必ず誰かに話したくなる経済学  ★★★★☆

門倉貴史さん第二弾、

必ず誰かに話したくなる経済学

です。

 

あくまで私が期待しすぎただけですが、

必ず話したくなる度がもっと強いかと思いきや、

眼からウロコ!というほどではありませんでした。

 

ただ、

筆者の外見や華麗なるご経歴とは反して、

初心者でもわかりやすく書いてくださっているので、

とても読みやすかったです。

 

「へぇ~」と驚く雑学チックなことが多く、

それなりに面白いです。

 

行動経済学統計学、マクロ、ミクロといった

経済学の各ジャンルに沿って、

わかりやすい事例を取り上げています。

 

彼は、

ひとえに経済学といっても、

一般人がどんなことであれば興味をもち、

どのように書けばわかりやすく伝わるか、

ということをよく知っています。

 

難しいことをわかりやすく説明する能力をお持ちで、

本当に頭がいい人とは、こういう人を指すのではなかと思います。

こういった方が、人に教えたりする仕事に向いているかもしれません。

 

ろくに授業に出なかった私が言うのもなんですが、

大学の教壇に立つ教授たちなんて、ただの学者バカでしかなく、

彼らは教わるほうの気持ちを何も考えていないクソだと思います。

こういう人たちは、もっと池上彰さんや門倉さんのような本を読んだらいいのに。

(頭が良いと思い込んでいるから無理かもしれませんが…)

 

門倉さんの魅力はそこにあって、

学問上の定理を、身近な事例にたとえて説明していくのですが、

多少、無理があるなという部分もありながら、

大衆ウケするにはどうすればよいか?

ということをきちんとわきまえています。

やっぱり、バラエティー番組向きですね。笑

 

印象に残ったことを、箇条書きで残します。

 

行動経済学「ピーク・エンドの法則」は、ひとが一番印象に残るのは、ある出来事の時間的な長さに関係なく、「一番のクライマックス(ピーク)」と「終わり方(エンド)」によるというもの。大腸内視鏡の被験者で、激痛のあとすぐに抜いたグループAと、激痛のあと一分間そのままにしておいたグループBでは、Bのほうが再検を嫌がる人が少なかった。

 

・お金持ちの寄付活動では、「競争的な利他主義(気前の良さ)」がはたらいて、人目を気にすると気前がよくなる(=他より多く出そうとする)。

 

・人間の脳には「報酬系」という神経回路があり、ボランティアなどで自己満足を得た場合にもドーパミンが分泌され、心地よい気分になる。

 

・商品の種類が多すぎると、人は何も選ぶことができなくなる。これを行動経済学では、「決定回避の法則」という。10種類のネクタイを売るネクタイショップと、50種類のネクタイを売るネクタイショップでは、10種類のネクタイショップのほうが売上が大きい。

 

行動経済学でいう「ハーディング効果」は、群集心理に基づく不合理な(明確に根拠のない)行動を指す。具体的には、株式市場における株高期待という投資家の共同幻想によって発生するバブルなど。

 

「アビリーンのパラドックスは、経営学者のジェリー・ハーヴェイが提唱した、集団思考に潜む見えない罠を指し、集団で合議したことが必ずしも合理的とはいえず、実は不合理な意思決定の可能性もあるというもの。なんとなくみんなで旅行の行先を決めたが、帰ってきたら誰も旅行には行きたくなかったのが本音だった、というように。

 

振り込め詐欺は、行動経済学でいう「カクテルパーティー効果」(注意の焦点化効果)によるもの。パーティー会場のように、たくさんの人の声が同時に聞こえてくる場所では、特定の人と話すときにほかの会話を遮断して相手の情報を引き出そうと意識を集中させるが、それと同様に、振り込め詐欺でも人間の脳内で同じこと(情報の取捨選択)がおこっている。

 

・人が、ある種の占いや心理テストに傾倒しやすいのは、心理学者バートラム・フォアラーが論証した「フォアラー効果」(バーナム効果で説明できる。万人に通用するような共通した特徴を書いておけば、人は「自分に当てはまっている」と錯覚しやすい。

 

・AとBの選択肢があって、Bと極似したCが加わると、まったく異なるAが選ばれる比率が高まる。統計の世界では、これを「妨害効果」という(Cによって似たものどうしが選択されることを妨害)。一方、Bに似ているけれども質が大きく劣ったCを加えると、Aが選ばれる比率が高まる。これを「誘因効果」という(Cによって全く異なるAの魅力が引き上げられる)。

 

・アーサー・オークンは、失業率が1%上昇すると、実質GDP成長率は3.2%低下することを発見。これを「オークンの法則」という。

 

ブータン国民総幸福度(GNP=グロス・ナショナル・ハピネス)は、76年に4代国王が表明、採択。1.心理的な幸福、2.健康、3.教育、4.文化、5.環境、6.コミュニティー、7.よい統治、8.生活水準、9.自分の時間の使い方という9つの分野から構成される総合指標で、政府は2年おきに国民に対して聞き取り調査を実施。

 

・リチャード・イースタリンが提唱した仮説イースタリンのパラドックスでは、収入レベルが一定のところまであがって基本的な欲求が満たされると、人は収入が増えても幸福度はあがらないというもの。その理由は、「相対所得仮説」(収入の絶対水準ではなく、他人との相対比較で満足度がかわるというもの)と、「順応仮説」(幸福や不幸の環境変化があってもその影響は長くは続かない)で説明がつく。

 

・ドイツの経済学者であり、実業家でもあるシルビオ・ゲゼルは、人々がお金を貯め込むことでお金が市場に出回らず、(お金の相対価値があがって)物価が下がるデフレから脱却するには、お金を貯め込まないようにすること、ひいてはお金に賞味期限をつける「スタンプ紙幣」を考案。

 

・ドイツの社会学者グナル・ハインゾーンが提唱した「ユース・バルジ(若者の急増)」は、15~29歳の青年男性の割合が3割を超えると、若者の雇用機会が減り、社会が不安定になるというもの。「アラブの春」が起きた中東・北アフリカ各国では、ユース・バルジがみられた。

 

・下着の売れ行きで景気の動向がわかる。男性の下着は、(ただでさえ後回しにされやすいが)不景気になると売れなくなる。女性の下着は、不景気になるとモノトーンが多くなる。

 

・個々の家庭・企業にとって合理的な行動が、これらをすべて集計した一国全体の経済でとらえると合理的ではなくなり、マイナスの結果がでてしまう現象を、経済学では合成の誤謬という。子孫繁栄は、家庭にとっては喜ばしく、労働力の確保にもつながるが、世界規模でとらえると食糧難などの問題を孕んでいる。個別の患部には効く薬でも、体全体にとっては有害となって体調を崩すのと同じ。

 

「ラチェット効果」は、二人の経済学者によって提唱された消費行動に関する経験的な仮説で、消費支出は、現在の収入水準よりも高かったときのものに左右されやすいというもの。バブル景気真っ盛りを経験した「ハナコ世代」(59~64年生まれ)の女性は、もっともラチェット効果が強く、お金の使い方が派手。

 

・アメリカの気象学者エドワード・ローレンツが提唱したバタフライ効果は、ブラジルの一匹の蝶の羽ばたきが、巡り巡って北米に竜巻を起こすという仮説だが、マクロ経済においても見られる現象。たとえば、ギリシャの経済規模は世界経済全体のわずか0.43%にすぎないが、ギリシャが破たんしたら、負の連鎖が生じて、世界経済が大混乱に陥る。

 

・人間はある商品を消費して欲望を満たすようになると、その商品一単位から得られる満足度が次第に小さくなる。これをミクロ経済学では「限界効用逓減の法則」という。最初のリンゴは美味しいけれど、二個・三個と食べ続けると、飽きがくるのと同じ。日本におけるヘアヌード写真集が売れなくなっているのも、この限界効用が逓減しているから。

 

アクサ生命が2010年に調査したアンケート結果では、独身女性が結婚相手に求める理想の年収は552万円、本当に愛する相手ならば270万円。その差額(約280万円)が本当の愛の値段といえる。

 

社会学者ロバート・マートンは、個人がある状況を予想し、その予想に基づいて行動していると、結果として当初予想された状況が現実のものになってしまう可能性が高いことを指摘。これを「予言の自己実現という。震災後の買いだめや、世界同時株安はいずれも予言の自己実現がはたらいたもの。

 

・よくいう「二対八の法則」は、パレートの法則ともいわれており、集団の二割が全体の八割の富を占有するというもの。EC大手Amazonでは、この法則があてはまらず、非常にマニアックな商品が売上の大部分を支えている。ECのように売り場面積に制限がない場合には、死筋商品(商品ごとの売上が安いもの)のほうが、良く売れる。これをロングテールの法則」という。

 

面白かったのは、

ゲゼルのお金に賞味期限をつける考え方と、

EC市場における「ロングテールの法則」です。

 

お金に賞味期限をつければ人の購買活動が盛んになるだろう

という考えは、いろんなところで応用されています。

地域振興券やポイントカードなど。

そこでしか使えない、かつ期限があるとなれば、

どうしても使いやすくなりますし。

 

また、

Web集客方法の1つに、

検索連動型広告(リスティング)」といったものがありますが、

あれなんかはまさに、

ロングテールの(検索ワードの)部分でいかに売上につなげるか

みたいな戦略をとりますよね。

 

あまり検索はされないけれど(検索ボリュームは少ないけれど)、

超マニアックなキーワード群で、

実は結構なコンバージョン(売上数)があったり、

…なんてことがよくあります。

 

インターネット上ならではの購買行動

というのが、絶対あるんでしょうね。

 

あと、意外だったのは、ブータンのGNH。

これを数値化するのにあたり、

9つの指標にわかれているのは良いとしても、

人口の1.4%にしかヒアリングされていない

というのはどうも納得いきません。笑

 

しかも一人当たり5時間だなんて。

30分かけて30%のほうが精緻化しそうですけどね。

日本の国勢調査もこんなものなんでしょうかね。

意外でした。

 

最後に、

私も大学で経済学を専攻した身ですが、

見事にクソ大学生の道を歩んでしまい、

相当な学費をムダにした親不孝者です。

 

この本は、

なんとなく聞いたことがある法則だけど、

ああそういうことだったのね!というものや、

恥ずかしながら全く知らなかったものなどもあり、

経済学を勉強しそこねた、

(私みたいな)しょうもない大人にはピッタリ!の一冊

でした。

 

■まとめ:

・眼からウロコが落ちるほどではないけれど、雑学レベルでの驚きが多い。

行動経済学統計学、マクロ、ミクロといった経済学の各ジャンルに沿って、

わかりやすく事例を紹介。

・経済学を勉強し損ねた大人にも、ピッタリの一冊。

 

■カテゴリ:

経済・経営

 

■評価:

★★★★☆

 

▽ペーパー本は、こちら

必ず誰かに話したくなる経済学

必ず誰かに話したくなる経済学

 

 

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