夕凪の街 桜の国 ★★★★☆

ここ一週間、ちょっとした作業が立て込み、

ロクに本が読めませんでした。

 

昨日、唯一読了したのが、マンガ。(笑)

マンガもたまにはいいものです。

 

世の中、いろんなジャンルの小説があるように、

マンガもいろんなジャンルがありますが、

今回は、わりとシリアスな内容でした。

 

テーマは「広島」。

 

いまから約70年前に、世界で初めて原爆が落とされた街。

この原爆の後遺症に苦しむ平野家の人々にフォーカスして、

物語が展開していきます。

 

2部構成になっており、

一部は、原爆被災児のひとり:平野皆実が主人公の「夕凪の街」。

「夕凪の街」とは、原爆スラム(街)のことを指すらしいです。

 

皆実は、1945年のあの夏、広島で被爆するものの生き残ります。

父と妹を原爆で亡くし、姉は後遺症ですぐに死亡。

母フジミと二人きりで生活を続けるものの、

あの日の惨状がずっとトラウマとして残り続け、

自分だけ生き残ってしまった呵責に苦しみ続けます。

最後は、目が見えなくなり、血を吐いて死ぬのですが、

 

そのときになって、

「自分はまだ、本当は生きていたかったんだ」

ということを知るわけです。

 

この第一部は、それで終わらず、

実は第二部「桜の国」に続きます。

 

こちらは、

皆実の弟で旭の娘:七波が主人公となっています。

 

旭は東京へ疎開に出されており、

名前も平野姓ではなく「石川旭」と名乗っています。

 

前半が七波が小学生、後半が七波が28歳の社会人

というストーリー展開になっています。

 

前半は、父アサヒと祖母フジミと弟凪生と過ごした幼少期。

喘息で体が弱い弟ナギオの入院生活を家族で見守りながら、

最後はフジミが病に倒れるという、

どこにでもいるような普通の家族なんだけど、

どこか違うものを背負っているような家族の像が見え隠れします。

 

後半は、父アサヒの奇行を不思議に思い、

父のあとをつけていくうちに、広島にたどり着くのですが、

そこで、幼馴染の東子と偶然出会い、

広島までの旅行を共にするうちに、

東子とナギオがいま同じ病院に勤めていて、

東子は看護婦、ナギオは研修医として恋を実らせようとしていたところ、

ナギオの出生問題がネックとなって結婚を反対されていることが発覚。

 

こちらも、そんな秘話が?!という展開になっていて、

いろいろ重いです。

 

「夕凪の街」は、

原爆投下後10年後の広島を舞台にしたお話になっていますが、

「桜の国」を読むと、

決して10年では終わってはいないということが、わかります。

 

東子とナギオの結婚を阻んでいたのは、

原爆孤児を母(京花)にもつ、ナギオの出生がそれでしたし、

前半で母がいない家だったのは、

母(京花)が東京でアサヒと新婚生活を始めてから間もなく、

血を吐いて死んでいたからになりません。

 

こうして長い年月が経ってもまだ、

何世代にもまたがって原爆遺児たちは苦しめられている

というお話でした。

 

このマンガでは、

「血を吐いて死ぬ」とか「眼が見えなくなる」とかありますが、

要は原爆症のことで、

前者が白血病、後者が白内障を指しているのかと思います。

 

このマンガの作者、こうの史代さんもまた、

広島県のご出身のようですが、

広島の原爆ドームなどはとても苦手で、

ずっと目を背けて見て見ぬふりをして生きてきたそうです。

 

あるとき、出版社の編集の方から、

ヒロシマ」のことを描いてみないか?といわれ、

長年、臭いものに蓋をしてきた自分にカツをいれて、

真正面から見つめなおしてみようと思い、

このマンガを描いたとのことでした。

 

背景のひとつに、

東京に来て暮らすうち、広島と長崎以外の人は原爆の惨禍について本当に何も知らないのだという事にも、だんだんと気付いていました

ということもあったようです。

 

あれから70年。

 

戦争を知る私の祖父母世代も、もはや過去の人になっており、

この世には存在していません。

 

どんどんリアルな声はなくなり、

生身で「あの戦争を知っている人」はいなくなっています。

 

戦争はいけない、戦争はすべきではないと思いますし、

学校でもそのように教えられてきましたが、

 

なぜいけないのか、なぜすべきではないのか、

それを理解するには、

あの戦争がどんなにひどいものだったのか

を知っておくべきだと思いました。

 

きっとこの作者は、

原爆被害者の一家を通じて、

そんなことを伝えようとしているんではないでしょうか。

 

特にこれといってオチのない物語でしたが、

ちょっと考えさせられる内容でした。

 

ソチオリンピックの話題に隠れてあまり放送されませんでしたが、

安倍首相が最近、

集団的自衛権の行使を容認し、

憲法9条の改正(解釈の幅を広げる)をも示唆するような発言をおこない、

党外はもとより、党内からも強い反発が出ているようです。

 

彼はいま、

日本のトップリーダーとして右に出る人はいないほど、

権力の頂点にいる方なわけですが、

それをご自身でもわかっていて、

「この私がトップなんだから、トップのいうことは絶対なんだ!」

「私がOKというんだから、集団的自衛権をもっと前面に押し出すべきだ!」

と吠えているそうです。

 

週刊朝日のなかで、室井佑月さんがそんな安倍さんに対して、

「あのーぉ、三権分立って知ってますぅ?」

と揶揄していました。笑

 

安倍さんはアジア圏で中国に負けないように、

強い日本を目指しているんだと思いますが、

戦争をせずとも、強くみえる日本を目指すべきなんでしょうね。

 

私は安倍さんの考えていることの実態をあまり知らないので、

いまここで彼を非難するつもりも擁護するつもりもありません。

 

ただ、

あんなふうに言ってしまったら、天下の安倍さんが廃りますよね。

思っていても、口に出しちゃいけないとはこのことで、

権力を見せびらかしたいただのバカヤロウになってしまうので、

やめたほうがよさそうですね。笑

 

話はそれましたが、

安倍さんのこうした政策転換が外交政策上のパフォーマンスであれば、

それはそれでいいと思うのです。

 

集団的自衛権の行使について、

本当に特定の誰か(安倍さん?)の、

「鶴の一声」で決めるのは確かに危険ですが、

それが実際には決められず、ただのパフォーマンスであれば、

それもまた一策としてありだと思います。

 

ただ、先にも記したとおり、

もしも安倍さんが強い日本を目指すのならば、

そこには戦争なんてする必要もないくらいの、

圧倒的な強さを見せるべきだと思います。

 

戦争は、ダメ絶対。

 

私なんて、戦争が起こったら一番に逃げます。

だって、原爆とか絶対イヤですもん。

血を吐いて、目が見えなくなって死ぬなんて、

誰だってイヤに決まってるじゃないですか。

 

だからこそ、目を背けちゃいけないんでしょうね。

 

■まとめ:

・原爆の後遺症に悩む、ヒロシマの被害者・二世を描く

・原爆の後遺症とは、身体的な障害のみならず、結婚・進学などの社会的障害も含む

・戦争世代が減っている今だからこそ、戦争とは何か?原爆とは何だったのか?を見つめなおす必要がある

 

■カテゴリ:

マンガ

 

■評価:

★★★★☆

 

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