そんなことも考えてみたりしました。笑

さて、
この本のなかで紹介されているのは、
怖い「貧困ビジネス」がメインでしたが、
貧困層を対象としながらも、
付加価値をきちんと生み出している(人々の生活水準の向上に貢献している)良心的なビジネスも存在する
と述べられており、
ホームレスの自立を促す『ビッグイシュー』誌の路上販売なとがこれに該当するとして紹介されていたのは、
新たな視点でした。

とはいえ、
メインの怖い「貧困ビジネス」に関しては、
筆者は次のように警告しています。

悪質な「貧困ビジネス」の根底には、「とにかくどんな手段を使ってもいいから、取りやすいところからお金を取る」という考えがあります。したがって、このような悪質な「貧困ビジネス」の横行は、日本経済全体でみれば何のメリットも生まないのです。

これは、
お金のない人たちから無理やりお金をとっても、
そこから消費はうまれない、
つまりお金が循環していかない、
ということを言っているんだと思います。

悪質な「貧困ビジネス」は、
余計に彼らを苦しめることになり、
すでに立ち行かなくなっている生計を、
さらに立ち行かなくさせていきます。

彼らは、
ただでさえ少ない消費をいっそう抑えねばならず、
最悪の場合、
破産や破滅に追いこまれてしまう。

確かに日本経済全体で見たら、
なんのメリットもないのかもしれませんが、
逆にビジネスを展開している側は潤って、
そこから新たな消費活動がうまれるわけで、

そう考えたらはたして、
本当に全体的にはメリットがないと言い切れるのか?
と素人ながらに思ってしまいました。

このへんは、
もう少し経済学をちゃんと勉強しないとダメですな。

いずれにしても、
このような悪質な貧困ビジネスの台頭に対して、
筆者は政府の介入が必要と指摘しており、
やみくもに規制を強化するのではなく、公正なルールを引き直すこと、
ルールに反した場合の罰則を強化すること、
これらが喫緊の行政対策であると結論づけていました。

個人的には、
自由経済&小さな政府&個人主義であっていい、
自分のことには自分で責任をもつべきで、
所得格差が生まれるのは当たり前だと思っているんですが、

そうは言っても、
富める人たちは貧しい人たちを犠牲にしたうえで成り立っている面もあるので、
そういう意味では、
ある程度の政府による救済(富の分配)は、
絶対に必要だとも思いました。

貧困問題って、難しいなあー。

私にはまだまだこのあたりのことを
偉そうに意見できるほど、
知識や技術はないなーと思いました。

おいおいこのあたりは、
興味センサーがビンビンになったら、
また考えてみようと思います。
(いまはさして興味もなく、お手上げ状態)


印象に残ったことを箇条書きで残しておきます。

低所得者向けに敷金・礼金ゼロ円を謳った「ゼロゼロ物件」は、正当な理由がなければ貸主は賃貸契約を解除できない「借地借家法」ではなく、「施設付鍵利用契約書」が適用されていることが多く、滞納が発生すると鍵を付け替えて部屋を締め出し、違約金を払わせて利益を得ている。

・様々な事情で保証人を見つけられない人と、保証人になるかわりに手数料をもらって生計の足しにする人を結びつけるのが「保証人ビジネス」。どちらも貧乏層を対象とするケースが多く、マッチングビジネスの提供者は手数料を保証人と折半し、リスクは保証人に押し付けて旨みだけ得ている。

・ホームレスなどから戸籍を買い取ったり、養子縁組をすることで多重債務などの過去をリセットさせる「リセット屋」は、日本の養子制度の抜け穴を利用している。現行の養子制度のもとでは、成人の場合は、申請書と戸籍謄本、証人2名が揃っていれば、簡単に養子縁組が成立してしまう(ほぼ無審査)。

・アメリカで2005年に大型ハリケーン「カトリーナ」によって甚大な被害がもたらされたとき、ネット上では募金詐欺が横行

・アメリカのサブプライムローン焦げ付き問題は、悪質なモーゲージブローカーが収入を水増しさせてローンを通させ、金融機関から無理やり住宅ローン融資を引き出させていた。

アルバニアでは、90年代に高利回りをうたった投資で、ねずみ講的に投資を集め、利息が支払われなくなって国全体が破綻寸前まで追い込まれた。

・以前問題となったグッドウィルフルキャストは、労働者派遣法に反して、港湾業・建設・警備への派遣や、多重派遣・偽装請負日雇い派遣社員からの不明瞭な給与天引きを行い、低所得労働者を搾取していた。

・一般に、低所得層ほど食育の意識が低く、値段の安いジャンクフードを食べ続けて、健康被害をこうむっている。

・中国には、人間の頭髪からアミノ酸を抽出し、格安で醤油をつくっている悪徳業者がいる。この「頭髪醤油」には、発がん性物質が含まれていることも。

ヤミ金業者の多くは、東京都知事登録をして良心的な業者を装おっているケースが多く、都(1)と表記されるが、この番号は知事登録したときの番号で、開業後3年以内は(1)になる。ヤミ金の多くは摘発を逃れて名義変更を繰り返すため、(1)を標榜していることが多い。

バングラデシュのグラミン銀行は、貧困層を対象に小口融資(マイクロクレジット)を展開し、無担保融資と着実な返済をおこない、貧困層の生活水準を向上させている。融資先の97%を女性に絞ることで高返済率を維持し、利用者を5人単位のグループとすることで、相互監視させて、貸し倒れリスクを回避している。

・ホームレスが路上で販売している「ビッグイシュー」誌は、ロンドン発のホームレス支援ビジネスで、販売員として登録されたホームレスたちに1冊300円の雑誌を10冊無料提供し、彼らは売上の3000円を元手にして、それ以降は一冊140円で雑誌を仕入れ、160円/冊の利益をあげて、飲食代や宿泊代に充てていく仕組みになっている。



■まとめ:

目からウロコのような新たな発見(刺激?)が少なく、少し物足りなかったが、相変わらず分かりやすい説明で読みやすかった。
リーマンショック後に書かれているので、本書に漂う先行き不透明な緊迫感・悲壮感はいまいちピンと来なかったものの、いまがそれだけ平和なんだなという実感があった。
貧困層をターゲットにした悪質なビジネスをおもに紹介しているが、バングラデシュのグラミン銀行や、ホームレスが路上で販売している「ビッグイシュー」誌が、貧困層を支援し付加価値を生み出しているのは新しい発見だった。



■カテゴリー:

経済・経営


■評価:

★★★☆☆


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